1 カウントダウン
『ようこそお集まりのみなさーん。今宵は特別バトルへのご招待がありまーす』
教室で目覚めたとき、真っ先に確認したのは隣の舞坂さんだ。
今日、最後に目にしたときの燃え尽きたようすを引きずっており、ピエロが教壇に登場したときも、どこかげんなりしたふうな面持ちで、気のない視線をちらりと前へ投げかけただけだった。
『戦わされるのではなく、戦うことを選びとる。そんな気概をみなさんには、今宵は見せていただきたいのでーす』
「ふざけんなっ」ミッチーが吠えた。「そういうもっともらしい屁理屈にかこつけて、どうせまたろくでもないサプライズを用意してやがるんだろうが」
『求める戦士はたったの六名。その自主的な自己犠牲で、今宵、ほかのメンバーはモンスターの襲撃を免除されるのです。十秒待ちましょう。選ばれし者たちのバトルかそれとも、この教室へモンスターオールスターズご招待、さあみんなで戦いましょうの刑か。お好きなほうをお選びくださーい』
ピエロが十から始まるカウントダウンの八まで数えたところで、ぼくと安達くんが進みでた。五を数えたところで、乙宮さんと珍念さんが席を立つ。
『ほらほら、あと二名ですよ。四、三……』
「てめえっ、いつかマジで叩きつぶすっ」
ミッチーが勢いよく立ち上がり、ピエロに向かってメンチを切り――。
『二』
無関心を装っていた舞坂さんが、机からすばやく長太刀を引き抜きながら席を立ち、そのまま教壇のほうへ歩いてゆくと、刃先を半透明のピエロめがけて突きつけた。
『そんなことしたって吾輩は切れませんよお』
「さっさとつれていけ」
舞坂さんが抑揚のない声で迫ると、ピエロがにたりと笑う。
『それでは、六名の選ばれし戦士たち、モンスターどもを相手に、ぞんぶんにその力を発揮するがよろしー』
ピエロが両腕を広げるなり、視界がぐるりと転回しながら溶け去り、つかのまの浮遊感が消え去ったあと、ぼくらは暗い廊下に放りだされていた。




