47話 サンドワーム出現
体長は成体で30mを超え、口は固いクチバシのようになっており、背中には甲殻、翼は地中を進むために小さく硬く砂かきのように進化、目が退化した代わりに振動や匂いを察知する感覚が強化され、体は砂漠の砂の色をしている、砂漠のヌシである盲目の無翼竜"サンドワーム"。
それがサイクロプス11体をほぼ丸呑みしたモンスターの正体だった。
『サンドワームがまさかこんな所に出てくるとはな。……まだ幼体みたいだが気をつけろメーシャ』
「──子どもにしてはでかくない……?」
メーシャがサンドワームの大きさに圧倒され、少し後ずさってしまう。
それもそのはず。デウスが幼体と言ったものの、目の前にいるサンドワームは、地面から出ている高さだけで信号機の倍。つまり10mに達していたのだ。
地球で戦ったタコのラードロも大きく、確かに長さだけなら負けてはいないが、高さはこちらが圧倒的。となると、より迫力や圧迫感を感じられるのだ。
「……いろは卿、戦えるか? 戦えなくとも時間稼ぎできれば、兵士を帰して騎士仲間を連れてくるけど……どうだ?」
ジーノはサンドワームを刺激しないようにゆっくりメーシャに近付き、声をできる限り落として確認をする。
「……うん、戦えるとは思う。周りのことに気を使えないと思うけど。んで、助っ人はフレンドリーファイアしちゃうかもだから、こっちが合図するか動けなくなったかした時にお願いしていいかな?」
「分かった。無茶はするんじゃないぞ、サンドワームなんて小隊で挑むようなモンスターだからな。……まあ、天才はひとりでやっちまうらしいけど。じゃあな。 ──隠密魔法」
ジーノはそこまで言うと魔法で姿を消し、周囲の気配と共に離れていった。
「キュ……!」
サンドワームが短くそう鳴くと身体が振動し、それにともなって空気と地面が震えだす。その震えは亀裂となり、小さな地割れとなってメーシャの足元にまで及ぶ。
「……おっと! あっちもヤル気満々か!?」
メーシャが腰を低くして戦闘姿勢に入ったその刹那。
──どっしゃーん!
「キュウ……」
サンドワームはバランスを崩して倒れてしまった。しかも、それで分かった事がひとつある。
「地面に埋まってたのって1mもなかったんだね……。尻尾の先がかぎ爪みたいになってるから、それを引っ掛けてバランスを取ってたのか」
サンドワームは表に出ていたのと地面に埋まっていたのと合わせて12m弱。それでも大きいのは確かだが、最初の迫力から考えると少し肩透かしである。
「……背伸びしたい時期ってありますよ。分かります」
ヒデヨシが少し離れたところで『うんうん』と頷く。共感する所があるのだろうか。
「ちょっと待って、あの体の大きさでどこにサイクロプス11体も入るの!? お腹の中ブラックホールかなんかか!」
『多分、食べた後にサイクロプスが魔石になったか、ちょう圧縮技術で小さくしたのか…………それかブラックホールだな。…………それはともかく! 気が抜けちまったが、相手はまだ戦う気だぞ。気をつけろ』
「……キュ!」
デウスの言う通りサンドワームは起き上がると、周囲の空気が歪むほどのオーラを放出して戦闘態勢に入った。
「手加減は出来なさそうだね……じゃあ、フルスロットルだ! ──"ジャッジメントサイス"!!」
メーシャは勢いをつけて回し蹴りをし、離れた位置から10m近い背丈の衝撃波をサンドワームに向かって放った。
それは地面を削りながら、だが音速に近いスピードでどんどん進んでいく。
「──キュウイっ!」
近付いてくる衝撃波を振動で確認したサンドワームは、すぐさま魔法を発動して無数の岩壁を召喚。
岩壁は2mはあろうかという厚さで頑丈であった。並の魔法や斬撃なら1枚で防げるだろうが、ジャッジメントサイスの衝撃波の威力ともなればそうはいかない。無数の岩壁をまるでスナック菓子のように砕いていく。
「キュ!? ……キュイ〜!」
サンドワームは威力の高さに驚いたものの、それに恐れたり危機感を覚えるどころか喜んでいるようだ。
「キュ! ──キュイキィ」
もう必要ないと判断したのか、サンドワームは尻尾をひとふりして岩壁を一瞬の内に粉砕した。そして衝撃波が来るまでの数瞬の内に流れるように魔力を練り上げ、今度は20mはあろうかという金属の塊を召喚して隕石のごとく降らせた。
──爆発。
鉄塊は衝撃波を上から叩き潰し、その衝撃波は行き場をなくしたエネルギーが爆発を起こして鉄塊を粉砕したのだ。
『ゼロ距離ジャッジメントサイスじゃないとは言え、さすがサンドワームだな! 一見バカでかい鉄の塊だが質量が半端じゃねえ。それに破片が自分の所に飛ばないよう調整してるし、しかもその難易度の高い魔法をこの短い時間で発動できる技術! 良いねえ……』
「デウスさんはどっちの味方なんですか!」
『……メーシャ』
戦いのの横でそんな気の抜けたやり取りをしているデウスとヒデヨシだった。




