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外出計画


 最近、時間が流れるのが遅くなった気がする。

 つい最近までは気がついたら季節が変わっていた……くらいの感覚だったのに、今はほんの二ヶ月前の事が遠い昔のようだ。


 それはなぜなのかと考えたけれど……まあやっぱり彼女が原因だと思う。

 毎日毎日代わり映えのない日々だったはずなのに、彼女と会ってからはそれが嘘のようだ。


 この生活がいつまで続くのかはわからないけれど、少しでも長く続くように努力していきたい。そう思う。


 

 ◆



 彼女を外出に誘う事にした。

 柄ではないと思うけれど、他でもない彼女のためだ。出来る限りのことはしたい。


「その、どこかに遊びにでも行かない?」

「……遊びに、ですか?」


 ここ数日、彼女の様子がさらにおかしくなってきた。

 ゴールデンウィークからそろそろ二週間経つが、よくなる兆しは全くない。

 

 食事中に僕をぼーと見ていたかと思うと、突然顔を赤くして頭を振ったり、夜中に僕の部屋まで聞こえるようなうめき声を上げていたりしていて、不安になってくる。


 それで、どうにかできないかとネットを調べていたら、心労が溜まっていたり疲れている人が同じような症状になることがわかったのだ。


「最近ずっと部屋にこもっていたからね。ちょっとどこかに行きたい気分なんだ」


 そのサイトには、疲れているときはどこかに出かけるのも良い、なんて書かれていた。

 だから、今回の外出で気分転換が出来ればいいなと考えている。ついでに事情を聞き出せれば、なお良しだ。


「そう、なんですか?」


 彼女が首をかしげて不思議そうにしているのは、僕のイメージと外に出たがっている現状が合わないからだろうか?

 

 まあ、自覚はある。

 そもそも僕は生粋のインドア派だ。一年中部屋にいても何一つ問題ないくらいの。


 でも、今回の彼女の様子は放っておいたらもっとおかしくなりそうなので仕方がない。

 嘘も方便というやつだろう。


「どうだろう。付き合ってくれないかな?」

「……それは、まあ構いませんが」


 何とか頷いてもらえた。

 ここで断られたらどうしようもなかったので安心する。


「で、この辺りとかどうかな」


 事前に調べておいた施設のパンフレットを並べる。


 遊園地、水族館、動物園。

 全部日帰りでいける近場だ。色々と経験が足りていない僕でも、初めての外出で泊まりは良くないこと位わかる。


「へえ……」


 彼女がパンフレットを手にとって読み始めた。


 ……しかし、選択肢が少し子供っぽかっただろうか。


 僕では遊ぶ場所とは言ってもよくわからなかった。

 なにせ、学校行事以外で遊びに言った経験が全くないのだ。


 ……これ以外で遊ぶところというと……

 映画館とかだろうか?それはそれでいいかもしれない。


「水族館……」


 そんなことを考えていると、彼女がポツリと呟いた。

 見ると、手にはイルカの写真が表紙のパンフレットが握られている。


 ……そこかあ。


 今すんでいるところから、車で大体一時間くらいのところにあるやつだ。

 数年前に出来た大きな施設で、イルカやペンギンなど人気の動物も多くいるらしい。


 水族館以外にも大規模なショッピングモールやハイキングが出来る自然公園が近場にあるので、一日楽しめると書かれていた。


「ここがいいかな?」

「……はい。私水族館って行ったことないんです」


 それはいい。

 きっと良い気分転換になるだろう。


「じゃあ、ここに行こう」


 僕も水族館は初めてだ。

 目的は彼女のためとはいえ、少し楽しみだった。



 ◆



 その晩。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「……」


 隣の部屋からまた声が聞こえた。

 ……次の外出で少しでも良くなってくれるといいんだけど。




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