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謎の石

頑張ります。

 「とりあえず、ゴーレムをしまえないか?」

 ボアは結局、立ち上がるとそのまま逃げ去ってしまった。まぁ、とりあえず血が流れなかった事はよかったが、ゴーレム達は依然として消えることなく街道上に出現したままだ。

 なぜ?という表情を俺に向けてくるリリイに、俺は少し困ってしまった。


 「えっと、なんというか……その、目立ちたくないんだよ」

 俺はリリイに、自分のステータスの事は話してはいない。こんな状況が城へと報告されて、あの国王や大臣に疑惑の目を向けられるのはまっぴらごめんな話だった。


 「……わかった」

 リリイは渋々といった感じでゴーレム達を消し去っていく。

 「えっと、リリイ?」

 台車を担いだ一体がまだ残っている。だが、リリイにそれを消そうとする気配は一向に見られない。

 「まだ、一体残ってるよ」

 「……これは消さない」

 「どうして?」

 「……このままがいいから」

 リリイは頑なな表情を俺に見せる。どうしても、抱かれたままがいいらしい。こうなると、どうやっても消してはくれないだろうな。俺は城から詰問された時の言い訳を考えておいた方がいいかもしれない……そんな事を考え始めていた。


 「リリイ、お主……ゴーレムを呼び出すために、必要だからヒロに抱けと言っていたな」

 「……言った。うそない」

 「もう、ゴーレムは呼んだ。用もないのにいつまで抱かれておる」

 「……私たち夫婦。別におかしくない」

 マーテルとリリイが激しく火花を散らす。俺は夫婦になった覚えはないんだが、今へたに首を突っ込むとマーテルの怒りの矛先が間違いなく俺へと向いてしまう。俺は、マーテルをなだめつつリリイを降ろすいい方法がないかを考える事にした。


 「取り込み中の所、申し訳ないのですが」

 急に横から割り込んできた声に、マーテルとリリイは一時休戦となったようだ。誰かは知らないが、とりあえず助かったと心の中で胸をなでおろす俺に、声の主が話しを続けてくる。


 「いやはや、あなたがたのおかげで助かりました」

 馬車の持ち主か?俺達以外に馬車の関係者しか街道にはいない。そう考えた俺はとりあえず、そうなのだろうという前提で返事を返すことにした。

 「いえ、怖がらせてすいませんでした」

 言いながら、俺は声の主に目を向ける。声の主は背は、低く太った体型をした中年の男。着ている着衣から相当な金持ちだという事が分かる。爬虫類めいた顔に大きな目をした男は、温和な表情で話し続けてきた。

 「ボアに追われ、更に前方から木の化け物が迫ってきた時は、生きた心地がしませんでしたが……」

 そう言いながら、男の目は俺の全身を舐めるように這わせてくる。正直、俺は迷惑を掛けた手前がまんしてはいるが、あまりこの男とは一緒にいたくないと思った。


 「おや……あなた、右手に不思議な石を持っていますね」

 「えっ?」

 俺は男に言われて右手を見てみる。いつのまにかは知らないが、俺は右手に拳ぐらいの石を握り込んでいる事に気付いた。指の隙間から洩れ出る光に見覚えがある様な気がした。


 「あと、これもあなたの物ですか?」

 男はそう言うと、俺の足元に落ちていた鉄製の小箱を拾いあげる。呪力が掛っているらしい小箱のふたが開かれ、中身は消えてしまっていた。

 「あれっ?なんで……」

 俺はあわてて腰のポーチに入っているタブレットに手をやる。たしかに小箱もタブレットへと収納させたはずだった。

 

 「マーテルどういうことだよ」

 「わしにも分からん」

 俺は小声でマーテルに話しかけるが、マーテルの方も怪訝な表情を見せるだけで、はっきりとした答えが返る事はない。なんにせよ、妙な話ではある。いつどうやってタブレット内から飛び出したのか、俺の右手に握られていたのはなぜか?謎は深まるばかりだ。


 「小さなお連れ様との話し合いはお済みですかな?」

 「お主、何者じゃ?」

 マーテルの警戒レベルが一気にあがったのが俺にはすぐ分かった『距離を取れ』小声でそう言うマーテルに俺は頷くと、リリイを降ろし背中にかばいながら2・3歩後ずさる。

 「とつぜん、どうなされましたかな?」

 「わしの姿は、現在特定の者にしか見せんようにしておる。お主にわしが認識できとる時点で、十二分に警戒にあたいするわ」

 「それは……わたしとした事がうかつでしたか」

 男の様子が激変する。それまでの温和な表情が鳴りをひそめる。開かれた目の瞳孔は薄く縦に伸び、全身からすさまじいまでの圧迫感を感じる。リリイが俺の背中に寄りそうようにひっついてくる。視線をやってみると、目を男の方へとキッと向けて構えている。


 「まずは、自己紹介を……」

 男はそう言うと、与えてくる圧力とは裏腹に丁寧に頭を下げた。

 「はじめまして、勇者彦麻呂。わたしはフーゴと申します」

 フーゴと名乗った男の態度からは敵意のようなものは感じないが、それがかえってフーゴの不気味さを強調しているようにも感じられる。


 「今日は、あなたがたとやり合うために、こんな小細工を弄してまで接近を試みたわけではございません」

 「では、なにが目的で我らに近づいたのじゃ?」

 「今日は、彦麻呂という人物を実際この目にしておく事と、きちんと馴染んでいるかの確認をしたかっただけなのです」

 「馴染む?馴染むとはなんじゃ?」

 マーテルの問いにフーゴはにこやかな表情で答えていく。

 

 「そのうち、分かりましょう。とりあえずは、順調なようでホッとしましたよ」

 そう言うと、フーゴは俺たちに背を向けて馬車へと戻っていく。

 「近い将来、再び会う事になると思います……それまで、御身を大事にしてくださいよ」

 フーゴは、そう言いながら御者に、馬車を出すよう指示をだす。走りだした馬車が遠ざかるまで、俺たちはしばらくその場を動く事が出来なかった。 

また少し謎が深まったという感じです。文章の書きこみ量を少し変えてみました。

ウェブ読みする分なら、会話形式に近い形が、ストーリ設定を追いやすいと勝手に思ってたのですが、他の人の作品を読んでそうでもないのかなと思いました。

次回も17時です。遅れたらごめんなさい。

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