ライバル
おはようございます
あとちょっとで一章終わりです。
予定を変更しまして、今日中に一章完結させる事にしました。
明日は、一章のまとめを投稿します。
「ヒロ!しっかりせい!」
「あぁ……マーテル?」
いったいなにが……アズレトとリリイの間に、強引に飛び込んだとこまでは薄っすらと記憶に残っている。
俺は意識のハッキリしない頭で考えてみるが、そこから先の事が思い出せない。
「俺は……どうなったんだ?」
「お主、何も覚えとらんのか?」
マーテルが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「アズレトとリリイの間に飛び込んだまでは……」
俺はそこまで口にした所で、飛び起きる。そうだ……リリイは?アズレトはどうなったんだ?
転がっていた剣を拾い上げると、俺は周りに素早く目線を送る。
「ちっ……ゾンビ野郎、もう起き上がったか」
周囲をあわてて見回す俺の耳に、アズレトの言葉が飛び込んでくる。
アズレトは、地面に腰を付けてあぐらをかいている。見た目、そんなダメージを受けたようには見えない。回復が早いのか、自分を燃やした時に出来た火傷の傷も消えつつあるようだ。
「ヒロ殿、よく頑張りましたな」
爺さんが朗らかな笑顔で近づいてくる。
「……ヒコ様」
その後ろを少し遅れて、リリイが歩いてきた。
「リリイ、怪我は大丈夫?」
「……大丈夫。ヒコ様は?」
リリイは俺の側に寄り添うように近づくと、俺の右腕に両腕を絡め体を預けてきた。
「何をしておるか!」
「……うるさい」
リリイとマーテルの間に、一瞬険悪な雰囲気が流れる。
「俺は大丈夫。リリイ……危険な目に合わせてごめん」
俺は自然を装い、リリイとマーテルの間に入るように、リリイに話しかけた。
「……へいき」
そう言うと、リリイは騒ぐマーテルを無視して、俺の右腕に絡めた両腕に力を少し込めた。
「おい!ゾンビ野郎」
さっきから、ゾンビ野郎って俺の事を言ってるのか?俺はそんな事を考えながら、アズレトヘ視線を向ける。
「ふん……ゾンビ野郎、お前いったい何者だ?最後の一撃……認めたくねぇが、マジで死ぬかと思ったぜ」
「最後の一撃?何の事だ?」
「覚えてねぇとはな……まぁ……いい、そんな事より……こいつをどこで手に入れた?」
俺の言葉に、一瞬アズレトは呆れた表情を見せながら、手にしていた鉄の小箱を俺の方へ示してきた。
「あぁ!それは、その箱はわしの箱じゃ!」
さっきまでリリイに絡んでいたマーテルは、アズレトの持つ箱を目にすると、箱を指差し騒ぎ始める。
どうやら、戦闘中に落としてしまった物を、アズレトに拾われてしまったようだ。
いやいや……マーテル、厳密には俺たちの物でもないと思うぞ。ブローカー拠点内で偶然拾った物の所有権なんて、実際誰にあるかとかは俺にも分からんが。
「チビは黙ってろ……俺様は、こいつがなんなのかが知りたいだけだ」
「さっきから……チビチビと、わしは頭にきたぞ!」
そう言うと、マーテルは爺さんの方へと視線を向ける。
「フーベル!あの小僧を、ボコボコのギタギタにしてしまうのじゃ!」
「マーテル殿……」
そりゃ……困るわな。俺は爺さんのなんとも言えない表情を見ながら、そう思う。
「ちっ……分かったよ。俺様も、今の身体の状態でその爺さんとはやりあいたくないしな」
そう言うと、アズレトは小箱を俺の足元へと放り出す。
「ヒロ!」
「はいはい……分かってるよ」
まったくこいつは……俺は内心呆れながら、箱を拾い上げると懐にしまう。
「おい、ゾンビ野郎」
「なんだよ!」
「その箱、かなり強力な呪力を感じたぜ。まっ……中身がなんなのかは知らんが、気を付けた方がいいんじゃねぇか」
強力な呪力?マーテルはそんな事、ひと言も言わなかったけどな。
「どういう風の吹きまわしだ、アズレト」
「どういうも何もないが、まぁ……強いていえば、お前は俺様に、強烈な一撃を食らわせた男だからな。俺様がリベンジしに行くまで、くだらない事で死なれちゃ困るんだよっと……」
アズレトは、そう言って立ち上がると再び空中へと浮かびあがる。
「ゾンビ野郎……」
「まだ、なにか用か?」
「最後に、お前の名前を聞いておきたい」
「彦麻呂……俺の名は彦麻呂だよ」
俺の名を聞いた瞬間、一瞬アズレトはキョトンとした顔を見せた。
くそ……笑いたければ、笑えばいいだろ。俺が、アズレトの反応にそんな事を考えた……。
「なっ……なんて、洗練された名なんだ。くそ……ゾンビ野郎のくせに」
「えっ……」
アズレトの見せた意外な反応に、俺はとまどってしまい、すぐに反応を返す事が出来ない。
「まぁ……いい。彦麻呂!次会う時はお前に勝つからな!」
そう言い残すと、アズレトは体をフラつかせながら飛び去っていった。
「いったい……なんだったんだ、あいつは」
「ヒロ殿、これを……」
呆然と、遠ざかるアズレトの背中を見送っていた俺に、飛び去っていたはずのブーメランを持った爺さんが、話しかけてきた。
「戻ってきてたんだ……」
俺は爺さんからブーメランを受け取る。
「ヒロ殿、アズレトの事なんじゃが……」
爺さんが言うには、アズレトは口こそ悪いが根は悪人ではないらしい。
俺が気を失っている間に、爺さんから事情を聞いたアズレトはあっさりと、俺たちへの敵意を引っ込めたそうだ。
純粋に森を荒らす人間への憎しみから、ブローカーに対して襲撃をした。俺たちも最初はブローカー連中とグルだと思っていたと、爺さんは俺に話してくれた。
「……てかげん」
リリイが、俺にそう言ってきた。リリイに対しては相当手加減をしていたらしく、実際派手に飛ばされた割にダメージはなさそうだ。
「でも……だからと言って、許される事でもない」
俺は、アズレトが飛び去った方角を睨みつける。
「左様。アズレトのした事は、許される事ではない。ヒロ殿、力ある者が感情のままに動く事がいかに罪深い事か、心に留め置いてほしい」
爺さんは真剣な表情でそう語る。
「うむ……あと、ヒロ……お主はもっと頭を使え!これを見てみよ!」
マーテルはそう言うと、少し怒気を含んだ声で話しながら、俺に小型タブレットを突きつけてきた。
「マーテル見せてくれるのはいいんだが、字が見にくい」
俺はポーチからタブレットを取り出す。
HP18/350……。
「なっ……ギリギリじゃないか」
「そうじゃ、ギリギリじゃ。お主、もう少しで喰われて消滅する所じゃったぞ」
俺はとつぜん、全身から力が抜けたように座り込んでしまった。なんとなく空を見上げてみる。
相変わらず晴天の空だ。
「……ヒコ様、つかれた?」
「うん、なんか急に体から力が抜けちゃったよ」
「ここから少し森の奥へ入った所に、わしの家があるのじゃが、一旦そこで休息を取りなされ」
爺さんが、俺のそんな様子を見て話しかけてきた。
俺の体は至る所に傷があり、だるく疲れもあった。
「お言葉に甘えます。フーベルさん」
俺は、ここから来た道を宿まで戻るよりは、その方がいいかもしれないと、爺さんの申し出を受ける事にした。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
アズレトに勝たせないような、幕引きを考えるのが非常に難しかったです。
ヒロの得意不得意、魔力は強いがコントロールが利かない所などを描きたかった、一章終盤でした。
次回更新今日の16時までに投稿します。
よろしくお願いします




