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理不尽な朝

 成長がテーマです。DQのおふざけ二次作という指摘があったのですが、出だしこれ意外に話しをまとめる方法が浮かびませんでした。なにかひとつでも欠けると、話全体に影響が出るほど、繊細に調整してあるので。


 ――目覚めよ我が息子、ライサよ。

 俺は頭に直接響いてくる声に、まだ重たいまぶたをこじ開けた。

 「誰だよ、いったい」

 誰かは知らないが、とんだ人違いだ――俺は寝ボケまなこで周囲を見渡してみる。妙に明るい、室内の明かりは寝る前に全て消したはず。徐々に頭が冴え始めてきて、そこが自分の部屋ではない事にようやく気付いた。

 ――友との最後に交わした約束……それを履行する時がきた。

 友?約束?なんのことだ?俺が最近交わした約束といえば、モニカぐらいのものだが……履行って事は、実行しろって事だよな。だけど無理だろ『今度の誕生日に渡したい物があるから、わたしの家へ来なさい』なんて約束、実行に移すもなにも……

 「ここは、どこなんだよ……」

 だだっ広い草原の只中に俺は居た。俺の目の前には巨大な樹が存在しており、枯れ果てたその姿は草原のみずみずしさの中にあって、異様なまでに異質に俺の目には映った。

 ――フリーダによってお前たちふたりはふるいにかけられ……ライサ、お前が選ばれたのだ。

 選ばれた?何に?頭に響いてくる声は、俺の疑問には一切答えてくれはしない。だが、どこか……そう、どこかで聞いたことのある様な懐かしさを俺は感じていた。

 ――最後に、彼女を大切にしてあげてほしい……結末がいかようになろうとも、せめて短いその時間を笑顔で過ごしてもらいたいのだ。

 彼女?誰のことだ――俺がそんな事を考えた……誰かがいる。

 目の前の枯れ木。巨大な古木のその根元に、誰かが立っている事に俺は気が付いた。その、誰かはゆっくりと俺の方へと近づいてくる。栗色の髪をたなびかせ、深い緑の衣服に身を包んだ美しい少女だ。

 少女は俺の目の前まで来ると、興味深げな瞳で俺の事をじっと見つめてくる。年齢も俺と大して変わらないように見える女の子にじっと見つめられ、俺は少し落ち着かない気持ちになってしまった。

 「お主か選ばれたのは。ずいぶんと若いようじゃが……まぁいいじゃろう」

 そう言うと、女の子はにっこりとほほ笑みかけてくる。

 「いったん、お別れじゃ。なに、またすぐ出会える、その時はよろしく頼むぞ」

 俺は、女の子が差し出した手を反射的に握る。瞬間、目の前の光景が急速に歪み遠ざかり始めた。

 ――共に歩もう。どんな結末になろうとも、お主が切り開く未来みちじゃ……

 最後に頭の中に女の子の声が響き、俺の意識はそこで途切れてしまった。




 ◆◇◇◆



「よくぞ来た!」

 謁見の間に響き渡った声は、俺の耳にはどこか遠くの方から聞こえてくる様に思えた。辺境の国フロンテラ――その国の象徴たる王城に連れて来られて、どのくらいの時間が経ったのか、

 俺の全身は変に力が入り、体中から汗が流れだして止まることはない。床には豪奢(ごうしゃ)なカーペットが敷かれているのだが、その所々に俺の汗によって染みが出来始めていた。

 想像していたよりはずっと質素で簡素な作りの城内の両側の壁に沿うような形で立派な鎧に身を包んだ騎士達が立ち並んでいる。あまりにも場違いな雰囲気に、俺はその場を逃げ出したい衝動に駆られてしまう。

 周りの視線が降り注ぐのを全身で感じながら、俺は思わずにはいられなかった。


 ――なぜ、こんな事になってしまったのか――


 俺は、今朝起こった出来事を振り返ることにした。




  




 「おきろー!ひろー!」

 朝早く、突然俺は姉ちゃんに叩き起こされた。なんだかまだ、頭の中にふわふわした感じが残っている。夢の名残りは急速に消えていき、草原の緑だけが俺の記憶に焼き付いたように残っている。

 それにしても、朝早くからいきなりなんなんだという感じだ。今日は、なんかおめでたい事があるという事で学校は休みな上に、俺の16歳の誕生日でもある。祝われる筋合いはあっても、叩き起こされる様な非道な目にあわされる筋合いはないはずだった。

 「おきろ!ひ・こ・ま・ろ」

 頭からすっぽり布団を被り、籠城(ろうじょう)しようと寝たふりを決め込んだ俺の耳元で姉ちゃんが大声をあげる。

 「その呼び方はやめろよな!姉ちゃん!」

 俺は反射的に布団を跳ね飛ばし立ち上がり、意地悪そうな顔をした姉ちゃんを見て『やられた』と心の中で呟いた。

 「別にいいじゃない、本名なんだし……」

 俺は自分の名前が嫌いだ。両親は俺に将来立派な英雄になってもらいたくてヒコマロと名付けた。正直狂気の沙汰だと思う。シンプルに『英雄=ひでお』とかに出来なかったのか……。

 両親曰く『普通なんておもしろくない。奇をてらい、捻っていたらそういう名になった(ヒコマロ=ひこまろ=ヒこまロ=ヒロ=ヒーローという事らしい)後悔はしていない』

 捻りすぎだろ。大体理解出来るかそんなもん。名を付け直せと両親に詰め寄ってみたが『それは無理』と勝ち誇った顔。この国では一度付けられた名は死ぬまで変更する事が出来ない。これは法律で決まっている。破れば死罪だとかぬかしやがった。

 俺は、顔面グーを入れたい衝動を必死で抑えなければならなかった。道を踏み外しかけた時期もあった。だが、俺は思った、どうあがこうが国家権力には勝てない。俺がどう思おうが『ヒコマロの呪い』が消える事は決してないのだと……これは俺が背負うべき業なのだと。

 俺は『自分は呪いと闘う悲劇の主人公』なのだと言い聞かせて、人格形成に重要な影響の出る時期を乗り越えたのだった。

 「とにかく……さっさっと着替えて降りてきなさい。大事な話しがあるから」

 そう言うと姉ちゃんはさっさっと部屋を出て行ってしまった。

 「大事な……話?」

 一瞬、脳裏に『サプライズパーティ』の文字が浮かんだが頭を振って打ち消した。

 ありえない……あの両親、姉にかぎって、それだけは『絶対にない』と断言出来る。では、なんだろうか。寝ぼけ頭でそんな事を考えていると指に違和感が……

 よく見てみると、右手の人さし指にインクがべったりと付着している。

 「いつのまに付いたんだ?」

 俺はぶつくさ言いながら流しで手を洗うと、自分の部屋に戻り衣服を着替えた。さっさっとしないと、またぶつくさと小言を言われてしまうだけで、なんの得にもなりはしない。

 ここを読んでくださっている方。最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 説明文的会話がしばらく続きますがご容赦ください。

 本文、文字数はわざと削って少なくし、文と文の間もわざと空けてあります。

 推敲してみて、これが一番読みやすいのではと選んだのですが、かえって読みづらくなっている場合は、随時直していく次第であります。

 最後に、次回投稿は12月1日の5時になります(投稿予約済み)

 よろしければ引き続き宜しくお願いします。

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