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(テオ視点)ルージェちゃんと修行、1日目

 僕の目の前でルージェちゃんとイーちゃんが戦っている。話は昨日のライネン様のお家での事が切っ掛けだ。僕がルージェちゃんに頼まれてから今までお願いしていたのに、ずっと話を聞いてくれなかったライネン様が、レイラさんの連絡で何があったのかは知らなかったけれど、急にルージェちゃんに会ってくれると言ったときは一体何が起きたのかと思ったよ。

 まぁ昨日の告白を見る限りだとレイラさんに会いたかっただけなような気がするけれど。


 話が逸れちゃった。それで昨日ライネン様の家に着いたルージェちゃんは強さが足りないと言われて修行をすることになったんだ。やるきのルージェちゃんにレイラさんが名乗りを上げたけど、折角獣王領に居るのだからとイーちゃんがライネン様から指名されたんだ。


 そう言えばその時にイーちゃんがもしもの時は止める役目を僕に頼んできたんだけど、僕がイーちゃんと呼んだらレイラさんとルージェちゃんが僕達二人をビックリした顔で見ていた。ルージェちゃんやルイ君とは幼なじみだけど家が遠かったからね。獣王領での幼なじみがイーちゃんだったんだ。


 今ルージェちゃんとイーちゃんはお互いに武器は無しで戦っている。初日の今日はルージェちゃんの身体能力を測るために魔法も武器も無しで戦っているみたい。

 ルージェちゃんもヴァンパイアだから身体能力だって低い訳じゃないけど、運動能力に付いてはやっぱり獣人のイーちゃんの方が上みたい。


 一定の衝撃が加わると発光する苔を使ったプロテクターを二人は着けていて、僕が光った数を数えてるんだ。修行が始まって一時間、二人のプロテクターの点灯回数はルージェちゃん21のイーちゃんが2だ。

 ルージェちゃんが1回当てる間にイーちゃんは10回当てている。今の二人にはそれだけの力量差があるみたいだ。


「はぁ、はぁ、全然当たらない…!」


 息をついて悔しげにルージェちゃんの口が歪む。


「筋は悪くないと思うけどな。あまり戦ったこと無いだろ?フェイントも単調だし、簡単なフェイントにも引っ掛かってる」


 ルージェちゃんが戦ってるところかぁ…見たこと無いかも。いつもレイラさんが片付けちゃってるからなぁ…


「ふ、二人とも少し休憩にしたら?ルージェちゃんも疲れてるみたいだし…」


「ま、まだまだ…やれるわよ…!」


「そうだな、これ以上は多分無駄なだけだし。今の内に省みた方がいいんじゃないか?」


 顔を上げて続けるつもりのルージェちゃんと体を休めるべきと言うイーちゃん。僕としても休憩してほしいから多数決で今は休憩の時間になった。




 ルージェちゃんは今一人で地面に何かを書きながら反省点を洗い出してるみたい。多分僕達が口出しはしない方がいいと思って僕はイーちゃんに話しかけた。


「お疲れ様。それにしてもイーちゃん前よりずっと強くなったね?」


「あ、テオ!?そ、そりぇはアタシは獣王の娘だからにゃ!…強くなったらテオに告白…ぅぁぁ…!」


 イーちゃんも考え事をしていたみたいで僕が声を掛けたせいでものすごく驚かせちゃったみたい。言葉もかみかみだし、後半は何を言ってるか聞こえなかったし、途中で変なうめき声になっちゃった。


「ライネン様はスゴいよね。僕もあれくらい強くなりたいなぁ…」


「テオは今のままでいいんだ!強くなられたらアタシが困る!それに昔の約束は今も有効だからな!」


 昔の約束…?イーちゃんが僕より強くなったら1個だけ言うことを聞くってやつかな?普段からイーちゃんは無茶を言うけど僕断ったこと無いのに…そんなに凄いこと言うつもりなのかな…


「そ、そうだよね。僕がライネン様みたいになんて高望みだもんね…」


「そ、そんな事はない!テオは親父よりよっぽど…か、格好いいし…!」


 僕の手を掴んで強く言うイーちゃん。その顔は真っ赤だし、僕の手を掴むイーちゃんの手は熱かった。そういってくれると嬉しいけど急に手を握られたから顔が熱くなっちゃった。


「う、うん。慰めでも嬉しいよ」


 あ、まずいかも。イーちゃんの目が細くなった。怒らせちゃったみたいだ。


「慰めなんかじゃねー!テオは本当に…!もう姫さんも考えが纏まったみたいだしアタシも戻るからな!」


 僕の腰を蹴り飛ばしてイーちゃんはルージェちゃんの所に戻っていった。流石に飛ぶほどじゃないけどそれでもかなり痛い。あぁ、僕も早く戻って修行の続きを見なきゃ…

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