表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

試合後・・・

バスケ部 襲撃後・・・


「・・・ここか。」


俺はGo○gleマップを頼りに、あるカフェへ来ていた。

場所は、大通りにあるカフェとかではなく、住宅地の抜け道にあり、まるでお得意さんしか来なくてもいいと言っているかのようなお店だった。


なぜそんなところに来たのか・・・。


翆さんからの情報である。

美味いコーヒーゼリーを出す店があり、そこには巧彩先輩がバイトをしてるとのこと。


目的としてコーヒーゼリーを・・・先輩との交流を取るために来た。

・・・本当に。


「いらっしゃいませ。」


カランカランと、心地のよい金属音が店員にDandyな髭の生えたおじさんに来店を知らせてくれた。


中はと言うと・・・


ザ・カフェ。


木造建築に薄っすらとしか照らさない明かり。

客席とオープンな調理場にある棚には様々なコーヒ豆のは行った瓶が並べられている。

カウンター席の異様な中途半端な高さ。


奥行きがあって内装は俺の求めるものすべて含んだ完璧な内装であった。


俺はカウンター席へと腰掛ける。


Dandyなおじさんがメニューくれる。


「よくここが分かりましたね。

目につく場所には立ててないと思っていたのですが。」

「俺、穴場スポットってのが大好きなんです。

だから何かないかなと色々探検してたら見つけました。」

「偶然と?」

「いえ、ここに関しては、知り合いがヒントだけを教えてくれましたので。」


嘘は言ってない。

穴場なラーメン屋は実際にもう探したことあるし。ハマったし。

ヒントに関しても翆さんにもらったし。


そうでしたかとDandyなおじさん・・・もうマスターでいいや。

マスターはいい、「ごゆっくり」とコーヒーを入れはじめた。


俺はメニューを開き・・・


「・・・すいません、珈琲ゼリー下さい。」

「・・・珈琲は飲まないのですか?」

「・・・か、カフェオレにしていいなら・・・。」


あ、マスターの目が鋭くなった。

これは絶対「うちの店来といて珈琲頼まないとか何考えてるんだ」とか思われてる。

数秒縮こまっていると・・・


「ふふふ、申し訳ございません。少し意地悪が過ぎましたね。

珈琲ぜーリーで宜しかったですね?」


パッと優しそうな顔に戻り、ニコニコと笑われた。


「あ、はい。・・・怖かったぁ〜。珈琲飲めよとか言われると思った。」

「お客様は大変正直でいらっしゃいますね。」


口に出てた。


「・・・あんな目で凄まれたら仕方ないと思います。

でもそこまで美味しさ・・・風味かな?に自信あるんですか?」

「えぇ、勿論。ないとやってられませんからね。」

「・・・カフェオレってあります?」

「はい、ございます。甘さはどうしますか?」

「・・・風味が消されない程度に。」

「かしこりました。」


豆から引いてお湯を注ぐ姿はまさにプロ。

ガリガリと豆の砕ける音。

ぽトポトポトとお湯の注がれる音。

どれもがクラシックを流す店内で演奏されていた。


差し出されるカップ。

中には茶色のカフェオレ独特のホロ甘い匂いが漂っていた。


暑いカフェオレ。


ふー、ふー、して喉に流せば・・・


「・・・美味しい。」

「それは良かった。」


しつこくない苦味。

その苦味を強調したと思ったら調和し始める甘み。

牛乳による喉越しの良さ。


「・・・牛乳、そこらへんのスーパーで買ったやつじゃないですね?」

「お、お客様は舌が肥えてらっしゃいますね。

使われている牛乳は牧場から直送されてます。」

「・・・よくわからんけどすげぇ〜。」


ん?牛乳準備できてるならそれはカフェオレは想定内のメニューだってことだよな?

なぜ凄まれたのか。

ダダのからかいということに気づき不機嫌になるが・・・


「・・・美味いからいっか。」


カフェオレによる口内幸福にゆるしてやることにした。

マスターがクスクスと面白がる声が聞こえて来るが無視だ。


カフェオレを楽しんでいると・・・


カランカラン・・・


「すいません、マスター!遅れました!」


先輩が入ってきた。


「尾崎くん、大丈夫ですよ。

お客様は少ないですから。」

「すぐ準備して来ます!」


スターフルームと書かれた扉に入っていく。

慌ただしいなぁ〜。


「・・・従業員はあの人だけですか?」


あたりを見渡しても店員ぽい人はマスターしかいない。

まぁ、客足も少ないから事足りぬのだろうが売れたいとは思わないのだろうか?


「えぇ、そうですよ。私はそこまで売れたいとは思っておりませんからあまり雇っていないんです。

常連様の笑顔さえ見ることができればそれでいいので。」

「・・・俺の立場からすれば多くの人にこの美味しさ伝えたいですけどね。」

「ありがとうございます。」


ズズズと啜り、店内を見渡す。

この落ち着いた雰囲気の店に多くの客が・・・。

想像したら、この店には似合わないことがわかった。

なるほど・・・穴場か・・・。


「・・・あ、来た。」


ふ〜ん、感心していると、先輩が黒の制服でエプロンを腰に巻いた姿で出てくる。

うわー、イケメンは似合いますねぇ〜。


「・・・あれ?天峰君?」


先輩はやっと余裕ができたのか、店内にいるお客が俺であることに気づいた。


「ども。」

「知り合いなのかい?」

「はい、昨日知り合ったばかりですけど。」

「先輩にはお世話になって・・・いたりいなかったり?」


知り合い以上、友人未満の関係。伝えにく。


「それよりも、今日は災難だったね?」

「え?何がです?」


皿洗いを始めながら、話しかけて来る。

俺は尋ねられた意味が解らずキョトンとした。


「ほらほら、体育館でのバスケ対決。」

「いたんですか・・・。」


あの場に先輩いたのか。

・・・全く気が付かなかった。

視線を上にして記憶を遡るが・・・思い出せない。

興味ないことには一切覚えない、目を向けない性格がここで裏目に出たな。


「彼女、本堂翆さんはああ言うお転婆さんだから許してあげてね。」


なぜ彼女との交流を持っているのか色々事情を聞きたいが我慢しよう。

迂闊に聞くと相手のトラウマを刺激しかねないからね。


「・・・怒ってないですよ。恥もかきませんでしたし。

逆に間近であんな美人さんを間近で見れてラッキーみたいな?」


それにいつものことだし。

これで怒れるなら、俺の堪忍袋の尾はもうくっつけない。

それを思えば、別に普通のことだった。


「・・・彼女とは知り合いなのかい?」

「・・・なぜそう思ったんです?」

「これでもサッカーぐらいは嗜んでてね。

あんな連携、適当な人選でできることじゃないってのはすぐに分かったよ。」


直樹を騙せたのは、直樹がアホだからだろう。

それに比べて先輩は・・・騙せないな。

俺はため息を付き、空のカップをカウンターに置いた。


「・・・信じられないかもしれないですけど、一応彼女の恋人してます。」


ちょっと恥ずかしいがこの人は他人に言い回すとかはしないだろうから本当のことを言った。

まぁ、大抵信じられないけど。

否定されたならそれでいいや。

そう思っていたが・・・


「・・・マジか、いや、でもそれなら頷けるな。」


信じられた。うんうんと納得したかのように頷かれる。


「信じるんですね?」


驚いた、非常に驚いた。

俺の言葉なんて誰も信じないから俺から伝えるとか諦めてたんだけど・・・。。


「うん、信じるよ。本人が君とは言ってないけど、頼もしい彼氏がいるって言ってたし。

それに俺は見る目があるからね、君は下らない嘘はつかないでしょ?」

「あぁ、もう言ってることがイケメン。

俺が女だったら即告白してましたわ。」


あーあ、先輩の言葉で顔が熱い。

翆さんと言い、先輩といい、なんでイケメンはこうも辱めてくるのかね?


マスターから再度受け取ったカフェオレを煽り、赤くなったであろう自分の頬を隠す。


「・・で、どうなの?ぶっちゃけあんな超人と付き合う感想は!」

「先輩、意外と色恋沙汰好きですよね・・・えー、翆さんと付き合い始めて・・・」


とても黒歴史と化した過去を遡る。

俺は一通り思い出して出した感想は・・・


「・・・あの人を愛せるのは俺だけだなと・・切実に確実に・・・心から理解しましたね。」

「一体どういう恋愛を体験したんだい?」

「・・・玩具・・・いや、奴隷?」

「・・・どゆこと?」


深呼吸をする。

肺に空気を溜め・・・今まで溜め込んだすべての思いを口にする。


「あの人には・・・甘さってのが1片たりともっ!存在しないんですっ。

やれ訓練だ、やれ勉強だ、やれ練習だ。

小4では殴られ叩かれ蹴飛ばされ、目の前で恥とか尊厳とか嘔吐と一緒に垂れ流しましたよ!」

「・・・ぼ、暴力的なんだね。」


一歩、俺の迫力に押され先輩は後退る。


「小5では夏休みを丸々使われて何故か!本当に何故かっ!・・・中学の範囲の勉強を全部叩き込まれました。

知恵熱何度出しても許してくれなかったのはいい思い出です。

・・・おかしいのが、逃げ出そうとしたら拘束されるんですよ?

拉致監禁なんて日常でした。」

「・・・そ、束縛的なんだね。」


2歩、俺の言動の中の翆さんの行動にドン引きして後退った。


「小6では毎日毎日追いかけ回されて、捕まったら一週間は軟禁洗脳、軟禁洗脳の繰り返し!

気づいたときには人前で愛を囁いていました・・・。」

「・・・情熱的なんだね〜。」


俺はゾンビのような目で先輩を見て・・・


「・・・漫画みたいな甘々な生活送ってるとか思いました?」

「ご、ごめん・・・彼女にも女性らしい一面があるのかと・・・。」


申し訳なさそうに謝罪してくれる。

その正直さは美徳だよな。

俺は遠い目をして先輩を許してやることにした。


「わかってくれればそれでいいんです。

察しろなんて難しいことは言いませんから。

だけど、これは分かってください。

彼女には・・・普通を求めてはいけないんです。

求めても・・・悲しくなるのは・・・俺ですから。」


涙は流さない。

俺はもう決めたんだ。

どんなに理不尽でも、どんなに辛くても、どんなに理想像からかけ離れていたとしても、男らしくてどれだけ俺が情けなくても・・・泣かないと決めたんだ。

 

「・・・うぅ、今まで一つも恋人らしいことしてない。。」

「なんか・・・ごめんね。」

「・・・同情するなら甘すぎない辛すぎない、普通の恋愛をください。」

「あ、突っ伏した。」


今までのイベントらしいイベント。

世のリア充たちがハートを撒き散らす時間。

クリスマス、誕生日、エイプリルフール、バレンタインデー・・・

俺はどれも軟禁もしくは監禁されていた。


いや、それだけならまだ楽しめる余地はあっただろう。


それができないのは、理由があった。

翆さんが男前すぎるのだ。

プレゼントとなればその物が、俺のものと比べられないほど高価だったり、サプライズをしようとも逆にされて俺が泣いちゃったりと・・・まともな彼氏らしいことは何一つ出来なかった。

つまりは全部彼女からなので、嬉しくはなっても恥ずかしさが増して、楽しくはなかった。

今思えば全て・・・受け身だったなぁ〜。


あれ?俺、彼氏じゃなくて、彼女じゃね?

・・・いや、拉致される彼女とか聞いたことないな。彼氏もないけど。


「・・・今の若者は進んでるんだねぇ〜。」


マスターの関心した声が聞こえてくる。

俺には目を見開き、マスターを見るしかできない。


「この子たちの場合は進みすぎてるような・・・。」


先輩の言葉が一番胸に響く。


「進みすぎてるなんてもんじゃないんですよぉ〜ぉぅぉぅぉぅ。」

「鳴き声が特殊すぎる。」


苦笑する先輩。

俺は先輩の手をとって・・・


「変わって・・・くれます?」

「嫌だよ?そんなキラキラした目をされてもね。

ウルウルしてってわけでもないからね?」


ちっ、いくら目で訴えても変わってくれないか。

彼氏の立場を譲るわけでもないが、今回の面倒ごとの主犯格である先輩にはそれなりの苦しみを味わってもらいたいものだ。


だが翆さんで苦しむのは俺だけで十分だ。


やけくそ気味に二杯目のカフェオレを飲み干す。

最後の方の溶けていなかった砂糖の異様な甘さが「現実は厳しいんだよ。」と言っているようだった。


「というか先輩はどうなんですか?そういう相手、居ないんですか?」

「・・・ん〜、俺はねぇ〜・・・。」


なるべく自然な形で雪乃さんに触れる。

彼から彼の心情の重み、軽さ、蓄えられている感情、それらを掬い取るためだ。


先輩は洗った皿を拭きながら、遠い目をしていた。

そして視線を下げ、悲しげに・・・


「いはするんだけどねぇ〜。・・・本堂さんぽい人ではないよ。

いや、でもちょっと似てるかな?」


彼の身勝手で振り回している事実に、彼は罪悪感を感じている。

俺はそれを密かに感じ取り、呆れながら恋愛面でのアドバイスした。


「オレの独断ですけど、発情したときに目にハートマークを浮かべる彼女はやめたほうがいいですよ。

身がいくつあっても保ちませんから。」

「・・・童貞卒業してるの?」

「死守してるんです!死守してるから言えるんです!」


多分今まで拘束されても奪われなかったのは彼女の温情だな。

・・・いきなり彼氏の童貞奪う彼女はどうかと思うけどね。


「安心して、流石にそこまで性欲の強い子じゃないから。」

「つまりは翆さんとは逆の女の子らしい人だということですね。」

「ま、まぁ、そうなるね。」

「羨ましすぎます、くたばってください。それか変わって体験させてください。」


そしたらその彼女を置き去りにするような考えは根本から崩されるから。

今回の面倒ごとの現況である貴方の腐った根性はもうもう再生しませんから。


ま、そんな非道なこと、俺はしないけどねぇ〜〜〜!


あ、悔しすぎて血涙出てきた。


「・・・そこまで辛いんだったら別れ切り出してみたら?」

「阿呆言わんでください。

いくら辛くても俺は翆さん愛してるんです。大好きなんです。

翆さんの彼氏ではありたいんです。

俺がフることはまずありません。」


・・・ふったらどうなるかとか、翆さん理解している俺は冗談でも言えない。

・・・もう俺は本堂翆という蜘蛛による巣に絡まされた餌なのだろう。

彼女の呪縛から逃れられない事実を受け入れている現実を再確認する。

感慨深いと感傷に浸っていると・・・


「彼女も少しおかしいけど、君も君で世間一般ではおかしいこと気づいてる?」


先輩は度々失礼だ。

俺はおかしくなんてない。


「俺はおかしくないですよ。

おかしいのはあの人。

もし俺がそう見えるのなら、それは彼女のせい。

逆調教という行動の結果が俺だと認識してください。」

「君は本当に色々と逞しいよ。」


笑いながら俺を評価する先輩。

冗談のように聞こえる雑談に、一切の冗談がないのを知ってらいからか、先輩から俺への評価はバク上がりのはずだ。

そうに違いない。


ほめられてちょっと上機嫌になったから俺なりのアドバイスをする。


「先輩も翆さん真似したら、先輩の想い人は俺が翆さんにぞっこんのように、先輩を愛してくれますよ?

条件としていつまでも一緒にいるってのがありますが。」

「それは・・・無理だなぁ〜。まず前提条件が達成できない。」

「転校でもするんです?」


先輩は遠い目をした。

悲しそうな表情をして、先を見据えたような、それを諦めてるかのような顔。


「海外に行くんだよ。・・・俺の我儘でね。

それにもう俺は彼女を悲しませてしまったし・・・俺に選択権はないんだ。」

「何言ってんすか、生きてる限り選択がなくなることはないんですよ?

先輩の過去に何があったか知りませんけど、己で選択を潰してることは理解してください。」

「分かってはいるつもりなんだけどねぇ〜。

やっぱりどうしたって邪魔されるんだ。

これはもう・・・どうしようもない。」


苦虫をかみ潰したような笑み。

俺はその苦しさが半分とまでは行かなくとも少なからず理解はできる。

これでも天才とともに行動してきた凡人だ。

だから見えてくる先は誰よりも明白な自信がある。


「いいんですか・・・一度手放したらもとに戻らなくなってしまうかもしれませんよ?

それでも行くんですか?海外。」


俺の悪い予感はたいてい当たる。

よれも未来予知のごとく明確に。


俺はそんな予感したくなくて、考えないようにしていた。

そしたら自然と身についたものがあった。


自分が嫌なら他人を見よ。

観察眼が翆さん並みに鍛えられた。

だから言える。


このままでは先輩が得られる幸福は、雪乃さん次第になってしまう。


しかしそれはもう先輩もわかっているのだろう。

彼は即答した。迷いもせず言い放った。


「まぁ・・・もうするって・・・決めたからね。」


俺のアドバイスに先輩はあまり強い反応を示さない。


俺の課題は彼の頑固な理由の把握。


なるほど、やはり彼の過去にその答えがある。

オレはそう確信した。


「お話してるところ悪いけど、巧彩くん。店内の掃除お願いしていいかな?」

「あ、はい!今すぐ!また後でね、天峰君!」

「は〜い、お仕事頑張ってくださ〜い。」


マスターに言われて慌ただしく仕事をする先輩。

その背中は優しそうな大きな男らしい背中で、頼もしかった。

さっきみたいな声を出す背中ではなかった。


俺はため息をつく。


先輩だって思春期。

恋愛をしたい年だ。

ただの一人の少女に思い馳せる少年だ。

これは俺から恋愛話を聞こうとしたことが証明している。


しかし先輩は、思春期の、その当たり前の心情を押し曲げて、目的を達成しようとしている。


成し遂げようとしているものが好きだからってだけでは決めれない覚悟。

想い人をないがしろにする覚悟。


・・・彼の中にはその覚悟を促進するほどの過去がある。思いがある。


これは彼とだけ交流を持ったところで判明するものではない。


今日の会話でそこまで繋げられなかった時点でもう俺に巧彩先輩か、手に入れる手段はなくなった。


・・・雪乃先輩の方にも交流を持つべきだろうな。

ていうか前提として彼等の過去を知らないとならない。


先の面倒くささにため息をつく。


「お客様、お待たせしました。コーヒーゼリーです。」


目の前にバニラアイスを乗せた黒色の物体が差し出される。

備え付けのミルクを垂らせばその黒は白へと彩られた。


平たいスプーンで救えば黒は顔を出す。

バニラアイスと一緒に救おうとそれは変わらない。


口に放り入れる。


始めに来る苦味。アイスの冷たさが口内を刺激し、甘さで苦味も同時に和らげる。

そしてミルクが全体を包み込むように滑らかな風味を出す。


口内が幸福になるのは必然だった。


「・・・美味いな・・・苦くて、甘くて・・・とても滑らかだ。」


黒色は喉へと流れて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ