告白 裏
この話は本日二話目です
初めての人は前の話から読んでください
それは、その場の勢いで言ってしまった事だった。
『――離れないでください』
『……離れたくないんです。ずっと一緒にいたいんです。
今だけじゃなく、明日も、明後日も、来年も、その先もずっと』
一度口にすると止まらなかった。
だってそれはすっと私が思っていたことで、ずっと言いたかった事だから。
『……駄目ですか?あなたはどうですか?私と一緒にいたくないですか?』
『――あなたは、私のことをどう思っているんですか?』
教えて欲しい。そしてどうか、一緒にいたいと言ってもらいたい。
隣に座って、頭を撫でて、抱きしめてほしいから。
『……つ、つまり……私のこと……好きですか?』
ほとんど告白のような言葉。
直接言ってはいないけれど、それ以外の意味にとるのは難しいだろう。
……もう言い訳は出来ない。
私はついに言ってしまったのだ。
◆
彼の言葉に頷き、手を離してから、彼がこちらを向くまでの時間。
それは私にとって永遠かと思えるほどに長かった。
怖い。
彼がどんな事を言うのか。
勢いであんなことを言ってしまったけど、今更怖くなってきた。
もし断られたら?そんなつもりはなかったとか言われたら?
私はこんなに彼のことが好きなのに。そんなことになったらどうすればいいのか。
それは今日まで散々怖がってきた事で。
だからこそ、こんな状況でも一番最初にやってきて、私を脅してくる。
失敗すればこれまでどおりではいられない。
友達ですら居られなくなるんだと。
「……っ」
彼がこちらを向く。
怖くて、彼がどんな顔をしているのか見ることが出来ない。
「――え?」
――でも、次の瞬間、気がついたら彼に抱きしめられていた。
混乱しながら上を見ると、彼の顔が見える。
いつもの、私が好きな穏やかな顔。優しい顔で私を見ていた。
「……僕も一緒だ。君と一緒にいたい」
心臓が跳ねる。
周囲の音が消えるような感覚。
すぐ傍から、彼の声だけが聞こえてくる。
「……だから、僕の恋人になってくれませんか」
それは私が何よりも欲しかった言葉で。
聞き間違えなんじゃないかと自分の耳を疑いたくなる。
「う、嘘じゃないですよね?本当ですよね!?」
「違うよ……僕は君のことが好きだ」
必死に確認すると、彼がもう一度言ってくれる。
だから、これはきっと間違いじゃない現実なんだと信じられた。
「……っ」
嬉しくて、胸が熱くて仕方ない。
幸せで心臓がどうにかなってしまいそうだ。
「わ、わたしも……」
返事をしようと、口を動かそうとする。
でも唇が震えて、上手く動いてくれない。
「わ、わたしも、あなたのことが好きです! 大好きです!」
それでも必死に動かして、そう言った。
「……ありがとう」
すると、彼の腕が力を強める。
体が彼に押し付けられて、肺から空気が抜けた。
少し苦しいはずなのに、それがどうしようもないくらい嬉しい。
「……ぅう」
目の前が滲んで、ぼろぼろと涙が溢れてきた。
泣き顔を見られてくなくて、彼により強く抱きつく。
「ぐすっ、ひっく、うううううううぅううぅううぅううう」
強く強く、力の限り抱きしめる。
彼も私をさらに強く抱きしめてくれて――
「すき、ぐすっ、すきです、だいすき」
「……うん、僕もだよ」
◆
……これまで、色々なことがあった。
最初はただの隣人で、次に仲のいい隣人になって、いつの間にか大切な人になっていた。
気がつけば好きになっていて、劣等感に苛まれて、そのせいで苦しんで。
でも、今こうして彼の腕の中に居る。
彼と出会ってから三ヶ月。
そんな長いような短いような時間の先。
こうして私と彼は恋人同士になった。
これでこの作品は完結です。
反省の多い作品でしたが、こうして無事に完結させられたのも応援してくれた皆様のおかげです。
この度は本当にありがとうございました。
機会があれば次回作で会えればと思います




