『起』(秋の桜子担当)
※使用ワード
無し
※スペシャルワード
手の描写
色は多数
喜怒哀楽の『怒』
全ては………真紅に染まる空から始まった。
青い色が、私の目の中でその色を、滲むように変えていく。じわりと、ジリジリと焼き付く様に空の色も、雲も、視線を下げて見る木々も大地も、物見高い輩達も、それまでの世界が変わって行く。
おのれ!ワタシは爪が食い込むまで手を握りしめた。怒りがワタシの全て、頭の中も、四肢も、めぐる血潮もそれに染まっていく。熱を持ちグツグツと煮えたぎる。
あのお方に、すべてを捧げた。何ということだろう、何故こうなったのだ。込み上げる物をぐっと噛みしめ、いまわの際にカッと目を見開く。
憎い、憎いニクイ、生まれ変わったら、何かを誰かを、守るなど愚かな事はしない、ワタシはワタシの好きに生きてやる、そう!おのれの為だけに生きる世に、生まれ変わってやるのだ!
眼に意思を込める、刹那、冷たい闇がおりて来た、握りしめていた手から力が抜け、だらりとほどけた。
そして………、ワタシは、この世での生を終えた。忘れ得ぬ、たぎるものを魂に焼き付けて。
ここは、何処だ?、何をしていた。ドコに進んでいる。
時がどれ程たったのかはわからない、ふと気がつくと、とろりとした黒の中、上も下も左右も時もわからぬ中を、宙に浮かんでいるかの様に歩いていた。それはとても心地が良かった。
まるで母親の温もりの中にいるような、ふあふあとしている感覚、ソレは、硬くささくれだったモノで支配されていたワタシの心を、ゆるりと温め溶かしていく。
サラサラと水の音が何処からか、微かに聴こえる。川の側かと思うと、ひとつ、二つ、三つよつと、姿を現した小さき光。ワタシの周りには道先案内人の様に、キラキラとした蛍が、まとわりつく様に飛び交った。
漆黒の中で、銀に光る色、その色も、白味が強いもの、青いもの、ももいろ、紫、様々なモノがチロチロと、さざめく様に空を舞う。それらと共に進む。
優しいそれらの色に心を惹かれて、よく見たいと思い、立ち止まりそれらを眺める。笑いさざめく様な光のカケラ達。子供の様に遊ぼうと、誘うような瞬き。
その無邪気な姿を見ていた。やがて押し殺し、閉じ込めているうちに、忘れ果てていた感情が、胸に迫り溢れてくるのがわかった。はらはらと涙が流れる。
何時から泣いていないのか、わからない、分からないが、涙は、大きくひび割れ欠けていた、ワタシの何かを、塞ぎ満たしていく。
声が、聴こえた様な気がする。それはどこからなのか、ワタシは辺りを見渡した。
「私ヲ選んで」
『ワタシヲ選んで』
声の源はすぐ側にあった。色とりどりに舞飛ぶ蛍達が、ワタシに喋りかけていたのだ。選ぶ?何を選べと言うのだ?数々に近づくそれらの群れに、手を差し伸べた。
白、赤、青い、緑………フワリと膨らむ光達が、しゅわりと掌に飛び込むように集まる。えらべ、エラベと、耳にキィンとした痛みをともなう声が入る。
「イタイ、どれでもいい、いいから離れろ!お前達、邪魔だ!」
一つを握りしめた。パア………、と散る光達。音が止みワタシの周りは、無になる。代わりに川の水の音が大きくなる、激しくなる、聴こえるソレが速度を持ち、近づいてくる。
ひたひたと足元が水に浸かる、何処からか来るのか、わからない、わからない、心が戻っのか、怖さがワタシを支配していく。握りしめた手の中でモゾリと動く。ソロリと手を開く。もも色の光がそこにある。
『うふふふ、ありがとう、ワタシタチハヒトツニナル、そしてアナタは目覚めたら…………をつかって、イロイロ守るのよー!ないとニンゲン、ホロビルノー、ファイト、おう!』
は?能天気なその声が、スルリとワタシの耳に入った。トロリとソレは溶けて、外に溢れること無くワタシの手のひらの中に、吸い込まれていく。
何が起こった?何故消えた?この世が滅びるだと?なにを守るのだ?肝心の事が聞き取れなかった、何を?かつて、ワタシはあのお方が、創りたい御代の実現の為に、全てを捧げた。
そして裏切られて………、己!憎き輩共よ!そもそもここは何処だ?ヒトツニ?何を守る?守るなどクソ喰らえだ!そのような世界などいらぬわぁぁぁー!ぬぉぉぉ!
「ぐぁ!し、しまった!み、水が!ぐぬぬぬぅ!動けぬぅ」
ドドドドゥ!ゴウ!ザッん!と下を向き水から気を逸らせていたワタシに、塊の様な多くな水が正面から口を開けて押し寄せて来た。それはまるで水龍に飲み込まれる様。
ワタシは、咄嗟の出来事に動く事もできず、あがらう事もできず、ただ受け止めるだけしかできなかった。そしてゴクリと飲み込まれた。静けさに包まれた。
………人助けなど、クソ喰らえな記憶を、しかと、魂焼き付けたワタシは、どぷりと闇に落ち眠りについた。
時が巡る。
………新しき私に、光が声をかけてきた。ワタシは………使命を携え、生まれ変わったらしい。
「お目覚めを、お時間で御座います」
穏やかな声が、私に目覚めの時を、つげてきた。
秋の桜子さん
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