外出計画 裏
これは今日二話目です
多分これから完結まで全て表と裏の二話同日更新になります
やさぐれと同じ感じですね
一日二日と時間は過ぎていくが、姉さんにかけられた呪いは解けない。
むしろ段々悪化してる気さえしてくる。
例えば、今日彼に食後に出したお茶。
なんでもない普通のもので、一緒に食事を取るようになってから、毎日淹れているものだ。
……それなのに、なぜか、ふと思った。
お茶を“どうぞー”なんて言いながら彼の前に置いて、彼は“ありがとう”って言って。
それが、なんだか夫婦みたいだなあ……なんて。
角掃除みたいな特別な事だけじゃなく、何気なくやってきたこれまでの行動が全てそれっぽく見えてくる。
どんどん深みにはまってる気がした。
……本当に、私はどうしたいんだろう。
◆
あの人に、遊びに行こうといわれた。
今日の夕飯後、ついさっきのことだ。
日にちは今週末。予定地は水族館だ。
水族館は机の上に並べられたパンフレットを見て私が決めた。
理由は単純で、行ったことが無かったから。
私の故郷は海に面していない内陸部の県で、そういう機会がなかった。
だから、あの人が候補地を出してきた時に一番先に目がついたし、決まった後、こうして自分の部屋に帰ってくるまでは楽しみだなあ、どんな場所なんだろう、なんてのんきに思っていた。
……しかし。しかしだ。
今こうして部屋の中で布団に包まっていると、別のことが気になってくる。
……これってデートなんだろうか?
「……どうなんだろう……」
大人の男女が二人で外出する。
こう言うとなんだかデートっぽいと思う。少なくとも私の中では。
しかも行き先は水族館だ。
デートの定番っぽいイメージがあるところ。実にそれっぽい。
「……うーん」
しかし一方で、いやいや、例の呪いの言葉のせいでは?なんて考える私もいる。
お茶みたいに、なんでもないことを過剰反応しているだけなのでは?と思ってしまうのだ。
さっきのやつだって、一つものの見方を変えれば全く別のものになるだろう。
私を女性としてみるのではなく、外見以外を男としてみよう。
すると今回のこれは、ただ休日に男友達と外出するだけになるのだ。
決してデートではない。
「わからない……」
悩めば悩むほどわからなくなってくる。
自分の常識が正しいのか間違っているのか。
「あああああああああああああ」
あまりの訳のわからなさにうめき声が出てくる。
……デートっぽい……よね?
両方とも恋人いないし……。
………………あれ。
ふと、疑問に思った。
あの人、恋人いないよね?
「……え?いない……でしょ?
見たことないし……」
彼とそういう話をしたことは無いけど、少なくともこの二ヶ月では一度も見たことが無い。
電話しているところもだ。毎日あちらの部屋に行っているのに。
部屋の中にも女性の気配は全く無い。
食器の類は一組しかなかったし、来客があるのを想定しているようには見えなかった。
「……調理器具だって無かったし」
鍋の一つもなかったのだ。
……まあ、今はあるけど。私が運び込んだから。
「……うん、ないない」
状況証拠的にありえないと思う。
それに彼女がいるのに私を部屋に上げるはず無いよね。
「……あっはははは」
なぜだろう、知らないうちに背中に汗をかいていた。
大丈夫大丈夫。
「うん……」
……でも。世の中には遠距離恋愛というものもあるわけで。
私だって、一目で元男だとわかるし?彼が私のことを男だと思っていたとしたら……
「……いや、やめよう。邪推は良くないよね、うん」
頭を振って思考を無理やり断ち切る。
それよりも今度の外出の事だ。
「どうしようかなー。あははは……は……」
夜は段々と更けていった。




