自問自答と反芻
誰の目にも触れることはないでしょう、その価値も無いです。
「なんで作家は私小説なんて書くんだろう、彼らは自分の身の回りに起こった事を読者に知ってもらいたいのかな。
なんであんなにどうでもいい事を書くんだろう。」
「どうでもいい事だって書いてもいいだろ」
「でもさ、みんな金を払ってその小説を買うわけだぜ?ツイッターじゃあるまいし、読もうと思って買う人がいるのにどうでもいい事書くなんて」
「よく読めばどうでもいい事じゃないかも」
「そりゃなんでも無理矢理解釈する事は出来るよ、でも無理矢理解釈しても、出て来た結論が本当に作者が伝えたかった事じゃない気がするんだよ。」
「確かにそうだ。本読んだ後に考えてるうちに本に書いてあったことか自分の考えかよく分からなくなる事はある。」
「なんで、あえて私小説を…」
「作家はいつも小説を書いているわけだ。」
「うん。」
「すると、要るものは書いて要らないものは書かないんだ」
「うん、要らないものも書いてたら読み手が困る。」
「でも作家が、要らないものも書きたかったとするとどうなる。」
「かけないなら、辛い。」
「だから、私小説でそれを晴らそうとするんじゃないかな。」
「……の割には、意味深な文章だったり…するよね。」
「じゃあだな…日常に潜んでいるからこそ、なにか…うーん。」
「な?分からんだろ?」
「ちょっと調べてみようかな、納得できるかもしれないぞ?」
「僕は自分の頭で結論を出した後じゃないとそんなもの調べないからな」
納得いかない顔で、鏡をボーッと見ていた男は、機械的に行なっていた歯磨きをやめ、口をゆすぎ、ベッドに入った。