奮戦
おはようございます。はじめまして。
もうじき、一章終わる。なんというか、感慨深いものが。
文章力はまだまだです、頑張ります。
ストーリーと設定は、かなり練りました。
特に2章の前半は、いろいろ一気に起こります。
ヒロ殿は、無事突入したようじゃの。
敵拠点入口に近い場所で、複数の斬撃をたくみな足さばきでかわしていたフーベルトゥスは、拠点内にかけ込んでいくヒロ達の後ろ姿を見て、乱戦の最中であるにも関わらず表情を崩した。
ヒロが狂人を倒したのを目にした時、フーベルトゥスはさして驚きもしなかった。
そんな事よりもあそこまで相手を吹き飛ばしてしまった、ヒロの秘めた潜在能力の方に驚いてしまっていたのだ。
これは、わしの予想を遥かに上回ったわい。
当初から、ヒロが狂人に勝つであろう予測をフーベルトゥスは立てていたのだが、せいぜい動きを鈍らせるに留まるぐらいだろうと、見積もっていた。
それが、結果ふたを開けてみると、相手は完全に打ち倒されてしまうというフーベルトゥスにとって嬉しい誤算となってくれた。
やはりというか……さすがは、あのお方の血を継ぐだけの事はある。
負けてられない――年甲斐もなく興奮してしまっている自分に苦笑してしまう。
――こっちだ!
――こいつ……手強いぞ!
――囲め、包囲しろ!
次々と沸いてきおってうっとうしいのう。
ブローカーが予想を超える数だったのには驚いたが、所詮は烏合の衆にすぎない。
闇雲にただ押し寄せるしか脳のない敵の稚拙で連携のとれていない攻撃に、フーベルトゥスはひとつ確信するに至る。
どうやら……わしらはとんでもないタイミングで突入してしまったようじゃ……。
拠点の規模から考えても、この人数は多すぎる。
おそらくは、魔族に襲撃され増援を外部から集めたのであろう。
敵の動きから察するに、ブローカーですらあるまい。晶石で釣られた実力のない冒険者や傭兵くずれといった所か……。
わしに直前まで気配を察知させん所を見るに……かなり、わしらと戦い慣れた者が指揮をとっているようだの……。
フーベルトゥスは相手の力量を図りそう判断する。
倒す必要性も感じなかった。ただ、腕の一本でも折るだけで事は全て片付いてしまう。
欲に目がくらんだ代償としては、安いものじゃろうて……。
そんな事を考えながらフーベルトゥスは足を運び、手刀を繰り出していく。
こんな罠を仕掛けたという事はじゃ……じきに……。
繰り出された剣を掻い潜り、相手を投げ飛ばしたフーベルトゥスの背後で凄まじい爆発音が鳴った。
始まってしもうたか……!
「お主ら!悪い事は言わん!早うここから逃げるのじゃ!」
拠点の一部から炎があがっている。動きを止め、それを眺めてしまっている敵の意識を、現実に引き戻そうとフーベルトゥスは大声をあげた。
「何を呆けておるか!お主ら何をどう言われて集められたかはしらんが、拠点内部にお主らの雇い主はもはやおるまい、無人の洞窟と心中でもする気か!」
こやつらは、拠点を襲撃してくるであろう魔族を足止めするための、かませ犬で間違いなかろう。
じゃが……何故そうまでして……。
既に放棄を決めておる拠点に魔族を引き付けておく事が、そもそもの目的なのだと考えれば……。
再び激しい爆発音が、今度はたくさんの人が集まる場所で発生してしまった。
なんという事じゃ。
肉の焼け焦げる嫌な匂いと悲鳴と断末魔が、静かな森を炎の赤と共に染めていく。
『え~い!止めぬか!』
フーベルトゥスは上空を見あげると、不可思議な声ならざる音を発生させた。
『なんだ~?同胞がいるのか』
返事はすぐに返ってきた。そして、それと同時に再び別の場所で炎の塊が地面に炸裂し、盛大な爆発音をあげた。
『ジジイ……同胞でありながら、なぜに俺様の邪魔をする』
静かながら、ドスの利いた声がフーベルトゥスに向けられる。
『生命は生命じゃ、粗末に扱う物ではない』
『俺様に説教かよ!ジジイ』
相手が姿を現す。
外見は人の……青年の姿をしている。薄く鈍く輝く青い瞳は、魔族であるという証。
若い……ヒロ殿と同じ年ぐらいにも見えるが……。
「そなた、人に容赦がない割に……何故そのような格好をしておるのじゃ?」
フーベルトゥスは空中に漂う魔族の青年に普通に声をかける。
元々人間であった彼ら魔族は人の姿も生まれつき持つが、だいたいがそれを忌み嫌い人の形をとる事を非常に嫌う。
「うるさい!俺様も好きでこうしている訳ではない!そんな事より、ジジイ貴様こそ人に肩入れするとは……同族として恥を……」
魔族の青年は言葉を途中で切ると、フーベルトゥスの事をまじまじと見つめ……。
「お前……ノームか!それも混ざり者だな」
「わしの事などどうでもよい、勝敗もすでに決しておる。刃を引っ込めよ、お若いの」
頭に相当血がのぼっておるな。フーベルトゥスは、魔族の青年を見上げ眉をひそめる。
「はん!お前のような半端者の話しに誰が……」
空気をかすめる鋭い音と共に、一本の矢が青年の頬をかすめる。
「あぁん!」
青年とフーベルトゥスが矢の飛んできた方へと視線を向ける。
周りが押し合い逃げ惑う中、ひとり震える手で弓に矢をつがえている少年の姿があった。
「なんと、愚かな!」
「あぁ……俺様も同意見だぜ」
そう言うと、魔族の青年は少年へ向けて無造作に右手を突き出す。
「いかん!」
こんな少年まで駆り出されていようとは……フーベルトゥスは少年の元に駆けながら絶句してしまう。
「死ね!虫ケラが!」
突き出された青年の右手から、人間の頭部ぐらいの大きさの火球が打ち出される。
フーベルトゥスは、少年と火球の間に立つと足を踏ん張り両手を火球に向けて突き出した。
「いかん、これは……間にあわん」
一瞬の判断の遅れが、戦場では命取りになる事をフーベルトゥスは知っていた。
だからこそ、フーベルトゥスは迷わなかった。
背中に庇う少年の生命を守るために……。
「ジジイ……お前は馬鹿なのか?」
青年は容赦なく、眼下で傷ついたフーベルトゥスに罵声を浴びせる。
「大丈夫か?しっかりと自分をもて!」
「あっ……うっ」
フーベルトゥスは傷ついた右肩を左腕で押さえながら、少年を叱咤する。
青年が放った火球は、フーベルトゥスによってその爆発の軌道を変えられ、少年は無傷ですんでいた。
「動けるな?」
少年は頭を何度も上下に振るう。
「ならば……走れ!」
フーベルトゥスはそう言うと、少年の腰の辺りを気合いを入れるように叩いた。
そのショックからか、少年は一瞬上体を跳ねさせ……突然火がついたような勢いで走り去って行ってしまう。
「ジジイ……もう、何でもいいがな……俺の邪魔をすんなよ」
「そういうわけにもいかんのじゃ」
フーベルトゥスは、青年と拠点の間に立つと残った左手を青年に向ける。
「あぁん……なんだ、そこの中にジジイの大切な物でもあるのか?」
「……」
答えないフーベルトゥスの態度に、青年はしばらく考える素振りをみせ……意地の悪い笑みを浮かべた。
「まぁ……なんだ、こいつをぶっ壊しちまえば……だ、ジジイ……あんたの大切な何かが、なんなのかも分かるかもな……一緒に潰されなければの話だがよ!」
そう言った瞬間――青年は拠点目掛けて火球を乱射し始める。
い……いかん!フーベルトゥスは、精神を最大限に集中させ拠点に降り注ぐ火球の雨を必死に防いでいく。
「お〜お〜頑張るね〜ジジイ!傷ついたその体で、どこまで頑張れるかなぁ?」
フーベルトゥスの全身を汗が流れ落ちる。右肩の傷は思ったよりも重症だ。
「ヒロ殿……あまり長くは保たぬ、早く……リリイを……」
薄れゆく意識の中、少しでも時間を稼ぐために、フーベルトゥスは自分の全てを出し尽くす事にした。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
ヒロが押していた台車。今は宿に預けてあります。
ストーリーを追いかけてほしいので、描写省いたのですが、いりますかね?
次回更新17日12時です
よろしくお願いします




