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虹かけるメーシャ   作者: 藤巳 ミタマ
職業 《勇者》
70/76

70話 オルクス

 地面から無数の岩が生え、ボコボコとクレーターができた荒れた戦場。

 元オークだったであろう魔石がいくつも散乱しており、いくら強化された個体と言えどそこに陣取る岩巨竜(サンドワーム)には誰も敵わなかったということは、後から戦況を確認したものでも容易に理解できた。


「──キキュイキュキュッキィ〜!!」


 高らかに響く楽しそうな歌声が聞こえたかと思うと、硬い地面が融解したようにうごめきだし、次第に(うず)を作り出して()()()を捕らえてしまう。


「グゥルォオオオ!!」


 ブラックオークの1体は猪突猛進という言葉を体現するかのごとく四足歩行で渦巻く地面を走りだした。


「ガルフゥウォオ!!」


 もう1体は渦の中心付近いたために、引っ張る力にあらがえず呑み込まれないようにするのがやっとだ。


「キュルキッキィ〜♪」


 サンディーは優雅にリズムにノリながら魔法陣を空中に展開しはじめる。


 中級クラスだろうか、上級に一歩及ばないものの3mもある魔法陣を鼻歌まじりに作り出してしまうのは、まず並の魔法使いでは不可能。サンディーがそれほど地魔法を得意としているのがわかる。


 この世界の人たちは声に魔力を通し呪文を唱えるという、魔法陣を描く工程を簡略化した魔法を主に使うのだが、魔法陣を使うことによる魔法の器用さ(炎の温度を発動後に調整したり、魔法の性質を細かく設定して時限式発動したり)を捨てて、発動までの時間短縮と魔力消費削減を目的としている。


「キュッキュー!」


 サンディーは無数の岩の刃を雨のように降らせた。


「グリャァアア!?」


 渦に残されたブラックオークはなすすべなく岩に直撃。自信の回復力でダメージに対抗するが、すさまじい連続攻撃に内包するエネルギーはすぐに底をついてしまい、スーッとかすみのように身体が消えて魔石になってしまった。この間3秒のことである。


「グルゥオオオ!!」


 渦から抜け出せた方のブラックオークは牙をむき出しにして、サンディーに向かって大きく飛び上がった。だが──


「きゅ」


「ウゴッファアアア──!?!?」


 サンディーの尻尾なぎ払いで吹き飛ばされてしまう。


「……キュ?」


 大きく飛んでいったブラックオークを横目に、サンディーはこの戦いがほとんど終結していることに気が付いた。

 戦いに巻き込まれないように避難する隊員、その前に立って念の為に守りの姿勢をとるヒデヨシ、なにやら毒々しく禍々しいオーラをまとって何やら祈祷をささげるブラックハイオーク、そしてそれに対抗するためエネルギーを貯めているメーシャ。


「キュ!」


 どうやら、ブラックオークの切り札を明らかにした上で倒すことで、今後に作戦に役立てるつもりみたいだ。

 それを理解したサンディーは目の前のブラックオークとの戦いを終わらせることにした。


「キュキ〜……キュ!」


 サンディーは口の前に魔法陣を展開し、そこに魔力を集中させると、ブラックオークに向かって地属性のエネルギー砲を発射する。


「ゥボォオオオアアアア!?」


 サンディーにとっては手軽な技と言えど、そのエネルギー砲の威力はまさに圧巻。一瞬にしてブラックオークが消し飛ばされてしまった。


「キュイ」


 倒したのを確認してメーシャにアイコンタクトを送る。


 そしてメーシャがそれに頷きで返した直後、ブラックハイオークが嘆きとも歓喜ともとれるような絶叫を上げる。


「ギュリリャアアアアアアアアアア!!!!」


 すると周囲に散らばった魔石がブラックオークに向かって飛んでいき、ドロドロに溶け、禍々しい邪気と混ざりあう。


「ォゴゴゴゴゴ……!」


 その混ざりあった()がブラックオークを呑み込むと、ボコボコとうごめいて新しい身体を作り出していった。


「──ヒデヨシ、大丈夫だと思うけど念のためにそっちはお願いね!」


 メーシャが離れた位置にいるヒデヨシに声を飛ばす。


「はい!」


 メーシャは敵をジャッジメントサイスで一撃で倒すつもりではあるが、万が一に倒しきれなかったり、自爆技を使った場合隊員を守らなければならない。


「キュキュ……!」


 そこにサンディーもやってくる。ヒデヨシを手伝うつもりだ。


「アガァアアアアアアア……!!!」


 イノシシの頭、ヒト型の身体、コウモリの翼、心臓部には真っ黒な宝石を持った、暗黒の()()()()の巨人が姿を現した。


 その巨人が放つ禍々しい邪気は周囲の生物に本能的な恐怖を与え、風は止み、木々は枯れ、大地はその生気を吸い取られて黒く毒されていく。


「これは……地球でタコのラードロが出したオーラと似てるし。こんなんが何体も出てきたら大変なことになっちゃう……」


 メーシャ、ヒデヨシ、サンディーは問題ないが、敵の出す()()()()に他の隊員は心を支配され、泣き崩れる者、意識を手放す者、逃げ出す者、呼吸すらままならない者であふれていた。


 この恐怖にあらがえるだけの精神力や跳ねのける魔力がなければ、もしそれらがあったとしても油断していれば、それまで優勢でも一気にくつがえされて全滅もありうる。

 他の戦場でもこの巨人が出て来るなら、早々にケリをつけて報告しなければならないし、もし既に出ているなら援軍に向かわなければならない。


「どんなヤツが出るか分かったところで、攻撃される前にカタをつけるよ!」


 メーシャはエメラルドのオーラを右足にまとい、攻撃の体勢に入った。


「ガルルルルァアアア!!!」


 しかし、暗黒の巨人はなぜかメーシャにも目もくれず、弱者……つまり恐怖におののく隊員たちにまっすぐ飛んでいく。恐怖に染まった魂を喰らうつもりだ。

 だが、メーシャがいるからにはそうはさせない。


「いくよ!! ──"ジャッジメントサイス"!!!」


 まばゆい煌めきを放つその斬撃は隊員を狙うその背中を捉え、その理不尽な死の恐怖をまとう邪気ごと巨人を切り裂く。


「ウブォオオアアアア!!?」


 心臓部の宝も身体を構成していた泥も浄化され、邪気が消え去ってエメラルドのような緑色の魔石へと姿を変えた。


「……他のとこは大丈夫かな?」



 戦いを終えたメーシャは魔石を回収してアイテムボックスに入れると、まずカーミラ隊に、それから他の隊にも今さっき戦って得た情報のほか、デウスから教えてもらった情報も加えて伝えた。


 デウスから得た情報は下記の通りだ。


 暗黒のガイコツの巨人の名前は『オルクス』といい恐怖に染まった魂を喰らうという。魂を喰われればアンデッドへと変わり、意思なきオルクスの尖兵として無限に苦しみ続けるとのこと。


 魔王を倒した勇者ゼプトがその旅の道中、街を襲うオルクスをその光のチカラで討伐しという伝説もあり、光属性が効きやすいのは事実だろうこと。

 一応、理論的には他の属性も効くが相当な高威力を出す必要がある。(メーシャのチカラ、魔王のチカラのような例外的チカラももちろん効く)




 * * * * *



 一方、カーミラ隊。苦戦らしい苦戦は全く無く、オークたちを討伐寸前まで来ていた。

 メーシャの時と同じようにブラックハイオークが不気味に動かないのに疑問を抱き、カーミラは敵を倒しきらずに様子をうかがっていたようだ。


「──ありがとうメーシャちゃん! ……前衛はそのままオーク軍を押し込み、後衛は落ちた魔石の魔力を拡散して無力化して下さい!!」


 カーミラはメーシャからの情報を得るや否やすぐに隊員を動かす。


「うぉおおおおお!!」


 カーミラが契約する風の精霊"フーリ"の加護により、風の刃と、ブラックオークの恐怖に打ち勝つ勇気を与えた。

 勇気と風の加護を受けた隊員たちは、練度こそメーシャ隊とあまり変わらないはずなのに、ブラックオークに倒されるどころか連携して逆に追い込んでいく。


「──ギュリリャアアアアア!!」


 ブラックオークは片手で数えるほどまで減り、頼みの綱である魔石も無力化されて焦ったのか、ブラックハイオークは慌てて進化の祈祷を行った。

 ──が、カーミラがそれをゆるすはずもなく。


「──させません!!」


 いつの間にか背後に回っていたカーミラが風の刃で一閃。


「ウゴォオオオオオ……!?」


 無事にブラックハイオークを倒すことができた。


「……皆さん、我々の勝利です!!」


「「「おおおおおおおおお!!!」」」




 メーシャの情報により、小さな砦を攻めていた他の隊も苦戦をまぬがれた。だがそれと同時に、戦況が良くないことに気が付いた邪神軍の幹部"サブラーキャ"がついに動きだすのであった。



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