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いのちのパン屋さん〜明日への光〜  作者: 地野千塩


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32/65

副業

 ここは閉店後の福音ベーカリーの厨房だった。大きなオーブンや調理台もあり、副業とはいえ、設備は本格的なものだった。


 調理台の上には、現在開発中のたこ焼きパンがあった。日本のパンは主食ではなく、お菓子やおかずの立ち位置だ。惣菜パンやスイーツのようなパンが多いのも、日本では米という主食があるからだろう。


 このたび、光のお守りという本業が暇すぎて、私は、新しいパンを開発していた。今開発しているのは、たこ焼きパンだ。焼きそばパンやコロッケパンがありなら、たこ焼きパンも問題無いんじゃないかと思い、開発していた。


 コッペパンにたこ焼きを挟んでみたが、それぞれの生地が噛み合わず、正直言って不味い。


「何だ、これは? あ、マヨネーズか。マヨネーズを入れたらマイルドになるかも」


 反省点や気づいたところをメモし、明日も試食を作ってみよう。


 元々ワーカーホリック気味の私は、こんな副業にも全力投球してしまう。以前は、本業でもワーカーホリックになり「私をブラック企業の社長にするな! 人間にだって安息日を与えているだろう」と神様に怒られ、現在は暇なサンデークリスチャンである依田光の担当だった。


「副業も楽しいけど、光も祈ってくれないかねー」


 愚痴のような呟きが漏れた時、飼い犬のヒソプが店の方でワンワン鳴いているのが聞こえた。


「どーした? ヒソプ?」


 私が側にやってくると、ヒソプはすぐに鳴きやんだ。動物には霊はないが、その分、人間より敏感な面がある。飼い主の霊的状態にも左右されやすい傾向があった。


 ヒソプのこの状態に、私は少し不安になったりもした。そういえば霊が見える春歌は、光の様子がちょっとおかしいと報告しに来た事があった。両親が忙しく、授業中もどこか上の空の事も多いらしい。


 しかし、光は全く祈っていない。この状況で、私も勝手な事はできない。神様は自由意志を大切にする。好きで悪いもの、例えば悪魔を選んでいたとしても、特に止めない。人間には信じられないと思うが、神様はそういうお方だ。人間の自由意思を最大限に尊重している。ちなみに神様が特に気にかけている子は、悪いものを選ぶと、災いが起きるようになり、自然と神様の方に向かうようになっていたりはするが……。


「光、そろそろ祈ってくれないかな?」


 私は、ヒソプのモコモコな背中を撫でながら呟くが、今は全くそんな雰囲気は無い。


 そういえば明日は、天界から材料が届く日だ。ミルルという後輩天使が、定期的にトラックで運んで来てくれる。ミルルは、悪霊の門番もあるので、私と違って多忙だ。材料を届けに来てくれる時は、わざわざ人間用の肉体を持ち、仕事をしてくれるので有難い。


「しばらく副業を頑張るしかないね、そうだね、ヒソプ?」

「ワン!」


 私の声に同意するかのように、ヒソプは大きな声で吠えていた。


 もう夜だ。


 店の窓からは、大きな月が出ているのが見えた。

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