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いのちのパン屋さん〜明日への光〜  作者: 地野千塩


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本業

「神様ぁー。友達の美紅が変なダイエットしちゃって病んでるみたい。メンヘラになって変な薬漬けにされちゃったらどうしよう。何か甘くフワフワで優しいものでも食べさせたいけど、どうしたら良いの? 袋の焼きそばパンも食べてくれない。サンデークリスチャンだけど、祈っていい? どうか、友達の美紅を助けてぇ〜」


 担当の光は、久しぶりに祈っていたようだ。日曜日を除いたら、一年ぶりぐらいの祈りだった。


「やれやれ。ようやく祈ったか」


 私は、厨房で台湾風の蒸しパンを作り、ミルクティーを魔法瓶につめ、バスケットにぜんぶ入れて美紅の家に届けてやった。普段は割と自由にパン屋をやっている私だが、今回に限っては光の祈りという事もあり、神様の命令で全部動いた。こういう仕事は珍しくなく、貧困で困っているクリスチャン家庭にこっそりお金を届けたり、食料を運んだりしていた。もちろん、当人が祈らなければこちらも何も出来ないが。光の祈りを届くかはわからなかったが、友達の為という事で神様も聞いてくれたようだった。


 今日、美紅が店にお礼にやってきたが、元気そうだった。霊感も鋭そうな子で、正体バレないかヒヤヒヤしていたが、事なきを得た。


「ふー、ヒソプ。久々に本業やってしまったよ」


 今日の閉店作業を終え、明日の仕込みを終えると、飼い犬のヒソプの背を撫でた。


「わん」


 ヒソプはそんな事は知ってか知らずか、目を細め、店イートインスペースのお気に入りの場所でくつろいでいた。


「神様から連絡きてる」


 神様からの連絡を届いていた。この連絡方法は、トップシークレットだから、今ここでは言わないよ。


 てっきり天界からの材料の事かと思ったが、穂麦町の公園に悪魔や悪霊の出入りする門が開いているそうだ。厄介な淫乱の悪霊が出入りした可能性もあるようで、人間に取り憑きトイレには盗撮カメラも仕掛けさせたらしい。これらの処理の依頼が神様から届いた。


「よっしゃ! 本業!」


 私はコックコートの上に上着を羽織ると、さっそく穂麦市の公園にいき、悪霊の門を閉じ、女子トイレの中にある盗撮カメラを破壊した。


 このトイレは光や美紅もよく利用していた。その事を思うと、私はゾッとしてしまう。日本は偶像だらけなので、こうして悪霊が入りやすい。公園にある子牛の彫像、この偶像が悪霊の門を開ける鍵になってしまったようだった。さっそく門を閉じ、部下の天使を何人か配置させた。これで大丈夫そうだ。ちなみにこの天使達は、今は地上用の肉体は持っていないので、普通の人は可視化はできない。人間の天使のイメージと違い、この門を守る天使達は屈強で筋肉モリモリだ。そうでないと悪魔や悪霊の攻撃に勝てない。


「本当は、光が地域のために祈ってくれれば、他にセキュリティがガバガバのところも、処理できるんだがなー。自由意思で自分から祈ってくれないと、こちらも動けないんだよ。本当は光の部屋の前にも我々を配置したいんだよ。悪霊が入らない為に」


 やはり、私は副業を楽しんでいても、根っからの社畜らしい。本業中は水を得た魚状態だった。


 気づくともう夜だ。空には、蒸しパンみたいな黄色い月が出ていた。


「先輩ー、副業の調子はどうっすか?」

「まあまあだよ。相変わらず暇だけどねー」


 月を見ながら、しばらく部下の天使と話していた。


「担当の光ちゃんは、どうなんですか?」

「ダメだね。全く祈らない。暇でしょうがない。熱心なクリチャンの担当の時は、ワーカーホリックになってしまって神様に怒られちゃったから、今はサンデークリスチャンの担当なんだよね。前の担当の子は、エクソシストもやってたから超忙しかったんだ」


 私はそう言うと、大きな欠伸をした。


「先輩は、本当社畜ですね。たまには天界に里帰りしません? まあ、先輩は、賛美隊長やるとまさにワーカーホリックになって喉枯れるほど歌っちゃうんだけど」

「うーん、でも私は地上で仕事したいんだよねぇ。副業は楽しいし。君も休日は、私の店にパン食べにくる? なんならバイトでもする?」


 部下は苦笑していたが、私は再び大きな月を見上げていた。

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