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いのちのパン屋さん〜明日への光〜  作者: 地野千塩


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隣人と黒パン(1)

 織田春歌は、昔から霊的な存在が見える困った性質があった。天使、悪魔、悪霊といったものが見えてしまう。


 幸い、両親がクリスチャンだった為、悪いものは追い払ってもらい、子供の頃は天使と遊ぶ事が多かった。子供の頃に描いた絵を見ると、どう考えても見えない存在が描かれていた。


 子供はこう言った霊的存在はよく見えるらしい。ただ、クリスチャンではない一般的な人は悪魔や悪霊の扉が開いているので、悪いものからの攻撃もあるらしい。大人になるにつれてこう言った霊的な物は見えなくなっていくようだ。幸い、春歌は、親に「天使見えたとかイイね! 悪霊は祓っておくね!」と守られていたので、高校生になった今も普通の人が見えない霊的なものが可視化できた。


 春歌は現在クリスチャンだが、霊的なものが見えてしまうと、聖書が言っている事もよくわかってしまう。例えば「敵を愛せ」も、表面にいる人間を責めても意味がなく、背後にいる悪霊を縛らないと意味が無いという事だし、悪霊も天使のフリをして話しかけてくる事も聖書通りだ。見える系の春歌には、大天使ミカエルやガブリエルのフリをした悪霊に、話しかけられる事も多かった。多くは、聖書と不一致している事を言っているので、両親に悪霊祓いして貰うと、すぐ追い出せたが、聖書も何も知らない普通の人は騙されるだろう。


 いじめも、いじめっ子本人が悪いという面も強いが、背後に悪霊がいる事もよく知っていた。


『美紅に悪口言っちゃえよ。美紅は、あんたの事を馬鹿にしてたぜ?』


 自分のクラスには最近いじめがあった。大人しい美紅という子がターゲットにされていたのだが、特に原口真理と江崎歩美という気の強い女子が主犯格で、毎日のように陰湿な行為をくり返していた。


 一見、人間が悪いいじめのように見えたが、主犯格の原口や江崎には悪霊がまとわりついているのが見えた。


『悪口言っちゃえ、いじめちゃえ!』


 悪霊は、特に江崎をターゲットにしているようで、悪い考えを吹き込んでいるのが見えた。やはり、いじめの背景には悪霊がいる事を実感してしまう春歌だったが、どうすれば良いのかか悩んでいた。


 両親は牧師なのだが、最近はエクソシストの仕事の依頼が多く、ロシアに長期出張していた。本来なら両親に相談し、エクソシストでもやった方がいいんだろうが、春歌は霊が見えるだけで、その実力はなかった。子供の頃にエクソシストの真似事もやった事があるが、悪霊が報復しにきて困った事になった。


 クリスチャンや信仰を持つ意思がある求道者にエクソシストは効果的だが、そうでもない一般人の悪霊祓いは危険だった。そもそも本人に信仰心が無い場合、悪霊が帰ってくるので、助けても意味が無いどころか、逆効果になってしまう事もあった。


 江崎は一般的な日本人であり、無理矢理信仰心を持たせるわけにもいかない。春歌にできる事は、祈り、被害者である美紅に気をかけたり、江崎にまとわりつく悪霊にメンチ切るぐらいな事ぐらいだった。それでも悪霊はそう悪さもできないようで、いじめは自然と終わっていったが。


 いじめの主犯格である原口は、両親の仕事の事情で引っ越していった。


 一方、江崎はクラスに留まっていたが、原口という相棒を失った為、すっかり孤立していた。クラスの中には、依田光という気が強いタイプもいて、江崎はさらに居心地が悪そうではあった。


 問題なのは、相変わらず江崎に悪霊が話しかけている事だった。


『お前なんていじめしているダメなやつ』

『成績も顔もパッとしないねー』

『そんなに性格悪くて大丈夫?』

『もう死んじゃったら?』


 悪霊は、江崎に悪い考えを吹き込み続けていた。悪霊の声にやられ、本人はすっかり病んでいるようだった。


 体育の時間、準備体操の為に「二人組組んでください!」と教師が言った。江崎の周りからは、さーっと人が引き、孤立していた。


「あ、あの」


 春歌は一応、江崎に声をかけたが、キツく睨まれてしまった。元々派手めな美人という事もあり、優等生タイプの春歌はプルプルと震えてしまう。


「春歌、私とやろう!」


 結局、春歌は依田光に声をかけられて二人で体操をやった。江崎は具合が悪くて、保健室に行ってしまった。


「光、江崎さんを放っておいていいの?」

「いいんじゃない。いじめっ子なんて放っておいた方がいいって」


 そうは言っても、春歌は微妙な気持ちになってしまった。江崎の背後にいる悪霊が悪さをしているいじめでもあったし……。


「自業自得だよ。春歌も無視しておけば」


 光は親友の美紅が傷つけられた事もあり、江崎を許せない感じだった。


 聖書には、敵を許せとある。表にいる人間ではなく、背後にいる悪霊が悪いと春歌も思う。でも、これが一番難しい。

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