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(ルージェ)悔恨

話が重くなってしまった…

私は私が嫌いだ。私はあまりにも無力だから。


母様は私を産んだときに亡くなったそうだ。元々体が弱かったからね。と父様は言ってくれていたけれどその顔が悲しそうだったのは今でも覚えてる。


そんな父様も前回の代表戦争で居なくなってしまった。


「帰りに二人の好きな精霊の森の蜜を持って帰ってくるからね」


約束は果たされなくて、ラストのおじいちゃんからの凶報だった。


「ラルクを助けられんかったのはワシの責任じゃ。責めるならワシを責めなさい。人を恨んではいかんよ…」


それと、ラルクの最期の言葉じゃ。「すまない」そう言っておったよ。それまで耐えていた涙が堰を切ったように溢れだして止めることが出来なかった。嗚咽から泣き声に変わりラストのおじいちゃんの胸を叩いて叫んだ。


「なんで父様が死んじゃったのよ!なんで…約束したのに…」


そのまま眠ってしまい起きたときにはおじいちゃんは自分の城に帰っていた。ベットの横にはレイラが立っていて、私が起きたことに気づくと、


「お目覚めですか?今は城内もバタバタして居ますから、もう少し眠られた方がよろしいかと…」


私を気遣って優しく言ってくれるレイラの言葉に頷いて、布団を頭まで被って寝ようとしたけれど、自然に目が覚めるまで寝てしまったことで目が冴えてしまっている。父様…そうして考え事に沈んでしまえば考えるのは父様の事。

そこで思い至った一つの結論。結果は変わらなかったかもしれない。気付かなければ今以上の苦しみにはならなかったかもしれない。でも、私は思ってしまった。私が居なければレイラは父様の部下として守ることができたんじゃないの?と。


父様が死んだのは私のせい…?その日から眠るのが辛くなった。夢の中に出てくる輪郭のぼやけた影達が私を詰る。


「お前が生まれなければ母様は死ななかったんじゃないのか?」


「お前が居なければ父様は死ななかったんじゃないのか?」


「お前が居るからレイラは自由に動けないんじゃないのか?」


私が居るから…でも、そんな私を救ってくれたのは私を恨んでいると思い込んでいたレイラだった。


私がうなされているのを知ってから、レイラは朝目覚めるといつも手を繋いでくれていた。寝るときは仕事が残っているから1人だけど朝は必ず。


そんな日が半年程続いたけれど、兄様は人間との講和に向けて歩き始めたみたい。私だったら父様を殺した人間との和睦なんて続けられなかっただろうから。兄様は強い人だと思った。

なのに私は変わらなかった。昼も夜も何をするでもなく過ごして、眠ってしまえばうなされるのになにもしない。

そんな私の転換になったのはある来客の言葉だった。兄様を訪ねてきたその人は兄様との会話のなかで言った言葉。


「ユリウス様も大変ですねぇ。両親不在で妹様もあの状況でしょう?しかも今進めている講和計画も5大家長の身になれば難しくなるでしょう?」


兄様は少し困り顔を浮かべていた。


「そうですね…父上が健在の内に終わらせるつもりでしたから。それでも諦めるつもりはありませんけどね」


5大家長は講和が難しい?兄様の目標が遠ざかる?話自体は難しいものが多く理解が難しいかったけれど、兄様の和睦の夢が遠退いている事だけはわかった。


その日から私は有るだけの本を読み始めた。父様の書斎の本を、地下に死蔵されていた書庫の本を、父様の部屋の庶務机を私の部屋に移してもらって夜力尽きるまで。

そして、私は兄様の代わりに当主になることを決めた。今まで引きこもっていた娘がいきなり当主になるなんて言い出すのだ。馬鹿にされると思って周りに言い出すことも出来なかった。


勉強を続けていたらある日レイラが話し掛けてきた。


「姫様、最近は5大家長や当主の本をよくお読みになっていらっしゃいますね?」


やっぱり私の世話をしているレイラには隠し事は出来ないみたい。笑われるのも覚悟で目標を語った私をレイラは抱きしめてくれた。


「ラルク様を亡くされた姫様が前を向いて…私で良ければいくらでもお手伝い致します!」


受け入れられた私はレイラの胸のなかで泣いて、泣き疲れて勉強の寝落ち以外で久々に眠り落ちた。

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