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訪問者と賢者

朝、鳥の声で目が覚めた。

太陽の光が暖かく、鳥の囁きが聞こえる。それだけで清々しい気分になってくる。

ベッドを降りて、フィルが用意してくれた服に着替える。眼鏡は似合わないし着けないことにした。

パンの焼けるいい匂いに誘われ、リビングに降りてみた。

「あ、おはよう香月君。もうすぐできるからね!」

「おはようございます。明日から手伝いますね」

「あはは、気にしなくていいのにー、それじゃ、明日からよろしくね?」

フィルがいなくなってからどう使うかわからずに戸惑うことになるなんて嫌なんだって思ったけど、それは口にしないでおこう。

フィルがパンを机におき、俺が鍋にあったスープ、たぶんコーンスープを木の器にいれる。サラダとたぶん干し肉?らしきものが机に既に置いてあったのでこれで完成になる。

「あ、今さらだけど眼鏡かけてないんだね!」

「髪色と全然合わなくって逆に目立つと思ったので」

と答えるとそれもそうか!と笑われた。

「それじゃ、頂こうか。」

「いただきます」

うん、うまい。

美味しいご飯を味わっていると、何処からともなく声が聞こえてきた。


『賢者、俺のもとに下るのだ!』


...?キョロキョロと辺りを見回すが、その声の持ち主はどこにもいない。


「あはは、また来たのか。ご飯中だし無視しよう」

「そっちもだけど、この声どうなってるの?」

尋ねるものの、フィルはサラダをむしゃりと食べつつ簡単に答えた

「ん?えーっと、帝国側がどこかの国にまた戦争を仕掛けて、僕を見方につけようって魂胆だから、基本無視」

そうコタエタ後にとびきりの笑顔で、だって僕らの使命って見守ることだし☆っと軽く言った。本当に軽いね。

「って、俺が聞きたいのは声の仕組み!」

「あぁ、そういうこと?初代がかけた魔法だそうだよ。姿はあの水晶玉に映るんだ。」

指差されたところの日陰にひっそりとおかれた水晶玉があった。

うっすらと光が出ている気がする。たぶん来客?が来てるからだろう。


『...やはり答えぬか。まぁよい、いずれ我ら帝国のもとに下るのだからな』


その言葉にはぁ、とフィルがため息をつくと、俺の方を向いてしぃーっと口元に指を当てた。黙っていろってことだよね?

すると、軽く拳を握り、それを口許に当ててマイクかのように話始めた。


『やぁ、朝から熱烈な勧誘どうも。でも帝国側にも王国側にもどこにも着く気はないんだってば。子供の頃はかわいげもあったのにー!』


『なっ!?い、いつの話だ!!そ、それに俺はもう大人だ!!』


どうやらフィルの声は届いているようだ。魔法か?と考えつつ、姿が写っていた水晶を覗き込む。黒髪の真っ赤な目をした30代位の男と従者?と思われる人が何人も後ろに控えていた。


『んー?僕からしたらひよっこだもの。ふふー、相変わらず照れると耳真っ赤になるの変わらないね~。かっわいい♪』


水晶を見ていないので、本当は耳が赤いのかもわかっていないはずのフィルだが、実際に彼は耳が真っ赤になり、指摘された今は耳を押さえている。


『あ、赤くなどなっておらん!』


『またまたぁ~。あと、いつからそんな口が叩けるようになったのかな』


最後の言葉を聞いてか、ビクゥと肩が跳ねた。確かに声は怖かった。


『うっ、別に...俺の勝手だろ』


『ふぅん、そう。じゃ、焔ちゃん向かわせてもいいみたい』


焔ちゃんがなにかは知らないが、あっちの顔色がみるみるうちに悪くなっていく。体も震えているように見えるが、気のせいではないようだ。相当怖い物なのか。


『あーぁ、もっと厳しく育てたら良かったかなぁ...さぁて、焔ちゃん』


『待って!お、俺が悪かったから!下手な口聞いてごめんなさい!だからそれだけは勘弁してくれ!ドラゴンになんて敵うわけないだろ!!』


なんと、焔ちゃんとはドラゴンだったのか。ファンタジーのなかでしか知らないから驚いた。炎系のドラゴンなんだろうなぁ、名前的に。


『昔は追いかけられても泣いて喜んでたのに』


向こうの彼は首をブンブン降って否定している。フィルにドS疑惑が...。まぁ、普通小型の、手のりくらいの子じゃないと嬉しくないよね...。


『用がそれだけなら返事はしたからね?あと、賢者も世代交代だからね、そろそろ後輩に譲るから頑張って見つけるのも面白いかもね』


クスクス笑いつつそういって手を離した。多分これで答えるのをやめることにしたんだろう。それと後輩ってなに?譲るって!?望んでもらう役目みたいじゃん!!


『はぁ!?ちょ、おい!フィル!!?お前...』


水晶玉ではなにか言っているのに、音声がぷっつり途切れてしまった。多分フィルが故意的に切ったんだと思う。


「よかったの?」

「うん。僕はあと少しで消えちゃうからね。そうだなぁ、もし彼が生きてる間に君と出会えたらのために手紙でもかいておこうか。その場合って燃えるのかな?ふふ、でもネタばらしはダメだよ?気づかれたときだけだよ?」

心底楽しげにウインクしながらそう言った。

「それは構わないけど、彼との関係って?」

首をかしげて聞けば秘密と返された。

「知りたかったらあの子に聞いてみて。素直じゃないから教えてくれるとは思えないけどね。さぁ、残りを食べてしまおう」


少しの疑問は残るものの、フィルが楽しそうに笑っているのでそれ以上聞くことはできなかった。でも、彼と再会できたとき聞ける話がとても楽しみだった。

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