トラブルとマーテルとすれ違い
おはようございます。はじめまして。
内容的には前回の続きです。
よろしくお願いします。
鍵鼻と鋭い目付き、身長は俺の胸に頭が届くかどうか……マーテルよりも頭ひとつ分は小さい。
まぁ……爺さんよりは背は高いのだが、それでも小男には違いなかった。
「お兄さんよ、ここへ来るの初めてだろ?」
男は、耳をつんざくような声で早口にまくしたててくる。
「えっ……」
なんで、そんな事が分かるんだ……。
「おっと……そう警戒すんなよ、兄さん」
男は言いながら素早く俺の腕を掴んでくる。
「兄さん……あんた、さっきから浮きまくりだよ」
そうなのか?いや……しかし、こいつの話を信用しすぎるのも……。
「あんた……俺の事を見てたのか?」
「見てた……っていうか、俺も商売で客引きするからなぁ……まぁ、見てたって言われればそうだな」
男の話し方は巧みで、無視しようにもそうはさせてくれない。
「客引き?」
「おうよ……商売するにも、客がいなきゃ話にならんだろ?」
まぁ……確かにそうなんだが……。
「少なくとも……客引き……というか商売人には見えない」
「じゃあ……何に見えるってんだ?」
「チンピラ?」
俺のひと言に男は目を大きく見開くと、突然大笑いをはじめた。
「そうか……チンピラか!いや……兄さん気に入ったぜ」
なんか……よくわからんが気に入られてしまったようだ。
「とっとにかく……俺、人と待ち合わせてるし……第一金がないから」
その場を立ち去ろうとした俺の腕を……男は掴んだまま離そうとしない。
「まぁ……いいから聞けって……兄さん、俺の店へ来なって」
「だから……金が……」
「腰の剣……兄さんあんた……只者じゃないだろ?」
男はとつぜん雰囲気を変わった。
静かなドスの効いた声からは、さっきまでの陽気さが微塵も感じられない。
「なっ……」
「へっへっ……やっぱりそうか。兄さんすぐに顔に出るから、分かりやすくていいよ」
しまった……正体がバレるとかなり面倒くさい。
置いてきた方がよかったのか……腰の剣に手をやりながら俺は少し後悔した。
「なっ……話しだけでいいから……」
「ヒロ!お主、こんな所で何をしておる!?」
た……助かった……強引に引っ張られそうになっていた腕を振りほどくと、俺は声のした方へと体を向けた。
「マーテル!」
「なんじゃヒロ……お主は情けない声を出しおって」
腰に手をあて立つマーテルの口調からは、呆れたという感じがひしひしと伝わってくる。
その偉そうな態度が頼もしく感じる時がくるとは……。
「ほぉ〜!これはこれは……」
男は俺の背後から飛び出すと、くちぶえを吹きながら歓声をあげた。
「兄さんも隅におけないねぇ……」
言いながらも、男の目はマーテルに釘付けのままだ。
「な……なんじゃ……こやつは?」
下から上へ、体中を無遠慮に見てくる男にマーテルの声がうわずってしまっている。
「兄さんの恋人ですかい?」
男はニヤニヤと小指をたててくる。
「えっ?」
「だって……待ち合わせって兄さん言ってたじゃないですかぁ……」
そういえば……そんな事言ったっけ?
「……いいなぁ、こんないい女どうやって捕まえたんです?俺にも教えてくださいよ」
男のノリに俺はまったく付いていけない。
「ヒロ……こやつはさっきから何を言っておるのじゃ?」
マーテルの方は……俺以上にというか、男の話そのものが理解出来てないという感じだ。
「えっと……簡単に言うとだな……」
「言うと?」
「俺とマーテルは恋人同士と思われている……」
「……」
マーテルは一瞬呆気にとられた表情を見せ……それから、うつむき全身が震え……。
「ちっ!ちがうわ!!!」
マーテルの叫び声に、何事かと人が集まり始めてしまう。
「急にどうしたんですかい?このお姉ちゃんは」
マーテルが来てくれて……助かったと思ったが……。
予想通り厄介ごとが増えただけだったな……。
俺は周囲に「なんでもありません」と頭を下げながら、そんなことを思ってしまった。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
このペースの投稿を維持できるなら、数日中に山場に突入出来そうな気がします。
次回更新12日5時になります。




