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ゴーレム

道具の説明回の次は、魔法の説明回みたいなもんです。

説明ぽくなく、説明できてるといいんですが、どうでしょうか?

 朝早く起きた俺たちは、爺さんの家で朝食を摂ると一度フロンテラの城下町にもどった。

 そこで、宿に預けていた台車と伝説の武具を引き取り、道具屋で今後入りようになりそうな物を沢山買い込んだりと準備を整えた。


 「では、ヒロ殿、リリイの事をくれぐれもよろしくお願いするのですじゃ」

 「はい。リリイは、僕が守ります」

 俺と爺さんは、ガッチリと握手を交わす。


 「……おじいちゃん」

 「リリイ、ヒロ殿をしっかりと支えるのじゃぞ」

 「……うん。分かってる。次に帰る時は、私たちの子供を連れていく」

 リリイはそう言うと、顔を赤くしながら俺の方へチラっと視線を向けてきた。


 「ヒロ!お主!」

 「うわぁ!マーテル落ち着け!俺はまだ、何もしてない!」

 「問答無用じゃ!」

 マーテルはリリイの言葉に反応すると、即座に俺の耳へと強襲をしかけてきた。


 「本当に大丈夫かのう」

 爺さん、そんな不安そうな顔をしないでくれ。耳を捻られ悲鳴をあげながら、そう呟く爺さんに俺はそんな事を思ってしまった。







 爺さんの見送りを受け、フロンテラを出た俺たちは西へ向かって進んでいく。この街道沿いに俺の故郷ウナの村がある。

 「なんというか、様にならんのう」

 俺の肩の上で、いきなりマーテルが呆れたような声を出した。

 「仕方ないだろ。そもそもタブレットに、伝説の武具が収納出来ないせいだろうが」


 俺は今、両手で台車の取っ手を握り押し歩いているのだが、確かに見映えは悪いと思う。だが、現状着れもしない鎧を強引に着込んで、鎧のセーフティと戦うよりは、台車に積んで押した方が絶対いいに決まっていた。


 「なんじゃ、その言い草は……わしのせいだとでも言いたいのか」

 「そんな事、ひと言も言ってないだろ」

 俺はこの前の戦いでLVが5に上がったわけだが、その際にタブレットの方の機能もひとつ解放された。


 ――道具の収納機能。


 簡単に言うと、タブレット内にいろんな物が収納出来るようになったわけだ――理屈はよくわからんが。


 俺は、この機能をマーテルから聞かされた時、ようやくこの台車を押す移動から解放されると喜んだのだが、世の中そう上手くいくはずもなく、何故かは知らないが伝説の武具だけは、どうやってもタブレットが収納を受け付けようとはしなかったのだ。


 「とにかく、収納出来ない以上、台車に載っけて押して行くしかないだろ」

 「……いい方法ある」

 それまで、黙って俺の隣を歩いていたリリイが突然口を開いた。


 「いい方法って、この状況をなんとか出来るのか?」

 「……できる」

 そう言うと、リリイはその場で足を止めてしまう。

 「リリイ?」

 なんで、顔を赤くしてるんだ……リリイは何故か顔を真っ赤にし、何やら悩むようなモジモジしたような仕草を見せはじめる。


 「言いにくい事とかなら、無理しなくていいよ。台車を押して行けばいいだけだしね」

 「……無理してない。大丈夫」

 そう言うと、リリイは大きく深呼吸をする。

 そこまでして、やらないといけない事でもないんだけどな。俺はそんな事を考えながら、リリイの様子を見守っていた。


 「……ヒコ様、抱っこ」

 「はい!?」

 肩の辺りから、無言の圧力が俺に掛かりはじめる。正直、さっき捻られた場所がまだ痛むのだ。だけど、だからと言って、リリイを無視するわけにもいかない。


 「えっと……どうして抱っこ?」

 「……必要だから」

 リリイと会話をしていて、困るのがこういう時だ。必要最低限の事しか話してくれないため、意味が通じない時が大変だ。


 「台車を押さなくてもいいように、してくれるんだよね?」

 「……そう。他に理由ない」

 俺の問い掛けに、リリイは不思議そうな表情で首を傾げる。

 「分かったよ。リリイおいで」

 「……うん」

 俺が呼んだ瞬間、リリイの表情がわかりやすい程の笑顔に変わる。

 その笑顔に、俺まで釣られて笑顔になってしまう。


 「……ニヤつきよって、この変態スケベのアホが」

 相当怒ってるな……マーテルからほとばしる怒りのオーラが、ヒシヒシと伝わってくる。


 「……まえの時みたいに」

 「前の時……あぁ、洞窟脱出の時みたいって事ね」

 俺のすぐそばで、両手を広げ目一杯伸ばして、抱き上げられるのを待っているリリイを優しく横抱きにする。

 「……うれしい。ありがと」

 リリイは顔を真っ赤にすると、恥ずかしいのか俺の胸に顔を埋めてしまった。


 「リリイ、はじめてもらってもいいかな?」

 「……うん、わかった」

 俺はリリイの返事を聞いて、心の中で胸を撫で下ろしていた。肩の上から漏れてきている怒りのオーラは、すでに臨界点を突破しつつあったからだ。両手が塞がり、リリイを抱えたこの状態で怒りのエネルギーが俺の耳に向かった場合……考えるのはよしておこう。


 「……はじめる」

 リリイは、不自由な体勢で苦戦をしながら腰のポーチをまさぐると、何かの種?みたいな物を取りだす。

 「……これ、そこにまく」

 リリイはそう言うと、無造作に種をまきはじめる。


 「……ブローテ」

 リリイは小さくつぶやく――特に何かを念じたとかそういう事もない。

 魔法も、魔力をなんらかの形へと、術者が念じ変えているだけの事なのだ――と、俺は改めてそう思ってしまう。

 人間が道具という『形』をあらかじめ用意し、魔力を流して利用するように、魔法を使う彼らは『形』を魔力でイメージして利用しているだけの事なのだろう。

 そう思うと、なんだか素っ気ない感じもしないでもないが、まぁ……現実なんて、こんな物なのかもしれない。


 「……もうじき」

 様子を見守る俺とマーテルに、リリイはそう告げる。

 「ヒロ、見てみい!」

 マーテルが地面の一角を指さし叫んだ。種がまかれた地面の一部が、ボコっという音と共に少しせりあがった。

 

 「……ヒコ様、少しさがる」

 「えっ」

 なにかが、すごい勢いで地面をせりあがってくる。

 「うおっ!」

 せりあがってきたなにかは俺の顔をかすめて、ぐんぐんと伸びていった。


 「……ヒコ様、大丈夫?」

 「リリイ……今度からは、もう少しはやくに注意してもらえると助かる」

 「……ごめん」

 そう言うと、リリイはしゅんとした顔をしてうつむいてしまう。

 言い過ぎたかな……俺がそんな事を考え、リリイに声を掛けようとしたその時だった。

 

 「わわわわっ……」

 突然、俺の体が宙に浮いた。浮いたとというか、なにかに首根っこを掴まれ、持ち上げられたというのが正しいのかもしれない。

 

 「……やめて、わたしはへいき」

 リリイがそう言うと、俺の体は再び地面へと降ろされた。

 「なんなんだ、いったい」

 「ヒロ、周りを見てみるのじゃ」

 マーテルの言葉に、俺は自分の周囲を見渡して絶句してしまった。

 

 大小、形も大きさもバラバラな人間の形をした木に、俺はいつのまにか、周りを囲まれてしまっていた。

 どうやら、俺はその中の一体に体を持ち上げられてしまっていたらしい。


 「……ウッドゴーレム」

 リリイが俺にそう告げてくる。

 「ゴーレム?そうなんだ、これがゴーレムなのか」

 ゴーレムという存在は、学校で教わっていたから知ってはいたが、実物を目にするのは俺自身、これがはじめての事だ。


 「……台車、押して」

 リリイは、ゴーレムにそう命じる。

 なるほど、俺の代わりにゴーレムに台車を押させようという考えだったのか。

 俺はそこまで考えて気が付いた『無理だろ』と。

 たしか爺さんが、人間の道具とは相性がうんぬんと言ってなかったか、俺はゴーレムが台車を押せるのかを見届けるため、あえてそこは突っ込まず、黙って見届ける事にした。


 ゴーレムは、リリイの命令に従い、台車の取っ手を握るが……台車はびくともしない。

 やっぱり無理なんだな。と、俺が思い、リリイに話しかけようとした。

 台車が宙に持ちあがった。ゴーレムは、台車が押せないと分かると、台車を肩に担ぎあげてしまった。


 「……ヒコ様、これで押さなくてもいい」

 俺は目の前の光景に呆れてしまっていて、リリイに返事を返す事が出来なかった。

 台車の上に載せてある荷物は、俺には説明できない原理で台車からずり落ちはしないので大丈夫なのだが、こういう発想じたいが俺の中でなかったため、少し面喰ってしまった。

 

 「……ヒコ様、大丈夫?」

 「えっ……あぁ、うん大丈夫だよ」

 俺は、我に返るとリリイを抱いたまま、再び街道を歩き出す。

 まぁ、どう運んだって運ぶ事には変わらないか。

 表情も何にもない、図体のでかい木のゴーレムを見あげながら、俺はそんな事を考えていた。


 「ヒロ!前から何かがくるぞ!」

 とつぜん、マーテルが前方を指さし叫んだ。

 行く道の先へ、視線をもどした俺の目に、遠くから何かがすごい勢いで接近してくるのがわかった。

次回更新、24日17時なります(遅れる可能性あり、年末なので許してください

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