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アーサーレプリカ

一章、謀略にあった、とんでもない誤字を修正しました(名前の取り違え

一部、文章がアイパッド編集のため、改行後の空欄がおかしいです。

晩に修正します。

 「相変わらずですわね、先生」

 男のとる態度に、ステイシーは眉ひとつ動かすことはない。

 「なにをしている!ヴィクトール!」

 声を荒げたのは、教育課長のレンナルトだ。教育課は名前の通り、ギルドにおける教育を担当する。それは民間人の学業から、騎士見習い、貴族の子息女までへの教育全般を指していた。レンナルトは教育課の長であり、ヴィクトールの上司でもあった。


 「君は……今は授業中ではないのか!だいたい、教育特務局第13課とはなんだ!」

 レンナルトの発言に場が再び騒がしくなる。

 「レンナルト教育課長、あなたが知らなくて当然です。わたしが伝えてないのですから」

 「なっ……しかし、ヴィクトールはわたしの部下だ……」

 「表向き、そうしているだけの事です」

 ステイシーにあっさりと切り返され、レンナルトは絶句してしまう。


 「教師ヴィクトールの為だけに創設された第13課。世界の勢力図を塗り替えてしまうほどの力ゆえに、今まで彼の正体は隠させて頂いておりました」

 「なにを、大げさな……」

 レンナルトがそう告げようとした口を何かが塞いでしまった。塞がれたレンナルト自身、自分の口が人の手で塞がれた事を理解するまでに数秒の時間を要した。


 「レンナルト……」

 レンナルトの背筋を冷たいものが走る。ヴィクトールはステイシーの側に確かにいた……はずだった。

 議場はそれなりの広さが確保されている。発言者が口上を述べるための壇があり、それを半円状に囲むようにひな壇上に席が設けられている。

 一瞬で、それも人にその接近を認識させる事なく移動するなど不可能なはずだった。


 「少し黙れ、俺はステイシーに用がある」

 教師としてのヴィクトールを知るレンナルトにとって、目の前の人物が同一人物には見えなかった。

 「きっ君はいったい……」

 「ボケたかレンナルト。俺はヴィクトール、アウスビルドゥンクに身を置く教師であり、ギルドの(つるぎ)よ」

 呆然とした表情で座り込むレンナルトに背中を向けると、ヴィクトールは何事もなくステイシーの元へと戻っていく。


 「先生、要件を伝えてもよろしいかしら?」

 「構わない、聞こう」

 ステイシーは、ヴィクトールに先ほど自信が演説した内容を伝える。


 「それは、俺でなければならない事なのか?」

 「不服そうですね、先生」

 「俺は教師として、生徒を教え導く使命がある」

 「その、教師としての使命にも関わるとしたら……」

 ステイシーはそう言うと微かに微笑む。


 「ほぉ……それは、どういう意味だ?」

 「これに目を通して頂ければ、お分かり頂けるかと」

 ステイシーは、ヴィクトールに一枚の書状を手渡す。

 ヴィクトールはそれを受け取ると、しばらくの間食い入るようにそれに目を通していた。


 「ステイシー……」

 「はい、先生」

 「お前は、いつから……こんな姑息な駆け引きが出来るようになったのだ?」

 「先生……議長になるには、ただ優秀なだけではだめなんですよ」

 ステイシーの言葉に、ヴィクトールは声をあげて笑いだす。


 「言うようになったな、ステイシー……いいだろう、引き受けてやろう。ただし、やり方は俺に任せてもらう、それが条件だ」

 「いいでしょう、やり方は任せます。どのみち、ギルドは今回の件直接は関われません」

 もしかしたら勇者が実は、ロウの血筋かもしれないとは流石に発表は出来ない。

 「ただし、こちらからもひとつ条件があります」

 「なんだ?」

 「もしも……万が一ですが、勇者彦麻呂がロウの血筋だとはっきりした場合、タブレットを回収し持ち帰って頂きたいのです」

 ステイシーの話し方がギルド議長のそれに戻った。


 「いいだろう……では、俺は行く」

 「くれぐれもお願いしますよ、ヴィクトール」

 来た時と同じように、ゆっくりと歩き去る男の背中を、ステイシーは複雑な表情で見送るのだった。







 「ご苦労さま、すーちゃん」

 「フリーダ様、遅くなり申し訳ございません」

 ステイシーはそう言うと、膝を折りその場で平伏した。その姿からは、ギルドのトップとしての威厳も何もない。ただ、従順な従僕でしかない。

 議会が閉幕したあと、ステイシーは足早に議場を出て、同じギルド本部内にあるこの部屋を訪れていた。


 「そんな、固くならないでよ……すーちゃん」

 女はそう言うと、すぐ後ろに控えた男に声をかける。

 「ジージー、すーちゃんに茶を淹れて差しあげて」

 男はうやうやしく無言で頷くと、感情のない瞳のまま茶を淹れるため奥へと立ち去っていく。


 「あの者が、アーサーの?」

 「そうよ~あの子抵抗力がすごいからさぁ、ちょっと本気だしちゃった」

 さらっと言いのけた女の表情からは、言うことの聞かない子供に灸を据えたぐらいの感情しかないのではと、思えるほど普通の表情にしか見えない。


 「フリーダ様、茶を淹れてまいりました」

 男は床に散らばった書物を避けようともせず、踏みしだきながら歩いてくる。その表情からは、感情らしいものを感じる事は出来なかった。

 「あら〜せっかく淹れてもらったんだけど、机が書物で埋れてたのを忘れてたわぁ」

 「フリーダ様、私が片付けますので」

 ステイシーはそう言うと、慌てて机の上を片付けはじめた。







 「う〜ん、ジージーの淹れる茶は相変わらず美味しいわぁ……ねぇ、すーちゃんもそう思うでしょ?」

 「はい、フリーダ様」

 ステイシーはどこまでもフリーダに忠実であった。そういう人物だからこそ、議長の椅子を与えられたわけではあるのだが、ステイシーのフリーダに向ける忠誠心は、地位や名誉とは別に心底フリーダに心酔しているのではと思わせるものがあった。


 「で、すーちゃん……ヴィクトールは動いてくれた?」

 「はい、フリーダ様が先んじて用意していた書状が効力を発揮しました」

 「うふふ……でしょうね。あの男は最強ではあるけど、同時に教師でもあるのよ。そこを上手く利用してやれば、こちらの意図通りに動かすことも出来るわ」

 フリーダは、一瞬遠くを見つめるような目をしながら薄く笑う。


 「はい……ですが、ヴィクトールに彦麻呂様が万が一にも殺されてしまう事態にでもなれば……」

 「そのための書状でもあるのよ」

 そう言うと、フリーダは茶を静かにすする。


 「あの男はね、心底教師なのよ。あの書状で縛られている限り、あの男がヒロを殺すなんて事は絶対にあり得ないわ」

 そう言いきると、フリーダはゆっくりと立ちあがる。

 「すーちゃん、私はそんな事よりも今はゼリア聖王国の方が心配なのよ」

 「ゼリアの、急激なまでの軍事強化の事を言われてるのですか?」

 ステイシーは、フリーダの後を追うように立ちあがると表情を曇らせた。


 「ふふふ、さすがねすーちゃん。そう、ゼリアは揺れているわ……友好国でもあったネザリアが、一夜で消し飛ばされてからね……様相が一変したもの」

 「ええ……ネザリアには、ゼリアの現王であるアテオスの妹姫が嫁いでいましたが、あの事件で亡くなっています」

 「よく調べてるわね。そう、アテオスは狂ってるわ……おそらくだけど、彼は近いうちに必ずなにか事を起こすんじゃないかと、私は思うわけよ」


 『付いて来て』話しをしながら、フリーダはステイシーを伴い部屋の奥へと移動していく。

 古臭い本棚……見たこともない文字で書かれた本がギッシリと詰められたその前に移動すると、フリーダは幾つかの本を手に取り動かしていく……カチリとなにかのスイッチが入った音がすると、本棚が横へとスライドしはじめた。


 「こっちよ」

 本棚があった場所には、ひとがひとりようやく通り抜けれるかというぐらいの通路が口を開けており、その中をフリーダとステイシーは進んでいく。


 「すーちゃんには、特別にこれを見せてあげる」

 通路を抜けた先には……先ほど居た部屋よりもひとまわりぐらい広いのでは、と思える空間が広がっていた。

 見たこともないような器具などが置かれた中をフリーダとステイシーは歩いて行く。透明な器に入れられた何かの液体が、ボコっボコっと泡を吹き、その音が静かな部屋に反響して雰囲気を醸し出す。


 「これよ」

 フリーダは、部屋の一番奥……巨大なひとひとりがすっぽりと収まる、透明の器の前で足を止めた。

 「フリーダ様……これは……」

 「ふふふ……驚いてくれてよかったわ。このはね、アーサーのレプリカ……ゴーレムよ」

 二の句が告げれず、立ちつくすステイシーにフリーダがそう告げる。


 美しい少女だった。一糸まとわぬ姿で、液体に満たされた器の中を浮かんでいる。

 

 「ジージーから得られた血の力を元に、以前から研究していたゴーレムの強化案を利用して造っちゃった」

 舌を出しおどけて笑うフリーダの無邪気さが、ステイシーには恐ろしく感じられる。

 「すーちゃん……ギルドが保有する本当の意味での戦力ってどのくらいいると思う?」

 「そうですね……」

 いきなり振られた質問に、一瞬面食らいながらもステイシーは考える。

 冒険者は募集にさえ応じてくれれば数は集まるだろうが、戦力としてどうのと言う前に金が掛りすぎる。

 そうなると、固有の軍というものを持たないギルドにおける戦力は限られるのではと、ステイシーは考えた。


 「フリーダ様に、わたし、ヴィクトール、あのアーサーの子孫も入れていいなら、戦力と呼べるのは4人ぐらいでしょうか……」

 「そうね、そのぐらいでしょうね。だから、補強するの……この()を量産してね」

 フリーダはさらりと言いのけると、無邪気そうに笑った。







 フリーダ達のすぐそばの壁を、一匹の虫が這っていた。その背中にある幾つもの斑点が、とつぜん奇妙に歪んだかと思うと、まばたきを始めた。

 背中の斑点は全て虫の目であった。その感情のない視線は、フリーダとステイシー事を、まるで観察でもするかのように捉え続けていた。

明日、17時更新予定してます(もしかしたら、21時になるかもしれません。

よろしくお願いします。

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