まけん日誌その1
俺の名は御坂勇磨。今日から、ここ榮藍学園に通う高校1年生。そう、今日は俺の高校生デビューの日だ。
―が、俺は今1人校舎裏にひっそりとたたずむベンチに座っていた。景色がよく、木の影がちょうど直射日光を遮る、暖かく心地よい空間。ここで何をしているかというと、マジックの練習だ。俺は、プロのマジシャンを目指している。幼稚園の遠足でマジシャンの舞台を見てからずっとだ。けれど、親には「売れるわけないだろう、現実を見ろ。お前の兄さんたちは、将来のために今も勉強しているぞ」と反対され、二人いる兄からは「勇磨、いくら兄さんたちが頭よすぎるからって、そんな頭いらなさそうな職業なんて」とバカにされ……マジシャンなめんじゃねぇ!!と言ってやりたいものの、俺は家族で1番年下=ヒエラルキー最下層。表向きは諦めて勉強して、親の指示通りの高校へ入学した。ただマジシャンへの憧れは消えないまま、裏ではこつこつとマジックの練習をしていた。家族に見つかると厄介だし、友人や知り合いに見られても家族に知られる危険性が高まるから、なかなか練習場所の確保が難しかったのだが……ここは居心地いいわりに人気もない!最高の場所だ!!
と、5分前まで思ってました。
「ひぇぇーー!!なに、なになに今の?!10円玉が消えて!出てきた!!」
突然、日影を作っていた木から声がした。
「な、なんだ?!」
驚いて振り向いてみると、木の上に女の子が座っていた。制服のネクタイの色からして、上級生だ。
「あ、もしかしてもしかしてわかっちゃったかも!」
も、もしや?!マジックのネタが一瞬でばれたのか?!やはり、まだまだ練習不足なのか―
「君!魔法使いなんでしょ!!」
「………はぁ?」
これが俺と先輩―吉佐日菜との出会いだった。