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遭遇

最後の方が、iPad編集のため、改行がおかしいです。帰宅後に再編かけます。

 「なぁ、マーテル。俺って結局、何をするために旅に出されたんだ?」

 ロウの遺跡――と呼ばれていた建物の内部は、広い居住スペースを備えた別荘のようなものだった。

 外の森で、あの訳のわからん粘着質な敵?と遭遇してから、この建物に逃げ込んで一時間は経過しただろうか、内部を探索していて感じた全員の感想が一致しているのだから、まぁ、そういう事なんだろうと、俺は思い込むことにした。

 最初は、おっかなびっくり探索していたのが、過ごしやすい場所だと分かってしまうと、人間、だんだん行動が大胆になるもので、モニカとリリイに至っては『2階で見付けた噴水広場で水浴びをするから、絶対に上がってくるな』と言い残して姿を消してしまった。俺は一階の書斎のような構造の部屋に置かれた高級そうなソファに腰を掛けると、いままで言い出せなかった疑問を、マーテルに聞いてみようと思ったわけだ。

 「お主……いまさら、そんな事を知ってどうするつもりじゃ?」

 「いや、どうもこうも、ふつう疑問に感じるだろ」

 なぜかは知らないが、旅の目的とかの肝心な部分が、隠されてしまっているような気がするというより、隠されていると言いきっていい状態だ。

 「なにか、俺に言えない事情でもあるのかよ?」

 『う~む……』マーテルは、唸るばかりで答えようとはしない。タブレットについても、こいつは嘘をついていると言っていたし、よほどの事情なんだろうが、当事者の俺にまで黙っているというのがよく分からんし、さきほどのモニカのような質問をされるたびに、はぐらかすというのも俺的には疲れる話ではある。

 「そんなにも、言いづらい事なのかよ……」

 「言いづらいというか、お主にはまだ早いというか……」

 なんのこっちゃとういう感じではあるが、モニカとリリイが戻るまで、時間はたっぷりとあるんだ。

 俺は立ち上がると、周囲をもう一度探索しようと決める。一階書斎?のような部屋は書庫の役目もあるのか、大量の書籍がたくさんある書棚に整頓され収納されている。

 魔王ロウという魔族は、かなりの読書家だったんだな――そんな事を思いながら、肩でいまだ答えに窮し考え込んでいるマーテルと共に、書庫の方をぐるっとひと廻りしてみる。

 「で、俺の旅の目的に関する説明は出来そうなのか?」

 元いた書斎のソファに腰を落ち着けた俺は、再びマーテルに問いかけてみる。

 「それなんじゃが……」

 「ほぉ……これは、見事な書庫だな」

 マーテルの言葉にかぶせる様なタイミングで、塔の入口の方から男の声が聞こえてきた。

 「今度はなんなんだよ……」

 俺は反射的に立ち上がると、書庫内の書棚の陰に隠れて息をひそめる。

 たくさんの書棚が、互いを邪魔しないような配置をされた書庫は、天然の迷路のような構造をなしている。俺は書棚の陰から少しだけ顔を出すと、接近してくる人物の正体を見極めようと、視線を出入り口の方へと向けた。 

 静かな塔内を、コツコツ……と男の鳴らす靴音が響き渡る。

 「モニカとリリイ……」

 俺は2階で水浴びをしているだろう、ふたりの事を思い出し、背中に寒いものが走るのを感じた。このタイミングで降りてくるような事があれば……あるいは、男が2階へと足を運ぶような事になれば、ふたりと間違いなく鉢合わせてしまうだろう。

 「マーテルどうしたらいいと思う?」

 「うむ――とりあえずは、リリイと連絡をとってじゃな、隠れるか逃げるかを促した方が良いじゃろう」

 リリイと連絡――俺は、マーテルに言われて、慌てて腰のポーチからタブレットを取り出す。

 魔力を流し立ち上げる。焦る気持ちを抑えながら、操作をしていき道具の項目を引っ張りだす。いくつも並んでいるアイテム名の候補の中から、オホを探そうとするが中々見つからない。

 「なにをしておる。はようしてやらんと、間に合わんぞ」

 「わかってる……わかってるんだけど」

 マーテルの言いたい事は分かる。が、道具の一覧に並ぶリリイの私物と、旅用に揃えた道具がごっちゃになってすごく分かりづらい事になってしまっている。

 爺さんの家を出るとき『もう、ここには帰ってこんのか?』と爺さんが心配するほどに、リリイは自室の中の物を、タブレットに押し込めていたのだ。 

 「まったく、きちんと整頓しておかないから、いざという時にじゃな……」

 マーテルが小言を言ってる間に、男の靴音が書庫に入ってくるのが聞こえ、俺は全神経を男の居る方向へ向けて集中させながらオホを探し出すと、タブレット内から取り出しオホへと神経を集中させていく。

 「どうじゃ?」

 「だめだ……繋がらない」

 おそらく、まだ水浴びをしているのだろう。着衣と一緒にポーチからすべて体から外している状態では、連絡の取りようもないという物だが、逆に考えればまだ当分は1階に降りてこないとも言えるので、男が2階へ足を向けさえしなければ大丈夫だとも思えた。

 「なるほど……これは、見事な書庫だ」

 男は、書棚のひとつで足を止めると、書籍を抜き出し熱心に目を通している。

 「マーテル、あの男に見覚えはあるか?」

 「ん?わしの旧友とかという意味では、あんな男に見覚えはないぞ」

 そうか、マーテルの知り合いでもないのか。白いコートに、黒の上下。高い身長にガッチリとした体格、刈り込まれた髪に丸眼鏡を掛けた姿は非常に特徴的で、一度見たら忘れないだろう特徴を有していた。

 「これは、素晴らしい。実に素晴らしい」

 男は何事かを呟きながら、手にした書籍を片っ端からコートの中へと納めていく。

 「ブローカーなのか?」

 この塔の中に納められている本の価値は、俺には分からないが、本によっては何万ガルドもする貴重な物もあると聞く。あの男がブローカーで、この塔を荒らしにきたというのなら、モニカはともかくノームであるリリイは正体がバレると非常に不味い事になってしまう。

 飛び出すべきか……俺の中に一瞬迷いが生じる。

 「いやぁ、サッパリしたね。リリイ」

 「……気持ち良かった」

 最悪のタイミングだ。モニカとリリイの声に男が反応し、顔を声がしてくる方へと向けてしまう。

 「俺とした事が、目的を見失うところであった」

 はっきりとは聞き取れなかったが、モニカとリリイの存在に気付かれたのは、間違いなさそうだった。

 男が書庫から出ていく。向かう先は、確実にふたりの元だ。

 「だれ!?あんた?」

 モニカの叫ぶ声が塔内に響き渡る。

 「彦摩呂はどこにいる?」

 「ここだ!」

 俺の事を制止しようとするマーテルを無視して、俺は叫びながら書庫から飛び出した。

12日17時に更新出来たらなぁ……

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