歓談
よろしくお願いします。
「気は落ち着いたかの?フーベルよ」
「もう……大丈夫でございまする。お見苦しい所をお見せいたしました」
「気にするな。お主が涙もろいのは、よく知っておるからの」
穏和な表情でにこやかに笑う老人に、マーテルは懐かしさを感じていた。
「……あとな『あなた様』という呼び方はやめてくれんか?」
「では……どうお呼びすれば?」
「今はマーテルと名乗っておるから、マーテルと呼んでくれればよいぞ」
「マーテル……」
フーベルトゥスはそうつぶやくと、一瞬複雑な表情を見せた。
まぁ……無理もないかのう……。
マーテルには、フーベルトゥスの心中が痛いほどに分かった。
それは……あの旅に同行した者……アーサーと共に戦った者にしか理解できない感情だった。
「わかりました……マーテル様。して……一緒におられるヒロ殿とは、ずいぶんと仲がよろしいように見えますが?」
「そう見えるか?あやつとは今日会ったばかりじゃが……なにせ、顔が奴に生き写しなものでな、他人のような気がせんのじゃ」
「確かに……わしも最初広場でヒロ殿を目にした時は、我が目を疑ったぐらいですじゃ」
その後しばらくの間、マーテルとフーベルトゥスは昔話に花を咲かせた。
時折ここではないどこか遠くを見るような目で話し続けるフーベルトゥスに、マーテルは彼がアーサーと共に過ごしたあの頃へ意識を飛ばしているのだと……そう思うのだった。
「マーテル様……」
「フーベル……いい加減、その様付けはやめてくれんかの」
「何をおっしゃられますか。今日、我々が平和に暮らせるのもあなた様のおかげ……」
まだ、引きずっておるのか……。
フーベルトゥスの苦悶の表情に、マーテルは苦笑してしまう。
「あなた様がその身を犠牲にしたおかげで……あの戦いに勝利を収める事ができた」
「しかしな……フーベル。同じ釜の飯を食い戦った戦友から、そんな他人行儀な態度をとられるのは……さみしいものじゃぞ」
「わ……わしを、わしの事を仲間だと……戦友だと思ってくださるのか」
フーベルトゥスは、両目に涙を溜めながら話しを続ける。
「わかりました……これからは、あなた様をマーテル殿と呼ぶことにいたします」
相変わらず頭の固いやつじゃ……。
「うむ……それでよい。で……じゃ、フーベルよ」
「なんですかな?マーテル殿」
フーベルトゥスは涙を拭きながら答える。
「ちと……暑くなってきた。ローソクの火を消してくれんかの」
濡らしてしまった時は震えが止まらないぐらい寒かったのに、今ではうっすらと汗ばむほどに身体が火照ってしまっていた。
どうやら……フーベルトゥスと会話をしている間に、身体も干している衣服もすっかり乾いてしまったようだ。
「おぉ……これは、気が利かず申し訳ない」
そう言うと、おもむろにフーベルトゥスはローソクの火を吹き消す。
「それにしても……ヒロ殿の帰りが遅うございますな」
「おぉ……あやつにちょっとした仕掛けを打っておいたのをすっかり忘れておったわ」
フーベルトゥスと話す時間が欲しかったためとはいえ……。
いくら鈍感なあやつでも、さすがに何かされたと気づいておろうな……。
「フーベル」
「なんでございますかな?」
「すぐにあやつはここに戻ってくるじゃろうが、わしとそなたが知り合いなだという事は奴にはひみつじゃ」
「それは何故でございますかな?」
フーベルトゥスは怪訝な表情を見せる。
「あやつは勇者じゃ……わしらは一度失敗をして……」
マーテルが言葉を言い終わらない内に部屋のドアが乱暴に開け放たれた。
「マーテル!」
まったく……空気を読まんやつじゃ……。
「えら~く長い便所じゃったのう?」
「あぁ……おかげさまでな……えらく時間がかかったよ」
そう言うとヒロは、不機嫌な表情のままソファに腰を掛ける。
なんだか……また寒くなってきた気がするのう……。
「……くしゅん」
熱の余韻から醒めたのか、マーテルはくしゃみをすると、小さく鼻を鳴らすのだった。
最後までお付き合いありがとうございます。
表題は直していく方向で、今考え中です
次回更新9日19時です。




