5大家長と姫様の目的
この後姫様が話し合いと言う名の説得に向かわれる訳ですが、その前に5大家長について少し話しておきましょう。
ここ魔大陸では知性を有した人間以外の生き物が無数に存在しています。それこそ種族だけで言ってしまえば数百とかに及ぶのでかくいう私もすべての種族を把握しているとは言えませんし、今この瞬間でさえ、新しい種族が誕生しているやも知れません。
そんな膨大な種族が好き勝手にやってしまうと収集がつかなくなってしまうわけです。今でこそこのような形に落ち着いていますが、数百年前は種族の淘汰が止めどなく起こる危険な大陸だったそうです。
その雑多な種族を纏めるために出来たのが5大家長と呼ばれるもの達です。
龍帝
悪魔侯爵
不死を統べるもの
古代精霊
獣王
この5つの称号を戴く家を5大家長とし、他の種族はそのどれかの下に付き、揉め事の際には家長の判断を仰ぐようにしたのがこの制度の始まりと言われています。
姫様の家名はヴァンプロード。これは現在の不死を統べるものの称号を戴く家で、姫様か兄君のどちらかが家を継ぎ下の家を纏めて行くことになります。
また、どの家の所属か分かるように称号の一部を家名に入れることが一般的とされています。
今回来賓でいらしているロードゴブリン様のロードや、サイクロプス王様の王にあたる部分がこれになりますね。
家長は実力重視の交代式であり、イモータルロードを名乗ったことのある他の種族ですと、不死の王様がいらっしゃいますね。彼の家の長様は随分なご高齢で、今はイモータルロードの名を取り戻すつもりは無いようです。
5大家長についてはこんなところでしょうか。
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先触れは出しておいたのでノックと共に返事は待たずに入る姫様。
「今日は私のためにわざわざ来てくれてありがとう」
お客様への言い方としては正直申し上げたいレベルのかなり砕けた喋り方ですが、本日いらっしゃっているお二方はどちらも小さい頃からのご友人でもありますし、本日は大目に見る事に致しましょう。
先に返事をされたのはゴブリン代表の方、本名ルイ・ロードゴブリン様でした。
「おうさ、そりゃ呼ばれれば来るさ、こちとら幼なじみと言ってもおかしくない付き合いだしな」
ルイ様はそう言ってカラカラと笑います。後から返事をしたのはサイクロプス代表、テオ・サイクロプスキング様でした。
「ぼ、僕も友人として呼ばれたので有れば喜んで来たんだけどね…今日は友人としてではなく、家の代表としてよんだんだょ…ね?」
テオ様は昔から臆病な性格で喋り方にもその性格が表れていらっしゃいますね。これでも一族の代表を務めるくらいには力のある方なのですが。
「そうなのよ!ルイとテオで頼みたいことは少しづつ違うんだけど、私の最終目標の為にはどちらも欠かせないわ!」
「ふぅん?とりあえずは最終目標ってのを聞かせて貰おうじゃないか。まさか、頼み事をするってのに話せないわけは無いよなぁ?」
「僕も目標は聞いておきたいかな…べ、別に内容云々って訳じゃないよ!?」
お二方とも姫様の目標が気になっているようです。とは言え内容を知っている私からすると、結構無茶なことを言っているとは思うんですけれどね…
「えぇ、目標を共有しなければ、今回のお願い事なんて唐突過ぎて絶対に断られるもの。当然共有してもらうわよ」
そこで姫様は一回言葉を区切りました。
「私の目標はね、兄様の代わりに代表戦争に出ることよ!」
姫様のおっしゃる言葉を額面通りに取るのであれば、姫様は次期当主に成るであろう兄君からその座を奪い取ろうと画策しているわけです。兄妹仲はとても良いのでこの台詞は、ある程度付き合いのある人でしたら不思議に思うことでしょう。
実際お二方も疑問に思ったようで
「ユリウス兄と争う気か?そんなの良くて相討ちだろ?それにそんな事で有れば俺は協力できん」
「暴力的なのはだ、ダメだと思うな…お兄さんと何かあったの?」
「逆よ!兄様は代表戦争に心を痛めておられるわ!元々争いの嫌いな兄様ですもの、妹として代表戦争なんかに参加なんてさせたくないの!とは言え5大家長の一角を担う家の当主が参加しないわけには行かない。それなら私が当主になるしかないのよ!」
そこまで一気に言うと姫様は一呼吸置いて、落ち着いた声でお願いを口にしました。
「だから二人に協力して欲しいのは当主の決定会議の事よ。私が当主になるために、ルイにはゴブリン代表として私を推すことを、テオにはサイクロプス代表の上に立つ獣王に話を通して欲しいのよ」
そう言って姫様はお二方に頭を下げたのでした。
あぁ、兄君の為に頑張る可愛い姫様。私は全力で応援致しますわ!




