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迫りくる脅威

 おはようございます。はじめまして。

 しばらくの間、逃走が続きます


 よろしくお願いします。

 「そうか……無くなったってわけじゃなかったんだな」

 なくさなくて良かった……俺は心の底からホッとしてしまう。


 「たわけ!お主……まさかとは思うが、あれを回収しようなどと考えてはおらんじゃろうな?」

 するだろ……普通。

 なにせ……安かったとはいえ、1万ガルドは普通に一般家庭の年収相当だ。

 しかも、買ってもらった武器だ。回収しないという考えの方がわからん。


 「するに決まってるだろ。あれ……いくらしたと思ってるんだ?」

 「ほほぉ……回収するのか……あれを……どうやってじゃ?」

 そう言うと、マーテルは見てみろと言わんばかりに、ある一角を指さした。

 

 ブーメランが飛び去っていった方向――マーテルが指さす先に視線を向けて、俺は一瞬絶句してしまった。

 人が飛んでいる……いや、跳ねあげられているのか。

 いったい……何に?まさか……。


 「あれって……」

 「そうじゃ……お主が手加減抜きの問答無用で投げつけた武器の仕業に相違あるまい……」

 マーテルの口調は、場の雰囲気にそぐわない淡々としたものだ。


 「……あれはヒロ……お主を目指しておる……しかも、あの威力のままでじゃ」

 そこまで言われて俺は、初めて自分の置かれている状況を悟った。

 怒号と歓声に混じり、不気味な風切り音が確実に大きくなっている。


 それにあわせて、悲鳴も大きくなり……気づかぬまま進路上を運悪く塞いでしまった、憐れな犠牲者を跳ね上げつつ、こちらを目掛けて飛んできている。


 「さて……どうする……お主あれを……」

 「そんなの決まってるだろ……」

 言うが早いか、俺は理解した瞬間に迷うことなく逃げるを選択し、拠点入口から拠点内に飛び込み駆けだす。


 「ほほぉ……そこで意地を張って、盾で受け止めてやるとはならんのじゃな」

 なるわけがないだろう。目の前で吹き飛んだ狂人(バーサーカー)の事を思い出し……背中に寒いものが走る。


 あの盾の性能なら、ブーメランそのものが与えてくるダメージは防いでくれるかもしれないが、踏ん張って威力を殺し切れない場合……俺は確実に吹き飛ばされる。

 その場で構えている間しか完全防御が働かないのなら、接触して跳ね上げられた瞬間に俺は丸腰となる。

そして……空中で無防備な俺に……ブーメランが容赦なく……。


 「とにかく、あれをなんとかしないと……リリイさんを捜すどころじゃないぞ」

 俺は最悪なイメージを、頭から打ち消す。

 それに上手くいけば、ブーメランは拠点入り口を通れずに、岩盤に引っ掛ってしまうかもしれない。

 流石に岩盤は砕けないだろう……。

 俺は真っ直ぐな通路をただひた走る。


 ゴツゴツとした岩肌……薄暗くはあるが、人工的な灯りが灯されたそれは、外で見たのと同じものだ。

 通路には途中、左右に幾つか分岐する道があったが、そんなのは無視して奥を目指す。


 「マーテル、間違いなくここに……」

 俺が言葉を言い切る前に、後方で凄まじい轟音と揺れが拠点内に響き渡ってきた。


 「いったい……なにごと……わわわっ」

 マーテルは驚いたのか、俺の首筋に身体を寄り添うようにしてくる。

 拠点内を再び轟音が駆け抜け……それに少し遅れるように揺れが襲ってくる。

 といっても足元は揺れていない。揺れるというより……これは振動なのか……。


 「マーテル……これってもしかして……」

 「あぁ……わしも同じ事を考えた」

 考えたくはないが……どう考えても、振動も音も……何かが岩盤にぶつかり削り破壊する音だとしか思えない。


 再び、轟音が拠点内を駆け抜けていく。狭い洞窟内部では音の逃げ場所がないため、音が集約されてしまい耳が潰されそうになる。


 「くそ……こんなのを続けられちゃ堪らないぞ」

 俺は耳を両手で強く抑えながら、それでも足だけは止めない。







 どのくらい……走ったんだろう……急に音も振動も起こらなくなった。

 「止んだ……ようじゃな……」

 「うん……止んだな……」

 俺とマーテルが、ホッと息を吐こうとした……その時だ。


 ――ヒュン……。


 今度は拠点内に空気を切り裂くような音が響いてきた。


 ――ヒュン……ヒュン……。


 音は徐々に大きく……そして、俺の方へと段々近づいてきている。


 「まさか……嘘だろ……」

 「嘘じゃろ……嘘と言え……ヒロ……」

 俺とマーテルは信じられないという面持ちで、互いの顔を見合わせた。

 最後までお付き合い頂きありがとうございます。


 次回更新19時です

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