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仮面の迷宮  作者: デラシネ
大災害
4/4

猫は動じない

1階へ到着すると、正面入り口の前に人集りが見えた。


やはり何人か取り残されていたらしい。


猫が姿を表すと、一斉に皆の視線が向けられた。


しかし疲弊しているのだろう。一様に座り込んで誰も声を発さない。



「ヤマさん、どういう状況だニャ?」


「お、●●●さんやっと会えたね・・・・なんで猫なの?」


「ヤマさんまで何言ってるニャ」


「うん・・・・まあ・・・・いいんだけど」




小柄で緑がかった髪色をした女性が●●●へ駆け寄ってきた。


「●●●さん!良かった!無事だったんですね・・・・・なんで猫なんですか?」


「アサギさんもいたのかニャ。悪いけど猫の話をしてる場合じゃないニャ」


アサギと呼ばれた女性社員はちょっとたじろいだ。


「え、ええ。そうですね・・・・(気付いてないの?)」



「リンドウさんも、合流できてよかったニャ」


リンドウと呼ばれた男が口籠もりながら猫に挨拶をした。


「●●●さん・・・・・いや、僕も嬉しいですけど」


なんだかよそよそしい・・・。


「ん?どうかしたかニャ?」



この場にいるものは猫を含めて7人。


幸運なことに全員、猫と頻繁に仕事上の遣り取りをしている者ばかりだった。



「とりあえずさ、見てよ。これ」


「・・・・・・・え・・・・?」



正面口のガラス張りの扉からは、いつも通りの大通りが見えた。


しかし、道ゆく人々は不自然な体勢で停止し、車も動いていなかった。


「外に出れたのかニャ?」


「出れないね。ガラスみたいに見えないカベがあるんだよ」


ヤマさんが拳で空間を叩くと、ゴツッという鈍く、破壊は不可能であることを認識させる音が轟いた。


「ふっ!!!!」


猫は後ろ回し蹴りを放ったが、やはりビクともしない。


「いくら●●●さんでも無理だよ。ハンマーでも叩き割れなかったんだから」


「・・・・・一体何がどうなってるんだニャ・・・」


「とりあえず状況を整理するニャ」




皆でいくつかの情報を共有し、状況をすり合わせた。



1.猫以外の人間は気がついたらこの場所にいた。


2.他の人間は見当たらない。


3.少なくとも1階から外界に出ることはできない。


4.外界に連絡はできないが、内線は使用できる。


5.非常電源に切り替わっており、非常用コンセントを除き電気は利用できない。照明もいつまで保つか不明。


6.仮面を被った妙な連中が首謀者のようだ。今の所確認できたのは2名と仮面のない手下1名。


7.仮面の連中は空間移動とマネキンを操る力を使う。他の能力がある可能性も。


8.ハタダイさんも取り残されており、仮面の連中に連れ去られた可能性が高い。



「大変だったんだよ。みんなパニックになっちゃって」


「すみませんニャ、俺がモタモタしてるから・・・・・」


「いや、一番大きな収穫だよ。そいつらを捕まえればいいんだから」


「マネキンもいい情報ですね。少なくとも私たちじゃ破壊できないでしょう」


女性陣の年長組であるサンジョウが代表して発言した。



差し当たっていくつかの問題を解決しなければならない。


「B2Fに内線かけたけど、誰も出ないんだよ。誰かいれば心強いんだけど」


下手に動かなかったのは良い判断だった。どこで仮面の連中に出くわすかわからないのだ。


「ヤマさんとリンドウさんが冷静で助かったニャ」


「まずはやるべきことを絞るニャ」



1.食料の確保


2.電気の確保


3.通信手段の確保



「その後、館内を探索したほうが良さそうだニャ」


皆が頷いた。


「でも・・・・誰が・・・・・?」


アサギが不安そうに猫を見る。


「もちろん俺だニャ」


「僕も行きます」


そこにリンドウが続いた。


リンドウは同僚である以前に友人として、猫の側を離れたくなかった。



「リンドウさんはここで待機してほしいニャ」


「でも●●●さんひとりじゃ・・・」


「動いてもらう時に電話するニャ。多分そうなるニャ」


館内を自在に移動できるのは、この場では猫とリンドウのみだ。


いざとなったらみんなを連れて逃げて欲しいのだ。



「ヤマさんはここでみんなを守って欲しいニャ」


「それがいいね。私は2人ほど裏道に明るくないからね」



猫が冷静に状況を整理すると皆落ち着きを取り戻したようだ。


「そんじゃま、ひとっ走り行って来るニャ」


猫は大きな伸びをした。



「ところで●●●さん」


ヤマさんが不思議なツラを更に不思議にして訪ねた。


「さっきからみんな何ですニャ?人のことジロジロ見て」


「気付いてないの・・・・?」


「気付くことがあるのかニャ?」


「・・・・あのさ・・・・・●●●さん、猫になってるよ」


「・・・・・・・え?」



猫は化粧品売り場の鏡へ走り出した。


恐る恐る鏡を覗き込むと・・・・・そこに映ったのは・・・・猫の顔だった・・・・・。



「・・・・・なんで猫なんだニャ?」



「いやもっと驚くとこでしょ、そこは」

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