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無意識の力

 おはようございます

 前回に続き、戦闘パートです。

 「最初の勢いはどうした!」

 つ……強い。俺はアズレトが繰り出す蹴りを、盾で受け流しながら距離をとる。

 強いという事は、先ほど実際戦った時も感じていた事だったが、負傷してなおここまで動けるとは正直思っていなかった。


 「……右、お留守」

 リリイが、俺に追撃しようと肉薄してくるアズレトの右側面に向けて、何かの実らしきものを連続で放つ。

 見ていて思ったが、爺さんやリリイは植物に関する技や魔法を多用している。

 おそらくだが、ノームという種族が得意とするのがそういう系統なのだろう。


 「……次、左」

 リリイは、フットワークのある素早い動きでアズレトを翻弄している。足場となる地面は、アズレトの攻撃によって抉れて動きづらいはずなのに、リリイの動作からは不自由さが感じられない。

 リリイは右に左にと攻撃を仕掛けていく。それは、ことごとくアズレトに防がれてはいるが、相当にイラつかせる事には成功しているようで、俺への攻撃が散漫になり始めた。


 俺は腰に差している剣に手を伸ばし抜きさる。相変わらず、恐ろしいほどに切れ味の良さそうな刀身だ。

俺は剣を構え呼吸を整える。アズレトはリリイの動きをけん制するのに夢中で、俺の方に意識が向いてない。

 「たぁっ!」

 リリイ相手に翻弄され、完全に背中を晒しているアズレトに向かって俺は突進すると、掛け声と共に切っ先を突き出した。

 

 「ちぃっ」

 アズレトが、後方から接近する俺の存在に気付き身を引くのと、俺の剣がアズレトに届くのがほぼ同時だった。

 切っ先から、ぬるっとした嫌な感触が右手を通して伝わり、俺は反射的に身を引いてしまう。切っ先には血が付いており、アズレトの方へ目をやると脇腹を左手で押さえ、俺に向けて右手のひらを突き出してきた。

 

 傷つけた……俺がやったのか。切っ先に付いた血に俺の身体が小刻みに震えだしてしまう。ブーメランの時は投げただけで、薙ぎ倒したのもブーメランが勝手にやっている感が強かった。

 でも、剣は違う。ダイレクトに傷つけた時の感触までが体に伝わる。


 「ヒロ!」

 マーテルの叫びで、俺は我に返る。アズレトが放った火球が胸に吸い込まれるように飛んでくるのを、俺は茫然と見送るしか出来なかった。


 「ざまぁ!直撃だぜ!」

 吹き飛ばされた俺を見ているのか、アズレトの嘲笑う声が耳に入ってくる。それにしても……痛いなんてもんじゃない。まだ、全身がジンジンとしびれたような感覚に襲われている。剣が前方に飛ばされ転がっていくのをただ、見送る事しか出来ない。

 

 「ヒロ、大丈夫か!?」

 マーテルは、なんとか俺の身体にしがみ付いていたらしい。

 「ん、痛いけど……それだけかな」

 俺は立ち上がると、あちこち確認してみる。痛みは多少残ってるがそれだけだ、あれほどの魔法の直撃を受けたのにも関わらず、俺の身体には外見上には、致命的な傷やダメージの痕跡がなかった。


 「てめぇ……さっきもそうだが、なぜ耐えれるんだ?」

 アズレトから笑みが完全に消える。


 「ヒロ、HPの残量に気を付けるのじゃ!」

 HP175/350

 半分を切ったか……最初、謁見の間でタブレットの数字を見たときは多いとか感じたが、実際戦いを経験してみると、減りが速いと感じた。


 「……スキあり」

 アズレトが俺に気を取られてると判断したのか、リリイが仕掛けていく。

 「スキなんざねぇよ」

 アズレトは、攻撃をしようと構えたリリイの懐へ素早く移動すると、右足でリリイを俺の方へと蹴り飛ばす。

 

 「リリイ!」

 短い悲鳴と共に飛ばされてくるリリイを抱きとめる。思いっきり蹴られたせいか、リリイはすぐには立ち上がる事が出来ない。

 「これならどうだ……人間」

 アズレトは、リリイを抱きとめ動けない俺に右手を突き出すと火球を連射してくる。

 先ほどは上空からの攻撃でまだ距離があったが、今度は地上からで距離が近い。慌てた俺はリリイを胸に体でかばうような体勢で、盾を前方に構えた。

 

 すさまじい衝撃が盾越しに何度も伝わってくる。一瞬でも遅れていたら間に合わないというタイミングで、盾に火球が接触した。


 ぐっ……きつい。胸元でリリイを右手でかばっているせいで、左腕だけで火球の対処をしないといけない。

 だが、俺は負けるわけにはいかない。俺が競り負ける事は、リリイをも負傷させることに繋がる。俺は全神経を左腕に集中させ、奥歯をかみ締めると盾で火球を押し返すように前へと押し出し……。


 「へぇ、頑張るな……けどな、本命はこっちだぜ」

 火球に対抗しようと体を動かした俺の側面に、いつの間にかアズレトが回り込んでいる。

 「なっ……」

 完全に虚をつかれたと思った瞬間に、俺の顔面にアズレトの蹴りが炸裂した。


 「ヒロ!」

 世界がまわる。マーテルの叫ぶ声が聞こえたような気がする。意識が遠ざかる……相手もそれなりにダメージは負っているはずなのに、動きにみじんの陰りも感じられない。

 鉄の味がする、ヌルッとした感触が口の中に広がる。


 「しっかりしろ!ヒロ!」

 そうだ……リリイは?ボヤけた頭にマーテルの声が響く。

 霞む目がアズレトの姿を捉える――アズレトの手が地面へと向けられる。

 その手が突き出す先に、リリイの姿を見た。


 ――時間が……世界がゆっくりと動いた――


 考えるよりも先に体が動いた。鎧に右手をかざし、思いっきり魔力を注ぎ込む。鎧に内蔵された回路の効力――説明されてもいない能力に、俺はこの場を切り開く可能性を見出そうと全力を注ぐ。


 すぐに反応はあった。鎧が、緑に淡く……次第に力強く発光していく。

 「なにぃ!」

 アズレトとリリイの間に割って入った俺を見て、アズレトの瞳が大きく開かれる。


 アズレトの右手が、魔法の……炎の赤に染まる。俺に恐怖はなかった。アズレトの懐を目掛け、俺は突っ込む。迷いはない、迷わない、必ずアズレトを捉えてみせる。


 ――もどれ、そして……打ち抜け――


 轟音が聞こえ、意識が歪む。俺は?アズレトは?リリイは?そうだ……マーテル……マーテル!


 ――絶望と悲しみに沈みし子よ。汝を封じし、大樹の枝が命じる――


 ――契約者:彦麻呂に与えられし生命の炎の一部を、

我が望む相手へと譲渡し全ての傷を癒させよ――


 遠ざかる意識の中で、俺はマーテルの声を聞いたような気がした。

 最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 明日まで一章は続くはず……たぶん。

 次回更新19時です

よろしくお願いします

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