『転』(マックロウXK担当)
※新たな使用ワード
『バイオリン』
※スペシャルワード
色(白・黒・赤)
手の描写
喜怒哀楽の『怒・哀』
「世界を……救いにだと!?」
そうだ……。
だんだん、思い出してきた……。
私の前世はジャンヌ=ダルク!!
神託を受けた私は祖国フランスを救うため、それこそ命を賭け死に物狂いで戦った。
だが、私を待っていたのは、祖国からのまさかの裏切り。
頼りにしていたシャルル7世からも見捨てられ、私はあえなく火あぶりの刑に処された……。
あ、完全に思い出した。なんか腹立って来た。
めちゃくちゃムカついて来たぞ!
「冗談じゃない! 私はむしろ、この世界をぶっ壊したいんだ!」
「はっはっは、分かる! その気持ちは良ーく分かるぞおっ!」
「!?」
女海賊は高笑いをしながら、意外な言葉を口にする。
「アタシの前世はメアリ=リード。仲間たちの裏切りで戦いに敗れて死んだ、しがない女海賊さ。そして、あそこの頭のイカれた女の前世は『織田信長』」
「何っ!?」
メアリ=リードといえば、アン=ボニーとならぶ二大女海賊の一人じゃないか。
そして、織田信長といえば、配下の裏切りで天下統一の夢半ばにして斃れた超有名武将じゃないか! 何で、女になってるんだ?
「いや、本当にあの織田信長なのか? もっとこう威厳というか第六天魔王というか、思っていたイメージと全然違うんだが……」
「あいつはちょっと天下布武り過ぎて、おかしくなっちゃったんだよ」
「『天下布武る』って日本語は初めて聞いたぞ」
「あと『敦盛』の踊りすぎだな。あれだけ敦盛は用法・用量を守って正しく踊れと言ったのに」
それはまあ、しょうがない。子孫もフィギュアスケーターだし、根っから踊るのが大好きな家系なのだろう。
それにしても、私も含めてガン首揃えて、裏切られて死んだ奴ばっかりじゃないか。
「それならなおのこと、復讐を考えるならともかく、何で世界を救おうだなんて?」
「とりあえず、鏡を見てみたら分かる」
メアリに促されて、私は住んでいる賃貸アパートの洗面台の鏡に向かう。
「あっ、胸が無い!」
元々、金髪のスレンダー美人と見せかけて、実は甲冑の下にDカップのおっぷぁいを隠し持っていた私。
だが、鏡に移った自分の姿は、顔立ちこそ前世の面影を残しているが、白地のキャラクターTシャツを着た黒髪のショタ少年。
美しくしなかやかな白い手も相まって、いかにも『アルティメイトオーガニックサンバイザーアルティメイトイラストレーター』といった感じだった。
自分で言っててどんな感じか良くわからないが。
「これが、私……」
試しに下も脱いでみる。
「ついてる!」
「どうやら、我々は新しい肉体を与えられて転生したらしいな」
確かに、本来男であった信長も女体化しているし、最近流行りの転生を果たしたという事か……。
だが、一体誰がどうして、なんのために?
チャッチャッ、チャーラーラー。
チャッチャ、チャーララーララー。
「それはもちろん、『世界を救う』使命を与えられたからでございますよ、ジャンヌ様」
さっきまで毒にやられてピクピクしていた女信長が、バイオリンで情◯大陸を弾きながら、うやうやしく立ち上がった。
「信長、もう身体は良いのか?」
「私は前世から、弟や部下から裏切られまくってましたので、毒には慣れっこなのです」
「それはそれで、嫌だけど……。しかし、世界を救うねえ……。正直私はやりたくないのだが」
「ですが、我々は望むと望まざるも構わず、強大な『力』を与えられてしまっております。これを見てください」
ドゴオオオオオッ!!
信長が右手を窓に向けてかざすと、赤い爆炎が賃貸アパートの壁に大穴を穿つ。
比叡山を焼き討ちし、本能寺でその身を焼き尽くした、実に信長らしい能力。
「瞬間的に出せる力はこんなものではありません」
しかし、その炎がカーテンや壁に燃え移り、建物火災の恐れが出てくる。
すると、メアリは消防車のような莫大な水流を放出し、壁ごと炎を消し飛ばす。
おそらく海水を操る能力なのだろう。潮の香りをふんだんに含んでいた。
「アタシの水の能力も、またまだいけるぜ?」
「ああ……、敷金が……」
外の風景がそのまま見える壁の前で突っ伏す、敷金の返戻金を失った私。
「あなたにも新たな力が宿っているはずです。さあ、思いっ切りひねり出しちゃって下さい!」
「お前も前世のストレスが溜まってんだろ? 出すもん出して、スッキリしちゃえよ!」
「あー、もうっ! 分かったよっ!」
信長とメアリに囃されて、やけくそになった私は右手に力を込める。
うっ……、右手が……疼く……ッ!!
マックロウXKさん
スペシャルワードをクリアしました。




