見えないLV
おはようございます。はじめまして。
対ブーメラン戦、後半です
よろしくお願いします。
「お主……あれに、どれだけの力を込めたのじゃ!」
「お……俺に聞くな!」
俺は通路を右に左にと曲がりながら、手元に戻ろうとする自分の武器を撒こうと必死に逃げ続ける。
あまりにもバカバカしい……それでいて、これほどまでに滑稽な事もないかもしれない。
手に負えなくなった自分の武器に生命を狙われる。
戦いに赴く前の自分と会えるなら言いたい『それは、投げてはいけない物だ』と。
「ヒロ……行き止まりじゃ!」
「くそ……」
どうしたらいいんだ……俺は闇雲に壁をまさぐり始める。
「ヒロ……何をしとるんじゃ……」
「いや……なんというか……こういう拠点とかってさ、隠し部屋とか通路とかあるって……イメージが……」
「アホか……」
必死に壁をまさぐる俺に、マーテルの呆れた視線が突き刺さってくる。
風を切る音は確実にこちらへと近づいてくる。時折聞こえてくる破壊音と振動が、飛来しているブーメランの威力が全く殺されていない事を如実に物語っていた。
「たとえじゃ……本当に隠し通路や部屋があったとして、早々都合よ……」
「あっ……」
――ガコン……。
必死に壁をまさぐっていた手が触れた場所が、いきなり音を立てて消失したと思った瞬間……。
「うぉっ!」
「な……なんじゃと!」
壁の一部がいきなり回転し、俺たちはその回転の動きに巻き込まれてしまった。
「痛って〜……」
壁側に体重を預ける格好で巻き込まれたせいで、俺は放り出された場所で強かに腰を打ってしまったようだ。
「マーテル大丈夫か?」
マーテルから返事がない。
「マーテル?」
肩に目を向けてみると、マーテルがいない。
落ちたのか――辺りを見回していた俺は、地面の一角にマーテルの姿をすぐに見つけることが出来た。
どうやら、マーテルは回転する扉の勢いで俺が放り出された時……バランスを崩して、肩から地面へと落ちてしまったらしい。
「マーテル……大丈夫か?」
「い……痛いのじゃ……」
そう言って立ち上がったマーテルの顔を見た俺は、思わず吹き出しそうになってしまった。
「マーテル……顔、顔……」
「な……なんじゃ?」
相当痛かったのか、マーテルは涙目で地面に突っ立っている。
顔を地面で軽く擦ってしまったのか、赤くなり……頬には地面のススが付いたのか、真っ黒になってしまっていた。
「マーテル……顔を拭ってやるからこっちに来いよ」
「ん……なっ……その程度の事、お主の手を借りずともひとりで出来るわ!」
そう言って、そっぽを向きながらも……少しずつ……少しずつ……マーテルはゆっくりと体を俺の方へと寄せてくる。
相変わらず……素直じゃないなぁ……。
――ゴガッ……ガガガガッ……。
「ついに……来おったな」
つぶやくマーテルを、俺は素早くすくいあげ肩に乗せつつ、飛び退き音のする方へ向けて盾を構える。
「突き抜けてくると思うか?」
「あぁ……間違いなくそうなるじゃろう」
俺もそう思う……俺は他に退路がないか辺りを見回してみる。
俺とマーテルが放りだされた場所は小さな小部屋で、特に何か特徴があるとか、仕掛けがあるとかそういった風には見えない。
「結局……追い込まれている状況に変わりはないか……」
「ヒロ……」
マーテルが真面目な顔つきで俺に話し掛けてきた。
「なんだよ……」
「わしは……お主がこの追い込まれた状況下を、どう切り抜けるか見届けたいと思う」
「マーテル……お前の気持ちはよくわかった……が」
「……が?」
マーテルは小首を傾げながら、俺の次の言葉を待っている。
「見届ける前に……その顔をなんとかしようぜ」
「お主……ずいぶんと余裕があるではないか」
あれ……いつもなら、顔を赤くしながら『うっうるさい!』とか言ってくるのに。
まぁ……いいけど。
「あぁ、もう今更だろ?ふっきれたっていうか、なるようにしかならんだろ」
耳につんざくような音がいまだに鳴り続けている。
「そろそろかな?」
「そろそろじゃろうな」
ふたりして口を揃えたのと、壁をぶち抜いてブーメランが突っ込んできたのが、ほぼ同時だった。
壁をぶち壊したブーメランは、勢い余ったのかそのままの勢いで小部屋に突っ込み、室内の壁を壊しまくる。
俺は、ブーメランが室内に侵入するために開けた穴から飛び出すと、通路のつきあたりへと駆けて行き壁を背に盾を構えた。
「ヒロ、お主どうするつもりじゃ」
「いつまでも逃げ回ってたって、らちがあかないだろ?それに……」
「それに?」
「追い込まれた状況で、俺がどうするか見届けるんだろ?」
「壁を背にしたぐらいで、あれを止めきれると思うておるのか?」
マーテルは心配そうな表情を俺に向けてくる。
「マーテル、来るぞ!」
俺が叫ぶのと同時ぐらいのタイミングで、ブーメランが小部屋から飛び出し俺に目掛けて飛び掛かってくる。
「止める?誰が止めるなんて言ったよ!」
俺は両足を地に着け、しっかりと踏ん張らせると盾に魔力を流し込む。
瞬間――身体の周りが光ったような気がする。ちゃんと出来たかどうかは分からんが、それを確かめている暇はない。
「ヒロ!お主玉砕するつもりか!」
「まぁ、見てろ!」
俺は叫ぶマーテルにそう返すと、ブーメランに視線を固定させた。
やたらと、世界がゆっくりと動いているように感じる。
ブーメランが、盾に接触した……。
「曲がれ!!」
俺はそう叫ぶと、目をつむり全神経をブーメランに集中させた。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
この作品、成長を二通りで描くコンセプトで書いてます。
目に見えるLV.
もうひとつが、目では見えないLVです。
次回更新17日5時です




