エピローグ1
おはようございます。
エピローグです。フラグの立て方とかが、きちんと出来てるかが心配でなりません
「すっご~い!ねぇ、ジージー聞いてる~?」
薄暗い室内の一角に女が座っていた。目の前に置かれた水晶玉から溢れだす光に照らし出された容姿は、非常に若く見えまだ十代にしか見えない。
薄い笑みを顔に張り付けた女は、よほどに嬉しいのか気分を高揚させ、部屋中を飛びはね始めた。
古臭い本棚に、見たこともない文字で書かれた本がギッシリと詰められている。部屋は整頓されておらず、散乱した本が山積みにされていた。
「わ……わたしはジージーではない。ジークフリードだ」
腹の底から力を振り絞るように、なんとか抵抗を試みる。高価そうな絨毯が室内に敷かれているのだが、足元はすでに、俺の汗で変色してしまっていた。
「そんな事は、今はどうでもいいわぁ。それよりも、ヒロが頑張ったのよ……うふふふふ、私いま最高の気分よ」
ヒロ……彦麻呂、ウナで生まれウナで育った者。幼少より、勇者としての期待を一身に背負い国からも目をかけられ……先日、旅立った。
「不満そうねぇ……ジージー」
女が不敵な笑みを漏らす。何もかも見透かされている――そんな視線に俺の心が落ち着く事はない。
「わたしは……」
「そうよね……納得いかないわよねぇ」
そう言う女の表情は、言葉とは裏腹に嬉しそうに見える。
「ウナで生まれ、ウナで育ち、幼少より、勇者としての期待を一身に国からも目を掛けられていた……」
女の瞳が妖しく光る。
「勇者ジークフリード、アーサーの血を引く真の勇者……」
女はそう言うと、俺に近づいてくる。目がくらむ様な香りが思考を鈍らせてくる。
「くやしい……くやしいわよねぇ。でもね……あなたじゃダメ」
女は俺の顔に両手を添えて、目を覗き込むように見つめてきた。
「わたしは、国に……帰る」
「国に?あなた、帰りたいの!?」
とつぜん腹を抱える様な勢いで女は笑い始める。床にまで散乱したいくつかの書物を蹴散らすのもかまわず、女はしばらく笑い続けた。
「なにが……おかしい」
「あなた、やっぱり凄いわ。記憶を戻してあげたのは、正解だったわね」
女はそう言うと、手近にあった椅子を引き寄せ腰を掛ける。
「戻ってどうするの?あなたの居場所なんて、もうどこにもないのよ」
「どういう意味だ……」
意識が混濁する。抵抗し続けるのも限界かもしれない。
「そのままの意味よ。あなたが家へ100万ガルドを持ってきた日」
そうだ、俺はあの日……100万ガルドを勇者が住む家へと届けた。だが、その先の記憶が曖昧だ。頭の中に霧やもやが掛ったような……もどかしい感じだ。
「あなた、ひと目で私がなんであるかを見破ったのよ。驚いたわ……記憶をいじられて、ただの『王国最強の騎士』に成り下がっていたあなたが……血の力って凄いわよねぇ……」
そう言って女は、背後を振り返り水晶を見つめた。
「あの子も……ヒロもそういう意味では、凄い事に変わりはないものね。そう考えると、今回のは大した活躍とも言えないのかしら」
「わたしを……どうするつもりだ」
「どうもしないわ。気に入っちゃったから、血の力を調べきるまでは居てもらうつもりよ……どちみち、王国に帰った所であなたは『王国最強の騎士』ですら、なくなっているから……」
それを聞いた瞬間、俺の中で怒りの感情が爆発した。女に手を伸ばす――あと少し、もう少し……。
「ジージー……あなた、頑張るのはいいけど、お痛がすぎると名前を本当にジージーに登録し直しちゃうわよ」
女の首筋に届きかけた俺の手が止まる。これ以上は、何も奪われるわけにいかなかった。
それにしても……どうやったらそんな事が可能なのだろうか?名前を変える事など誰にも出来ない。一度登録され、受理された記録は厳重に保管される。だが、この女はそれが可能だとサラッと言いきってくる。
そして、それを本当にこの女はやってしまうのだろうと俺は確信していた。
「そんなに、顔をしかめなくてもいいじゃない。ヒロでもそうだけど、彦麻呂って凄く洗練された名だと思わない?あの人が最初、あの子に付けた名前……ライサよ、ライサ、信じられる?ありえないわ」
女はそう言いながら、表情を歪ませる。
「だから、変えてあげたの。あの人が去った後にね……素敵でしょ?」
この女は狂っている――ひとり呟きながら、恍惚な表情を浮かべている女に俺は恐怖を感じてしまう。
「さてと……あの子を、せめてあなたレベルぐらいまでは鍛えたいのよね……」
もうすでに、何かを企んでいるという女の目が、俺に質問してこいと訴えかけてくる。
「何を企んでいる?」
「あはっ……やっぱり気になる?実はね、もうすでに人選済みなの……ギルド中央本部、中枢教育機関アウスビルドゥンク、その中に存在する教育特務局第13課……」
なんだ、それは……教育特務局第13課聞いたこともない名だった。騎士になる者はすべて中枢教育機関アウスビルドゥンクにて、訓練と教育を受ける事になる。俺も当然訓練を受けたが、アウスビルドゥンクには、12の課までしか存在していない。
「10万3千冊の教科書を身にまとう、通称『歩く学び舎』あの男なら、ヒロを確実に成長させてくれるわ……きっとね」
女は呟きながら歩いていき、水晶を手にする。女がなにかを念じた瞬間、水晶が輝き何もない空間に映像が投射される。
「うふふふふ……ヒロ、楽しみにしててね。わたしがあなたを立派な勇者へと育ててみせるわ」
映像の中の少年は、女の声に応える事はない。
「さてと、じゃあ……続きといきましょうか、ジージー」
女は、映像を閉じると俺の傍へと寄ってくる。女が俺の眼前に手をかざす。
そこで、俺の意識は闇の底へと閉ざされてしまった。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
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