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いのちのパン屋さん〜明日への光〜  作者: 地野千塩


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正しさと焼きそばパン(2)

 意識の低い朋花は、仕事も雑に終わらせ、職場から帰る事にした。同僚の中には意識を高くし、自らブラック化しているものもいたが、朋花は全くわからない概念だと思う。コネ、腰掛けと言われたら、全く否定出来ない。上司やお局に陰口を言われても全く仕方がない。そもそも嫌われたくないので、反論もできない。思えば自分の行動原理は、「嫌わられるかor嫌われないか」この二つが基準になっていた。


 世の中は、キャリアウーマンやワーキングママが正義のように伝えられていたが、朋花のように限りなく意識の低い女もいる。仕事も趣味も、どうものめり込めない。一つの事を極めるよりも、適当にその場を取り繕うのが得意だった。朋花はテレビを見ながら読書が出来るというしょうもない特技もあったりした。極めるよりも、同時進行で何かする方が好きだったりもする。


「ろくに仕事していないけど、疲れたわー。映画でも見て帰ろう」


 職場を後にした朋花は、駅前にあるシネマコンプレックスに向かい、流行ってる映画をみた。翌日は土曜日という事もあり、映画館は混んでいた。


 映画は孤独なアメリカ人女性がヨガと出会い、田舎暮らしを始め、自分を取り戻すというストーリーだった。自分軸と愛と許しがテーマになり、朋花は感動し、目元を潤ませていた。


 やっぱり、許しが大事よね。受け持ちのいじめっ子達だって、なにか事情があるかもしれない。うん、叱らないであげるのが愛よね。


 そんな事を考えつつ、いい気分になりながら、自宅に帰る事にした。お酒も飲みたい気分であったが、実家暮らしで色々と面倒くさい。朋花はバリバリと「子供部屋おばさん」ルートに邁進していたが、元々意識も低く、母にも嫌われるのが面倒なので、今の生活を維持しているのが現状だった。


 家の近くの住宅街に入ったところ、何か良い匂いがするのに気づいた。パンかお菓子が焼けるような良い香りだった。


 もうすっかり夜だった。夜空には、クロワッサンみたいに見えてしまった。おそらく、パンの匂いを嗅いだせいでそう見えるのだろう。


 匂いがする方を歩くと、パン屋があるのに気づいた。店は、夜道に明るいオレンジ色の光を放っていた。


「福音ベーカリー。何このパン屋、こんな店あったっけ?」


 パン屋は見覚えがない。ずっとこの住宅街に住んでいるはずだが、こんなパン屋があった記憶がない。


 小さな可愛らしい雰囲気のパン屋だった。赤い屋根にクリーム色の壁、店の前にある花やハーブの鉢植えは、より可愛らしい雰囲気を演出していた。


 黒板状の立て看板も出ていて、おすすめのパンが紹介されていた。チョークで可愛らしいイラストと文字が描いてあった。今日は焼きそばパンとコロッケパンがおススメらしい。赤ちゃん天使と柴犬とともに美味しそうなパンのイラストも描かれていた。こういったハイカロリーなパンには「悪魔のパン」と言うメディアやSNSも多いが、なぜか「なぜか食べるとホッコリ癒される天使のパン」と書かれていた。


 そういえば、夕飯を食べ損ねていた。昼間からちょっとお腹が痛いせいでもあったが、基本的に夕飯は自宅で食べている。そうしないと母がうるさくて面倒だからだ。嫌われるのが怖く、色々と意識の低い朋花は、こうしてダラダラと実家暮らしをしている。「子供部屋おばさん」は、他人事ではなかった。


 しかし、こうしてパンのイラストを見ているとお腹が減ってきた。昼ご飯で、残してしまった袋に入った焼きそばパンを思い出したりする。


 知らないパン屋だったが、この外観だったら、おそらく主婦っぽい女性がやってる店だろう。朋花は、吸い寄せられるように福音ベーカリーに足を踏み入れた。


「ワン、ワン!」


 店に入った途端、柴犬の大歓迎を受けてしまった。可愛らしい柴犬で、尻尾はくるくるとしたシナモンロールのようだった。


「えー、犬? 何でここにいるの?」


 パン屋に入って柴犬に大歓迎されるとは思わなかった。しかし、非常に可愛らしい犬で思わず和んでしまう。


「こら、ヒソプ。お客様に絡んじゃダメだよ!」

「ワン!」


 そこに店員らしき男性が現れて、芝犬を回収し、イートインスペースの方へ連れていった。


「何この、パン屋……」


 足を踏み入れて後悔しかけたが、パン屋の中はとても良い香りが漂い、理性は乱されていた。

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