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好奇心

 おはようございます。初めまして。


 前回に続き、主人公とマーテルとの会話がメインで進んでいきます。

 知らず知らずに、冒険へと足を踏み出していく過程的なものを、前半は描いたつもりです。

アルファポリス重複投稿 Eエブリスタと重複投稿

 よろしくお願いします。

 「お~!すごいのぅ!おもしろいのぅ!」


 人……人……人……右を向いても左を向いても人の波が途切れることなく行き交う。

 片田舎の小さな国と言っても、さすがは王のひざ元。城下町の喧騒に俺は呆気にとられるばかりだ。


 「マーテル!ちょっと落ち着けって」


 空に花火が打ちあがり、楽隊が通りを行進していく。

 そのたびに耳元でマーテルは驚き、喜び……はしゃぎまわる。


 「そんなことを言われても……のぅ……ヒロはおもしろくはないのか?」


 いつの間にか呼び方も、彦麻呂からヒロに変わっている。

 まぁ……その方が俺的にはありがたいのだが。

 俺の腹の虫を静めるために街に入って1時間は経過しただろうか。

 なかなか先に進めないのは雑踏のせいもあるが、肩に腰掛けるマーテルにいちいち耳を引っ張られるせいでもあった。


 「おもしろいもなにも、小さい時から見慣れてるしな……マーテルは花火や楽隊を見るのは初めてなのか?」


 言いながらも俺自身、こんなに人で溢れかえった町を見るのは初めてだったが。


 「お主……わしを馬鹿にしておるな?花火も楽隊もよ~く知っておる……わしが驚いとるのは、花火があがるたびに空の一部が暗くなることじゃ!」

 「あぁ……それは、暗い方が花火がきれいに見えるから暗くしてるんじゃないの」


 普通に返したはずの俺の答えに、マーテルは呆れたような表情でため息をもらした。


 「はぁ~……まぁ、赤子の頃からこれが普通では無理からぬ事かの……それにしても、マナをこのような形で応用しようとは……いやはや……まったく人間という生き物は……」


 マーテルがぶつくさとつぶやいてるのを無視して、俺は雑踏の中を進んでいく。

 道の両脇にはびっしりと露店が建ち並び、活気のある声があちらこちらから聞こえてくる。

 正直言ってこの混み具合は異常だ。

 おそらくは勇者である俺の出立を祝う祭りなんだろうけど……町の雰囲気から察するに、理由を付けて騒ぎたいだけなんじゃないか?と思ってしまう。

 やがて、開けた場所に出る事が出来た。

 中央には大きな噴水と鎧姿の戦士の像があり、噴水は色や形を変えながら水を勢いよく噴き上がっている。


 「ふぉお~!ヒロ!ヒロ!あれを見てみぃ!」

 「あぁ……うん、噴水だね」

 「『あぁ……うん』ではない!ヒロ!あの凄さが分からんのか!」


 マーテルは鼻息荒くまくしたててくる。


 「凄さって言われても……まぁ……きれいだとは思うけどさ」


 マーテルは俺の肩の上で、もどかしそうな表情で頭をがしがしさせると、心を落ち着けるかのように深呼吸をした。


 「いいか……わしが聞きたいのはじゃ『きれい』とかではなく、もっと……こう……そう、技術的な事を聞きたいのじゃ」

 「技術?」

 「そうじゃ……技術じゃ!さっきの夜空も噴水もマナの力を応用させたものだという事は分かるのじゃが……わしが知りたいのは、いかな方法でマナを応用させておるのか?という事なのじゃ」


 マナ?魔力の事を言ってるのか?一部意味の分からん単語は出てきたが、なんとなく知りたがっている事は分かった。


 「要するに……空の一部が夜空に変わったり、噴水の水がいろいろ変わったりする仕組みが知りたいんだな?」

 「お主知っておるのか!?知っておるなら、わしに分かるように教えてくれんか」


 説明……俺が?

 出来るわけがない。そもそも、学校で習った事以上の知識を俺だって持ち合わせてなどいない。

 俺はどう断ろうかと考えながらマーテルの方へと視線を向けた。

 すぐ目と鼻の先――まぁ……肩に乗ってるのだから必然的にそうなるんだが、ひとみをキラキラさせてこちらを見ているマーテルと目が合ってしまった。


 「あっ……うん、まぁ……あんまり詳しい事はわかんないけど、学校で習った範囲でよければ……」


 くそ……あんな顔を見てしまったら断れないじゃないか。


 「えっと……空を夜空にというか、僕達の身のまわりにある道具。これらには回路と呼ばれている物が組み込まれてて……」


 「回路?回路とはなんじゃ?」


 マーテルは興味津々といった様子で身を乗り出してくる。


 「マーテル……ちょっと……」

 「?」


 甘い香りが俺の鼻先をくすぐる。

 マーテルの整った栗色の髪が、陽の光を受けてキラキラと輝く。深い緑の衣服はゆったりというよりは身体に張り付く感じのもので、俺は目のやり場に困ってしまった。


 「マーテル……ちょっ……近いって!」

 「あぁ……すまんすまん。つい興奮してしもうた」


 そう言うと、マーテルは先程と同じ体勢に戻っていく。

 あっけらかんとしたマーテルの態度に対して、俺の心臓はまだドキドキが続いていた。


 「で……回路とはなんじゃ?」


 俺の胸中などお構いなしに、何事もなかったかのようにマーテルは話を再開し始めた。


 「あぁ……うん、物体を魔力で都合良く動かすためのもの……らしい……」


 俺は授業内容を思い出しながら、まだ治まらない動悸どうきをしずめるため、大きく息を吐き出した。

 最後まで読んで頂きありがとうございます。

 まだ、当分の間はこういうやりとりをしながら、ストーリーが進んでいくという感じになります。

 次回更新12/07/5時(更新予約済み)

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