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出会い

 初めまして、おはようございます。引き続きの方ありがとうございます。

 

 サブタイトルにあるように、この話からマーテルが登場します。

 ここから、しばらく説明回を主人公とマーテルの会話形式で進行していく事になります。

 話は変わりますが、投稿文はストーリーを追いかけやすいように必要最低限の文のみで構成させてます。

 では、本編の方よろしくお願いします。


 Eエブリスタと重複投稿 アルファポリス重複投稿

 城を出た後、俺は身体を引きずるように台車を押しながら城と城下町を繋ぐ街道を歩いていた。


 「重い……」


 平坦な一本道が続いているのだが、これが無駄に長い。

 鎧は重いわで、正直やってられないという気分だ。

 愚痴りながら歩いていると、街道から少し外れた場所に木々が林立した場所があるのを見付けた。


 「……」

 

 俺は目の付く範囲に人が居ない事を確認すると、迷うことなくそこを目指した。

 人目のない所で、このクソ重い武具を脱いでしまいたかったからだ。


  「ふ~、やっと軽くなった~」


 なんとか苦労しながら鎧を脱ぐと、布を被せて周りから見えなくしていく。

 空気がうまい――俺は深く深呼吸すると空を見上げた。

 サンサンと照りつける太陽が空の真上に差し掛かろうとしている。

 なんだか……こう、すごくやり遂げたという気分だ。

 不意に俺の腹が音を立て出した。緊張が解け安心した途端に、空腹を感じ始めたらしかった。


 「今の音はなんじゃ?」

 「腹の虫だよ」


 何気なく答えて……俺は一瞬息を詰まらせてしまった。

 誰かが、確かに話しかけてきた……俺は慌てて周囲を見回す――誰もいない。


 「何をキョロキョロしとんじゃ……落ち着きのない奴じゃの……」


 空耳なんかじゃない……もう一度辺りを見回してみるがやっぱり誰もいない。

 後、残ってる場所といえば……。

 まさか……と思いつつ、俺は台車の方へと目を向けて目が点になってしまった。

 雑然と荷物が積まれた中に例のタブレットも載っているのだが、その淵に何かがちょこんと腰掛けていたからだ。


 落ち着け……俺――目を閉じてゆっくりと深呼吸をしてみる。


 「……その様子じゃと、お主……わしの事に関して、説明を一切受けとらんな」


 これは重症だな……俺は目の前の一切を、疲れからくる幻覚だと決めつけその場に寝転がり目を閉じた。


 「俺……疲れてるんだ……今日はいろんな事があったもんなぁ……」

 「こりゃ!わしの事を無理やり無視しようとするのをやめんか!」


 鼻先を指先で弾かれたような感触に、俺は反射的に目を開けた。

 目と鼻の先に、腕を組み俺を見下ろしている女の子の姿があった。

 一瞬何が起きたか理解出来ず、少しの間女の子の事を凝視してしまった。


 「何を惚けておるのじゃ」

 「へっ……はっ」


 呆れたような女の子の声に、俺は我に返ると驚いて飛び起きてしまった。


 「わわわわっ……」


 俺が急に飛び起きたせいで、女の子が鼻先からずり落ちてしまう。

 俺は咄嗟に手を差し出して、落ちる女の子の身体をキャッチした。


 「馬鹿もんが!いきなり起きあがる奴があるか!」


 軽い……口の悪いその女の子は、手のひらにすっぽりと収まるぐらいの大きさしかない。

 腰まであるきれいな栗色の髪は太陽に映え、可愛らしい衣服にその身を包んでいた。

 

 「えっと……あんたって……その……何?」


 もっと、近くで見てみたくて女の子に顔を近づけてみる。


 「おい……こらっ……鼻息が気持ち悪い……やめんか!」


 なんだかすごくいい匂いがする。


 「ごめん……なんだか……すごくいい匂いがするもんだから……」


 先に言っておくが、俺は別に変態でもないし、おかしな趣味趣向も持ち合わせてなどもいない。

 ただ……なんというか、ホッとするというか……とにかく気持ちが落ち着くいい匂いが女の子から発していた。


 「ば……ばか!変な事を言うな!」


 女の子の顔はわかりやすい程に真っ赤に染まっていく。


 「と……とにかく、顔を離さんか!彦麻呂!」


 女の子はそう言うと、顔を真っ赤にしたままそっぽを向いてしまう。


 「あ……ごっごめん……てっ」


 こいつ、今俺の事を名前で呼ばなかったか?


 「なんで、あんたが俺の名前知ってるの?俺、あんたに名乗ったっけ?」

 「彦麻呂……お主……本気で言っておるのか?」


 女の子は驚いたような呆れたような表情で俺の事を見上げてきた。


 「えっ……ごめん……全然意味も状況も理解出来てないんだけど……」

 「お主……タブレットの内容に同意したじゃろうが……」


 あぁ……あれか……まぁ、自分の意志で望んでやったんじゃないけどって……。


 「あんた……もしかして、タブレットに宿る妖精かなんかだろ?」

 「ふ〜……まったく……こんな鈍い奴がよくも……まぁ……」


 あれっ?違ったのかな?女の子の反応はイマイチどころか、すさまじく呆れているといった感じだ。


 「俺……なんか、間違えた?」

 「いや……まったくの間違いというわけでもない……そんなことより……」


 女の子の話の腰を折る絶妙なタイミングで、俺の腹の虫が盛大な音をたてた。


 「……とりあえず話の続きは、その腹の虫を黙らせてからにしようかの」


 女の子はそう言うと、にっこりと微笑んだ。


 「ほれっ、さっさっと立ち上がらんか彦麻呂」

 「あぁ……うん……でも、その前に……」

 「なんじゃ?」

 「いつまでもあんたって呼ぶのもあれだし……」

 「あぁ……そういえば、まだ名乗ってなかったかの」


 女の子はアゴに手をあてると少し考える素振りをみせた。


 「……ふむ……そうじゃの、わしの事はマーテルとでも呼んでくれ。では、腹の虫を静めにいくぞ!彦麻呂」


 マーテルと名乗った女の子は、言うが早いか俺の手のひらから肩に凄い早さで移動しちょこんと腰掛けた。

 ちゃっかりしてるなぁ……などと思いながら、俺は空腹を満たすべく立ち上がるのだった。

 最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 台車など、普通のファンタジーものでは出てこない物が出てきてます。

 世界観的にはなんらおかしくないのですが、開示されているストーリーの範囲では違和感の方が強いかなと思ってます。

 マーテルは書いてて一番楽しいキャラなのですが、書き過ぎて脱線しかける事もあるのでセーブするのが大変です。 

 最後に次回更新(12/06/5時予約済み)

 よろしくお願いします。

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