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虹かけるメーシャ   作者: 藤巳 ミタマ
異世界フィオール
20/76

20話 お硬いアイツは地面にアツイKISS

 おしゃべりを楽しんでいたメーシャたちは、いつの間にか樹木型モンスターのトレントに囲まれていた。


 トレントは樹木同様植物の細胞でできているが、魔力が全身を巡っており、鉄よりも硬く竹よりもしなやかな身体を持っているのだ。

 攻撃魔法こそ使ってはこないが、枝を伸ばして相手を捕まえたり、カミソリのように鋭い葉っぱを飛ばしたり、鉄の鎧を凹ませる威力を持つ叩きつけ攻撃をしたりと単純ながら強力である。


 弱点は炎ではあるが生息地が基本的に森のため火事の危険性があり、下手に使うと共倒れになってしまうので、もしトレントに出会えば冒険者は己の地力が試されることになるだろう。



「ギギギギュギュルル……!!」


 トレントが警戒しながらもじわじわと距離を詰めてくる。

 このまま放置すれば逃げ場どころか身動きもとれなくなってしまうだろう。


「メーシャちゃん、ヒデヨシくん! まだ互いの能力を把握していないし、ここは各自で目の前のトレントに対処していこう!」


 カーミラが前方のトレントを見据えたままふたりに声をかける。

 目の前の敵に集中しているのか、カーミラは恥ずかしくならずに話せるようだ。


「あーしはだいじょぶ! ヒデヨシもひとりでいける?」


ちょずーちう(余裕です)ちゅあちゅあ(なんなら)ちちょうちゅあつ(1番多く)ちゅあちいちうち(倒しましょうか)?」


 メーシャの心配も杞憂で、ヒデヨシはむしろやる気満々であった。


「おけ。じゃ、無理しない程度にガンガンいこうぜ!」


「はい!」


「ちう!」


 そして野生のトレントとの戦いが始まった。



 ● ● ●



 まずはメーシャ視点。

 異世界という慣れない土地での戦いはこれが初めてとは言え、地球でタコ型の邪神の手下倒した実績がある。

 実力も十分で、油断しなければまず倒されることはないはずだ。



『メーシャ、戦いのプランはあんのか?』


 デウスが声をかける。


「あるよ! 一気に終わらせても楽しくないし、ジャッジメントサイス縛りでチカラを試すのがメインかな……っとぉ! ま、見ときなって」


 メーシャは飛んできた葉っぱを軽いステップで回避しつつオーラで『奪い』とる。


『お、おう……』


 つまり、メーシャの中ではもう勝ち負けではなく、この戦いは実験でしかないようだ。


「ギギィ!」


 トレントの幹部分にある目のようなウロが怒ったみたいに吊り上がり、今度は枝を伸ばしてメーシャを左右から叩きつける。


「──葉っぱ返すし!」


 宙返りで片方の枝を飛び越えながら右手から魔法陣を展開。先ほど奪ったカミソリのような葉っぱを連続射出してもう片方の枝を切り裂いてしまう。


「ギュリリィ!?」


 ダメージにのけぞりながらも残った枝で反撃を試みるトレント。


「当てられるかな?」


 だが、メーシャとトレントの位置が入れ替わってしまって空振りに終わってっしまう。


『そうか……! トレントの()()()()()()から、結果的に入れ替わったのか! 考えたなメーシャ!』


「でしょっ。じゃあ、次のやついくよ」


 メーシャは身体を低くしながら地面を大きくえぐり取り、出来た穴にトレントを落としてしまう。


「──ギュル! ギリィ……?!!!」


 トレントが根っこを足のように器用に使って穴から出てこようとするが、頭上には大きな水の塊が待機。避けきれない。


 ──バッシャーン!


 普通の水の塊であればトレントにとって有効な手段とは言えないが……。


「ギュァアア!!?」


 その水を受けたトレントは大ダメージを受けて苦しんでしまう。


「残念、これは海水だよん!」


 この森は海から離れた位置にあり、もちろん通っている水も真水。なのでこのトレントはマングローブのように海水を吸うことができないのだ。


「ちょい一か八かだったけど」


 樹木型とは言えモンスター。普通の気とは違って塩害を受けない可能性もあった。

 しかし、メーシャの予想は大当たり。むしろ、動きを活発化させている性質上素早く身体に塩を巡らせることができたようだ。


 とは言え、これだけで倒し切れないことは想定済み。メーシャは次の一手に進む。


「──身体重そうだけど、あーしが軽くしてあげよっか?」


 メーシャはオーラを使い、自分にしたようにトレントの体重を奪って軽くする。だが、今回はメーシャの時とは違いほとんど全ての重さだ。


「ギュルル!?」


 トレントが己の状況を把握するより早く、メーシャは滑り込んでふところに潜り込む。


「見たことない景色、見せてあげるっ」


 メーシャは勢いよく蹴り上げる。

 体重が0kgで空気抵抗以外その勢いを止めてくれるものがないトレントは、枝や根っこを振り回すも虚しく、瞬く間に雲の上まで吹き飛ばされてしまった。


「ギリリ……」


 トレントは幸か不幸か、体重が0kgのため衝撃が吹き飛ぶエネルギーにほとんど使われて無事だった。


 このまま風にでも飛ばされていけば、あの忌まわしきニンゲンとオサラバできる。そして、ほとぼりが冷めたらまた森の奥で静かに動物やヒトでも狩って暮らそう。

 トレントがそんな風なことを思ったその時──。


「……そろそろ地面が恋しくなってきたんじゃない?」


 トレントが今1番聴きたく無い声がすぐ近くから聞こえてきた。


「ギュ……?!」


 メーシャはトレントにしがみついていたのだ。

 メーシャはトレントを蹴り上げたその時、自身も身体を軽くして跳躍。飛んでいくトレントにしがみついてイイカンジの高さになるまで隠れていた。


「なんでこんな高さまで打ち上げたか分かる…………?」


 メーシャは魔法陣からトレントの重さを返還しつつ、先ほどえぐった土をまるめて凝縮し……。


「メーシャ特性フリーフォールだよ〜!!」


 土弾ごとトレントをドロップキック。重力加速度以上のスピードを手に入れたトレントは、大きな(荷物)を抱えたまま急降下。


「ギュルルルルルリリリリィ〜〜〜────!!?」



「ギュル……? ギリィ──!!?」


 下にいた2体のトレントを巻き込んで地面にダイナミックKISS!!

 倒されたトレントは身体を維持できず爆発。身体を構成していた魔力の塊がいくつかの魔石となって飛び散った。


 モンスターは魔石を核にして身体を生成するタイプと、身体全体を魔力で構成しているタイプで、トレントは実は後者のタイプだったようだ。

 

「3体撃破! はイイんだけど……」


 トレントを倒したのはいいが、体重を戻せば着地の衝撃が計り知れないので下手に戻せない。


「……どうやって降りよっかな? 着地の瞬間に柔道の受け身すればいけるかな……?」


 とはいえ、今の体重が軽すぎるせいで空気抵抗が強くなり、その上風のせいで降りるどころかたまに上昇してしまう。


「──あ、風に飛ばされちゃう〜……!?」


 そうこう悩んでいるうちに、メーシャは自然の突風にどこかへさらわれてしまったのであった。


『め、メーシャ〜〜!!?!?』



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