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イールフさんとライネン様

 獣人の少女、イールフは私が名乗りを終えたあと直ぐにこちらに突撃してきました。

 彼女の扱う斧槍は槍の先端に斧が付いている形の武具ですから、中距離から近付けない戦い方が基本のはず、しかし彼女は斧の付いている部分よりも近くにやって来て、棒の部分で横に薙いできました。私がそれを左腕で受けると、彼女は後ろに飛び下がり飛び出ている斧の部分で私の背中を狙ってきました。


 飛ぶのは愚策、しゃがむのも隙を突かれる可能性が高いでしょう。なので私はイールフの方へ走りました。

 普通の相手であればここで殴り飛ばして終わりだったのでしょう。しかしイールフは私が思ったよりも手練れだったようです。私が前に出たのを確認してすぐ柄部分で迎撃に出てきました。とは言え今まで引いていた状況からまた前へ出すのですからスムーズにはいきません。出始めの速度が出る前に柄の部分を蹴り飛ばすとイールフの手から斧槍が飛んでいきました。

 体制を崩した彼女の首に手を置きます。


「これで終わりですね。思ったよりも強かったですよ」


「くっそ!あんたなんなんだよ!強すぎだろ!」


 イールフはそういって両手を上げて降伏しました。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あんた強いなぁ、ほとんど何も出来なかったよ」


 御者台の隣に座ったイールフさんが話しかけてきます。勝負に負けた彼女は最初の宣言通り私達に付いてきて露払いをしてくださるとの事です。もう敵対しているわけではありませんのでさん付けでお呼びしたら、負けたのにさん付けは嫌だと言われました、が、けじめですのでこのままイールフさんとお呼びするつもりです。


「貴方も十分強いと思いますけれど、何か強くなりたい理由でもおありですか?」


 私としてはふと思った事を聞いただけだったのですが、イールフさんは顔を赤くして


「そ、それは!アタシは獣人なんだから強さを求めても当たり前だろ!?」


 と、何かを誤魔化すかのように言ってくるので


「それはそうなのですが、イールフさんの場合それ以外にも理由があるような気がしまして」


「うぅ…恥ずかしいから他の人には言わないでくれよ?実は勝ちたい相手がいて…」


 どういうことでしょう?勝ちたいなんてそれこそ獣人の性みたいなものですが。


「そ、ソイツに勝ったら結婚を申込むつもりなんだ…」


 なるほど…しかしこれだけの強さを持っていて勝てない相手…


「ライネン様に結婚を申込むおつもりですか?」


 私がそう言うとイールフさんは呆れたような顔をされました。よっぽど検討外れなところをいってしまったでしょうか?


「はぁ!?なんで親父に結婚を申込むんだよ?そりゃあの人の強さには憧れるけどよ…」


 実の娘さんでしたか…キングアニマの家は血が繋がってなくても同じ家名なのでわかりづらいですね。


「これは失礼しました。ライネン様の実子の方でしたか。そうなるとお相手は一体どなたでしょうか?」


「それは…あ!親父の家が見えてきたぜ!」


 明らかに誤魔化しが入っていましたがライネン様の居城が見えて…おや?一軒家しかありませんね。


「私には家しか見えないのですが…」


「あれが親父の住んでるところだよ」


 私の記憶違いでなければ普通に城に住んでいたのですが…


「あの家にライネン様が住んでいらっしゃるんですか…?」


「昔は城があったんだけどな。親父が広すぎて落ち着かないってぶっ壊しちまって。建て直したのがあの家」


 やはりライネン様はバカなのでしょう…普通城を壊すなんてやりませんよ…横に建てれば良かったものを。


 さて、テオ様もライネン様の所へいらっしゃるとの事でしたし、会いに行きましょうか。

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