はじめ
僕が死んだら不幸をください。の本編です。
こっちだけを読んでも内容はわかるようにしています。
気が向いたらそちらの方も読んでみてください。
それでは・・・どうぞ。
恐らく、私は幸せものだ。
人生の中で最高のパートナーにも出会えて、たくさんの愛を育むことができた。
勿論喧嘩をしたことだってたくさんある。
意見も食い違い、傷つけも傷つけられもした。
でも最後にはちゃんと仲直りすることになる。
言葉に出して謝罪したことも、結論の出ないことには互いに水に流したりもした。
逆に許し合うために始めた議論がまる一ヶ月と続いたこともあったけ・・・。
本当にいろんな意味で色濃い人生を送ったと思う。
でも出会ってすぐ、監禁されたり、鍛える名目でボコボコにされたのは流石に怖かったな。
私も出来たはともかく、したのだからイーブンになったとは今は思っているよ。
あぁ、本当に・・・楽しかったな。
だがまだ、私の人生はパートナーだけでは語れない。
私には友人が多くいた。
私達は馬鹿だったのだろう。
普通バレたらヤバいことだって、自分に従い、自分の正義の願うまま己を貫き通した事がなんどもある。
流石に赤の他人に迷惑はかけなかったけど、その殆どに私達は笑い続けていた。
どれも全て・・・危なっかしくて・・・楽しかったなぁ〜。
悲しいこともたくさんあったっけ?
知り合いの命を救えなかったり、多くの行動を後悔したり、夢を何度も挫折しそうになったり、涙が止まらない日もあった。
だけどそのどれもすべてを・・・私は否定しない。
だってそれが私の選択だ。
私が選び、歩いた道なのだ。
立ち止まったことも、後ろを向いてしまったことも、他人にすがりついた事も、散々迷惑かけたことも、恥ずべきこともあったけど・・・最終的に満足ている今ならそのどれもが誇らしい。
人間としてそう出来た事が、私はとても嬉しいのだ。
だってこれがあるから今の私がある。
だってこんな自分がいたから彼女のパートナーとなれた。
彼女にふさわしい人間となった。
たくさん笑えた。
たくさん泣けた。
もう私は幸せなのだ。
もし語るのなら何十時間とでは事足りないだろう。
数カ月、出来るなら一日ずつで言葉にしたい。
・・・あぁ、そうだ。
よく考えれば、一番彩りがあるのは15歳から18歳までのその3年間。
何十年の人生の中で、自分人生の基盤が成り立ったのはその間だったんだ。
この3年間で、私の人生は大きく変わったんだ。
いや〜、懐かしい。
とても懐かしい。
今思い返せば、これがなかったら180度、全く違う結果にたどり着いていただろう。
人生をこんなに思い返して、心温まる私はいなかったと思う。
だが勘違いしてはいけない。
楽しかったが、とてもキツかった。
とても苦しかった。
正直、ブラック企業に努めたのと同じほどで、一歩間違えれば心が砕けるほどのものだった。
でも、それでも楽しめたのは、相棒のおかげなのだろう。
子どもたちにはそれを何度話したっけ?
何度「もう何回も聞いたよぉ〜。」とウザがられたな。
そうであっても、私は伝えたかったんだと思う。
それしかすることがないと言ったらそれまでだけど、どうか聞いてほしい。どうか見てほしい。
私の人生は珍しいが、そのあり方は誰よりも人間らしいと思うから。
真似してほしいわけじゃないけどこんな人間もいるんだぞと知ってほしいから。
人によっては笑い話ではないだろう。つまらない、そんなものかとけなすだろう。
だが、知ってくれるだけで満足だ。
私の人生は、それほど私の中では・・・素晴らしいものだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高校入学、4月・・・春。
多くの人の新たな時代への入り口。
誰一人として例外ない、始まりの日
当然、俺もそうだ。
花びら舞い散る桜並木道。
この踏み出す一歩は、新たに高校生となるその覚悟の一歩。
「・・・楽しみだ。」
空の青さに感嘆しながらも、俺は少なからず高校生活というものに心を踊らせていた。
早く学校に行きたいと無意識の内に早くなる足。
まるで中学という、黒歴史にもほかならかい記憶を忘れようとするかのごとく、俺の心は舞踊っていた。
「少し早く着きすぎたかな?」
新入生を歓迎するような装飾をされている校門に辿り着くと、そこにはあまり人はいなかった。
普通なら親御さんとかでごった返しているものと言うのに。
しかしそんな疑問は一年生の校舎へと向かうにつれて、消えてった。
「あ、なるほど、もうみんなここに来てたのね。」
一年生の校舎の壁に、俺と同じ新入生である子達が群がっていた。
多分自分のクラスを見ているのだろう。
もうその場の喧騒は、ライブ並みに凄まじいものとなっていた。
女子たちはもう友達になったのか、それとも中学からの友達なのかいくつかのグループになっている。
男も同じように陽キャは陽キャ、陰キャは陰キャとしてもうグループは出来ていた。
俺はどうだろう?
この学校に来ている俺の中学の友人は2・3人。
そいつらは同じクラスではないし、と言うより姿すら見えていない。
俺のボッチ化は確定事項だった。
だが挫けない。だってまだクラスの場所を見るだけの行為。
俺には友人はできないなんて決まることはない。
俺は張り出されている紙を順に眺めて行く。
A,B,C,D,E,F組・・・6組と数は多いが、すぐに自分のクラスは判明する。
「A組・・・か。」
はじめの紙に自分の名前「神無月天峰」と書いてあったからだ。
俺はA組を目指して歩き出した。
一年生のクラスの場所は3階なので階段をタンッタンッタンッと駆け上がっていく。
A組と書かれたプレートを見つけ、その教室内へ。
中にはもう数人ほど人がおり、互いに話し合うほどの仲になっていた。
席は自由なのかと周りを見渡すと黒板に席が指定された紙があるのに気づく。
「えーっと・・・廊下側の2列目の一番後ろ。」
俺はバックを背負い直し、指定された席へと座ろうとする。
ドサっ
「・・・。」
特にしたいこともないし、誰かと話すでもない俺は静かに教室を眺め一言。
・・・高校にも・・・それなりの知り合いが欲しかったなぁ。
誰とも会話することなく、ただ座って人が来るのを待つだけの自分を自覚した瞬間、俺は少し寂しくなる。
いや、分かってはいたんだ。
気軽に話しかけれる人がいない現状、俺の性格では誰にも話しかけられず、ただボッチに過ごすことになることは、さ。
確か中学の頃もこんなことあったっけ・・・
あれは中学のクラス替えが起きた当日の話・・・
クラス内に知り合いなし。
接点も全くなく、襲うのは一人という恐怖。
中学という年代をボッチという青春のせの字もない状態で過ごすかもと言う現実。
結局それは真実となり、毎日ボッチで現実逃避のため授業が始まるまで寝続けたという陰キャの記憶。
そして今・・・
何も変わっていないっ!
圧倒的な現実っ!
変わろうと、陽キャになろうと心理学の本を読み漁った日々っ!
それは何一つ身についてはいなかったっ!
神無月天峰はこの現実に涙が出そうになっているっ!
ただひたすらに、両肘を机につけ、俯きながら出てきそうな涙を耐え続けていたっ!
悲しきかなっ!主人公神無月天峰は寂しがりやで、自称コミュ症であったのだっ!
「おーい、神無月。」
涙を静かに流す天峰に神からの救いが訪れた。
俺はうつむかせていた顔を上げる。
そこには短髪の目がキリッとした男が映る。
「よ、俺、村上直樹。これから3年間宜しくな。」
村上君は優しそうな笑顔を俺に向けてくれた。
「・・・。」
差し出された右手を両手で掴み取る。
「おー、両手で握られたのは初めてだ。」
彼は優しい人だ。
我ながら、自己紹介をされただけで相手を信用してしまう俺がちょろいのだけなのだろうが、今の俺にそれを考えられる余裕はなかった。
俺は今、神への感謝で・・・いっぱいだったのだ。
「・・・神様・・・。」
「お、おい、神無月?握る力、強いぞ・・・?」
ありがとう村上君。
「痛い、痛いって、おいおいおいおいっ!」
ありがとう仏様。
「分かったっ!歓迎してくれてるのはわかったからっ!
もう離せっ!・・・っておい!離れねぇっ!?なんだこの馬鹿力っ!?」
ありがと神様っ!
「おいっ!何泣いてんだっ!
ちょっ、やめろよっ!?周りの目がいたいことになるからよっ!?
泣きたいのはこっちだってのに・・・い、痛いっ!?
あーーーーーっ!もう!痛いから離せぇーーーーーーーっ!!!」
「神は実在した・・・。」
お互い休息中・・・・
「でなにか言うことは?」
「誠に申し訳ございませんでした。」
俺は手をさすりながら目を細めてくる村上くん頭を下げる。
このままボッチなのかと不安に陥ってしま異暴走したのは俺の責任だ。
ここは素直に頭を下げておこう。
「ん〜、・・・ま、反省してそうだから許してやる。
良かったな俺が優しい男で。」
「ハハァー、有難き幸せ。つきましては私の感謝と信頼をお受け取りくださいませ。」
「うむ、良きに計らえ。」
お、俺の江戸時代風ボケに載せてきてくれた。
村上君はのりのいい人のようだ。
「じゃ、改めて、村上直樹、これからよろしくな。」
「神無月天峰。よろしく。」
お互いに手を握り合う。いわゆる握手というやつだ。
俺は友人ができたことに感動していると、直樹がズイっと近づいてきた。
「早速だが・・・天峰!お前さ、なんかスポーツやってたか?」
「スポーツ?なんで?」
「いやな、て握ったとき指の革が硬いのと豆が数個あるのに気づいたからさ。
それに手のひら大きいだろ?それって典型的な手を使うスポーツ家の特徴なんだ。」
言われて自分の手を確認する。
確かに豆が数個あり、指の皮は少し硬かった。
・・・よく気づいたな。俺は言われるまで気づかなかった。
「ん〜、スポーツっていうか武道。
この豆は剣道してた時に出来たものかな?」
「なるほど、なら手が大きいのも頷けるな。
剣道してる人の大半は手が大きいし、握力高いんだよ。
でもそれだけじゃないんだろ?小指薬指だけじゃなく親指の皮が剣道で硬くなるなんて聞いたことがない。」
村上くんが結構博識なのに驚いた。
剣道は基本竹刀を小指と薬指を主にして握らないといけない。
これは経験しないと知らないことが多いのだ。
彼の見た目は、偏見だが武道とかじゃなく、サッカーや野球とかの方をする外見。
俺は素直に凄いなと思いながら質問に答える。
「はへぇ〜、よく知ってんねぇ〜、当たってるよ。
俺、ギター弾いてるんだ。何度も革剥けそうになってね。そのせいだと思う。」
「え?音楽でもしてんの?」
「恥ずかしながら知り合いとちょっと。
ま、中学は離れ離れになったからあまり手伝えなかったけどさ。」
「へぇ〜・・・上手いの?」
「いやいや、自分で上手いとかいうナルシストみたいなことは俺は上手いよ。」
こう、見栄を張りたい時ってあるよね。
俺は堂々と言い訳をしながら宣言した。
「今度聞かせてくれよ?」
村上君は楽しみだと笑みを浮かべてくる。
これで嫌だと逃げることは不可能になった。
挑発されてる?上等。
「良かろう、そのお耳が至福に包まれるのを体感するが良い。」
「どんどん自分でハードル上げてくなぁ〜。」
お互いにハハハと笑い合う。
「と言うか、なんで村上くんは「直樹でいいぞ。」・・・な、直樹は・・・「いや、ピュアかっ。」直樹はっ!・・・なーんでそんなに武道に詳しいの?」
途中に直樹からのくだらないツッコミが入ったが気にしない。
べ、別にいきなり下の名前で呼び合うのが恥ずかしいなんて思ってないんだからねっ!
「お、いい質問だ。俺はな、昔からアニメが好きで、こうヒーローみたいな動きに憧れたんだよ。
アクロバティックて言うの?それが出来たらなぁ〜って事で柔道とかテコンドーとか色んな武道やってんだ。
サッカーとかバスケも経験あるし、体育はいつも評価最高点!」
指でピースを作り子供のように笑う。
それはとても眩しかった。
少年のような夢持ってんねぇ〜。平和そうで何よりです。と感想が言えるほど彼は微笑ましい人だった。
「・・・楽しそうだねぇ〜。」
俺からしたら今の彼は羨ましくある。
俺は遠い目をして自分の過去を思い出した。
小中、まともに楽しみながらの運動をした記憶が一切ない。
剣道の先生は家の親なため、めちゃくちゃ厳しかったし、趣味だってある人のおかげで地獄の日々だった。
・・・あぁ、楽しみたかったな〜。
思い出にに耽っていると、直樹がテンション高く迫ってきた。
「まぁな!様々なやつと多くのルールで戦うのは面白いっ!
って事で運動部入ろうぜ?」
「あ、今までの全部、部活誘うための口実だな?」
こいつ、もとから俺を運動部と言うめんどくさいものに誘おうと思って話しかけに来たな?
直樹は偉そうに笑って俺の疑問に答えを出した。
「半分正解で半分不正解〜♪」
お〜、その笑顔ムカつく〜♪
ニカっと笑うその顔はイケメンなため、ウザさ倍増だ。
俺はため息をついて・・・
「・・・俺は運動部には入らん。」
「えーっ!?なんでだよぉ!?お前の身のこなしとさっきの馬鹿力からして絶対運動神経高いんだろ!やろうぜぇ〜〜〜!」
絶対に入ると思っていたのか心底驚いたかのような顔をしている。
すがりついて来るが無視だ無視。
「嫌だね、俺は運動が嫌いなの。高校生になってまで身体をいじめたいとは思わない。文化部ならいいんだけどね。」
「え〜!頼むよぉ〜!一緒に入ろうぜ〜!」
「コラッ!直樹っ!」
「ヒェッ!?・・・睦美。」
高い声に直樹は怯えた声を出す。
声がしたほうを向くとそこにはショートヘアーでキッチリとした委員長的雰囲気を醸し出す女の子がいた。
「あんた、また無理やりに人を誘ってるんじゃないでしょうね?」
背景にゴゴコゴゴッ!とか文字出てきそうなほど怒った様子。
直樹は冷や汗をかきながら・・・
「そ、ソンナコトナイデス。」
「棒読みじゃないのよ・・・はぁ、本当あんたってやつは・・・。
ごめんね、こいつ脳みそまで筋肉でできてるようなやつだから。
私、加藤睦美。よろしくね。」
「神無月天峰、気軽に天峰って読んでください。
名字中二病って言ったら怒りますんであしからず。」
「大丈夫、私バカにする相手は今後ともこいつだけって決めてるから。」
村上くんの頭をポンポンと叩く加藤さん。
直樹は逆らえないのか大人しくしていた。
「それは良かった。・・・ちなみに直樹がこうやって人を誘うことは前にもあったり?」
「えぇ、中学の頃は私が頭を下げるのが日常だったわ。
この学校に来たのだってこいつの暴走を止めるためだし。」
「へぇ〜。」
・・・もしかして加藤さん直樹のこと好きだったり?
その節があることを覚えとこう。
「というか、部活したいならなんでここに入ったの?ここはそこまで部活強いところじゃないでしょ?」
「あー、それはだなぁ〜、なんと!ここに地元では有名な馬鹿みたいに強くて天才でイケメンのやつが来るって噂を聞いたからだ!」
・・・ふ〜ん、馬鹿みたいに強くて天才でかっこいいやつねぇ〜。
そんなラブコメでよくありそうな人間そうそう・・・いたわ。
滅茶苦茶身近にいたわ。
「・・・。」
「頭抑えてどうしたの?」
「あ、いえ、考え事してただけです。」
「もうここまで来たら、そいつとは一回戦わないとな!血が滾るぜ!」
俺と加藤さんを無視して話をすすめる直樹。
直樹の探している人に心当たりがあるのだが、今は言わぬが吉だろう。
加藤さんがテンションの高いな直樹に呆れた。
「阿呆でしょ?ここの志望動機がこれだから。」
「阿呆とはなんだ阿呆とは。
そんな奴と競い合える機会を逃すなんて愚の骨頂だろ。」
「阿呆よ。間違いなくね。」
「・・・その口ぶりからして見たことないんだよね?
流石に本人わからなかったら無意味じゃね?」
俺が気になったことを尋ねると、直樹は・・・
「あ・・・。」
鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。
「「お前アホだな。」」
俺たちが呆れたのは言うまでもない。
直樹はオロオロとして涙目になった。
「むつみぃ〜〜〜・・・!」
「はぁ〜・・・私が知ってるから大丈夫よ。」
「さっすが!むつみ〜〜〜愛してるぅーーー!!」
「はいはい、ウレシイウレシイ。」
「知ってるんですね?」
「えぇ、彼女は身体能力も高いことで噂だったからね。
どの部活の試合にも引っ張りだこだったのよ。
私、バレーボールしているんだけど、中学の試合に出てプロも驚くプレーをしてたわ。
ここらへんの中学から来てる人は全員知ってるはずよ。」
・・・ふ〜ん、女性なんだ・・・。
っておい!直樹、お前はなんで知ってないんだよ。
俺が驚いていると、直樹も同じような顔をしていた。
お前は知ってなきゃならんだろ。
「って噂をすれば。」
加藤さんが教室の入り口の方を見た。
そこには・・・
「・・・。」
キラキラと輝く黒髪ロング、身長176センチと八頭身に、華奢な体躯。
整ったまさしく人形のような顔立ちに歩く姿はまさしくモデルそのもの。
クラス全員の目は彼女に文字通り奪われた。
「綺麗・・・。」
それなりに可愛い加藤さんでさえ憧れるのも無理もない。
「・・・すごい、高嶺の花だ。」
「私達とは立ち位置が違うわね。」
「・・・。」
そうだねと言えなかったのには理由がある。
が、取り敢えず彼女に目が奪われて今はそれどころじゃない。
「・・・フッ。」
一瞬俺を見ただろうか?
確かに目が合い、微笑まれる。
勘違いではないはずだ。
「おいおい!今、俺を見たよなっ!?」
隣の直樹が騒がしい。
・・・ここは直樹を見たということにしておこう。
「俺から出る強者の雰囲気に気づいたな?」と隣で聞こえるからそうしとこう。
「何勘違いしてんのよ・・・見てたのはあんたじゃないわよ。」
「いってぇつ!?なんだよっ!じゃあ誰だってんだよっ!」
加藤さんは直樹にげんこつを落とす。
幼馴染だからか容赦がない。
「そんなの・・・さぁね、知らないわ。」
加藤さんが俺を見た気がしたが、気にしないでおこう。
彼女は・・・・感が冴える子だと言う認識だけは忘れないほうが良さそうだ。
「何なんだよ・・・殴られ損じゃん・・・。、」
頭を擦りながら愚痴る直樹。
・・・この人達はなかなか愉快だね。
これからの学校生活が楽しみだ。
俺がハッハッハと笑っていると・・・
「・・・あの胸、Cカップだよな。」
後ろから腕が回される感触がした。見ると・・・
「よっ、直樹。」
茶髪のおちゃらけた感じの青年がいた。
「ん?彩都じゃん。同じクラスだったんだ。
天峰、こいつは湖國彩都、同じ中学でチャラ男で有名。」
確かに、このテンションの高さといい、髪の色と言いこれこそ陽キャだろう。
「おい、その紹介は悪意あるぞ。」
彩都くんはおいとツッコむ。が・・・
「どうもチャラチャラ男さん。神無月天峰です。」
俺もその場のノリに乗っておこう。
「もっとチャラくなっちゃったよ・・・。てか初対面で酷ないっ!?」
「事実じゃん。」
「あのね、睦美にまで言われたら俺否定出来ないよ。」
「「「する意味はない。」」」
「俺嫌われてんの?」
ハハハと俺たちは笑いに包まれる。
これは幸先のいいスタートだ。
「まぁ、俺が嫌われてるのはどうでもいいや。
それよりよ、あの美人さん・・・胸Cカップだよな?」
俺達男はさっきの美人女子の胸元を見る。
胸は少し出ており、ブラをしていると仮定するともしかしたらDもあり得るかもしれない。
下世話すぎるが、退屈で満たされている男の子からは重要な話だった。
二人はカノジョに下卑た視線を送る。
二人ともイケメンなのに、ニヤついた頬のせいで台無しだ。
しかしそんな表情は一瞬にして崩れ去る。
たった俺の一つの発言で・・・
「アレ、サラシしてるからもっとデカイでしょ?」
「「・・・。」」
二人の視線は強くなる。信じられなものを見る目だ。
「なぜ・・・そんなことが分かるんだ・・・?」
言っていいのだろうか?・・・ま、いっか。
「少し先が平らだから。」
「「確かに。」」
大きさはそこそこあるが山形ではない。
言うなればなめらかにした横卵型なのだ。
俺が指で指し、形の説明する。
そしたら彼らは・・・
「「・・・ごくっ・・・。」」
男二人のつばを飲み込む音が聞こえる。
その二人の後ろで、加藤さんが見下すような視線を送っていることに彼らは気づかない。
俺にもなんでそんなことわかるんだと目で訴えているが、俺よりも近くの男二人の方に鉄槌を喰らわせることが重要らしい。
拳の作り方で悩んでいた。
「・・・。」
俺が苦笑いしながら、美人さんへと視線へ戻した。
「あ・・・。」
美人さんは俺たちの方へと視線を向けていた。
男二人の下世話な視線を感じたのだろう。
ジーと俺たちの方へと顔を向けていた。
ゴツンっ!ゴツンっ!
後ろの方で何かが殴られる音がした。
「「い・・・・て・・・・っ!」」
二人が加藤さんに本気のげんこつを落とされていた。
「何すん・・・ん?なんだよ?指差して・・・ひっ!?」
彩都くんが加藤さんの指差したほうを向く。
それは睨みを効かせた美人さんがいた。
「ひっ!?」
直樹にもその視線は送られていた。
二人は彼女のその睨みに耐えられず俺の後ろへと回った。
「・・・ふふッ。」
「「・・・ッ!?」」
俺が彼女を見ると、俺にだけ笑みが飛ばされる。
それに後ろの二人は驚く。
「なんで・・・?」
直樹が純粋な疑問をぶつけてくる。
俺は少し考え言ってやった。
「ま、これが俺とお前らの差・・・かな。」
「「うわ、一番ムカつく。」」
「痛っ!?」
理不尽にも二人に引っ張たかれた。
その後、そんな雑談を交わしながら時間を過ごす。
たまに何故か翆さんの方から寒気を感じたが、気にしないほうが吉と直感で理解しガン無視を決め込んだ。
十分経つともう総勢35名のクラスメイトが集まる。
先生の登場で全員が着席する。
クラスが静まり返ると先生は口を開いた。
「あ〜、どうも、担任となった九重だ。
・・・あー、40分後・・・入学式。
紹介終わらしとけ。」
そう言い、椅子に座り目を閉じた。
ここで暮らす全員の心を開示してみましょう。
(寝るんかいっ!)
一致しているのは誰もが気づいていた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「「「「「「・・・・・。」」」」」」
(どうしよう、この空気。)
またもやクラスの意思は一致した。
不定期更新
今更新中の他の小説を更新したいので遅いとは思います。
気軽に待っていてください。
思いどしたら読む程度で構いません。
コメントもどんどんください!(批判コメ・・・大丈夫・・・ですっ!(覚悟))
次回もお楽しみにっ!