反抗期の激辛カレーパン(2)
光は、反抗期真っ只中で、香織からお弁当を貰うのも拒否し、学校の側のコンビニで袋に入ったチョコクリームパンを買った。友達の美紅や春歌と一緒の昼食を食べるのは居心地が悪く、裏門の近くにあるベンチに座り、甘いパンを齧っていた。他に誰もいないので、静かなものだった。
「チョコクリームパン、美味しい!」
チョコレートの味しかしないパンだったが、今の光の気分では、とても美味しく感じてしまった。お手伝いの香織の料理は不味くはないが、味が薄味で、野菜も多く、美味しいと感じた事はなかった。美紅や春歌などには、バカ舌と言われてしまうが、やっぱり袋に入ったパンは美味しい。それの父親が偽善くさいオーガニック健康食品を売っていると思うと、余計に反抗したくなってしまう。母のように美魔女みたいな派手な格好も意味がわからない。光は女子高生だが、母への反抗心もあり、黒髪ストレートを貫いていた。よく考えずに逆張りをやっているだけだが、それだけで少し気分がスッとしてくるのも事実だった。
「あれ? 何、このチラシ?」
両親の事を思い出してイライラしていたが、足元にチラシが一枚落ちているのに気付いた。どこからか風の乗ってきたらしい。そういえば今日は風が強い。
「ホロスコープ 鑑定・無料で占いますか……」
チラシは占いのもののようだった。隣の飽田市に新しく占い師のオフィスができたらしい。三島皐月という女性占い師で、アイドルのように可愛らしい雰囲気の女性の顔写真も乗っていた。
「人生のお悩み解決いたします、か」
チラシを見ていると、だんだんと占いをしたい気分になってきた。そういえば父は、元占い師のクリスチャンであるドリーン・バーチューという女性の動画を見ながら「占い師だったのかよ」と引いていたのを思い出す。母も朝のテレビ番組で占いコーナーがあると「こんなのあるの日本だけだよ」と怒っていたのも思い出す。
確かクリスチャンは占いが禁止だった。なぜ占いが禁止であるのか疑問だが、とにかくやったらいけないらしい。
とにかく両親の逆張りをしたい光は、さっそく三島皐月のオフィスに電話をかけた。なぜか向こうは、光の名前を知っていた。
「依田家のお嬢様ね。あなただったら、特別に鑑定料はタダにしてあげる」
「え? いいの?」
「あなたはクリスチャンですから……。こっちには無償でも来てもらいたい……」
「え? 今なんて言った?」
「いえ、なんでもないわ。さっそく鑑定するから、放課後遊びに来てね」
無料というのはきになったが、皐月の声を聞いていたら、そんな事は気にならなくなっていた。ミルクティーのような甘くて優しい声だった。この声の持ち主が、何か悪い事を考えているようには、どうしても思えなかった。
『ふふ、バカな人間の娘……』
どこから声のようなものが聞こえたが、気のせいだったのかもしれない。今日は風が強い。木々のざわめきに違いない。光はそう結論づけ、さっそく放課後に皐月のオフィスに向かっていた。




