過去
おはようございます。はじめまして。
また少し展開に変化が起きていきます。
自分でも分かってるのですが、最初の戦闘までの描写が長いなと……。
後、表題をきちんと付けていかなければ……。
「くしゅん!」
へぇ~フェアリーもくしゃみをするんだな。
可愛らしいくしゃみをしながら身体を震わすマーテルに、俺はそんな事を思った。
「おまえは、もうちょっと落ち着きというものを持った方がいいと俺は思う」
「……わしのような愛らしい少女をつかまえて、落ちつけとは……お主、鈍感に加えて見る目もないようじゃの」
「マーテル……その姿で強がっても全然説得力がないぞ……」
結局……マーテルのずぶ濡れの身体をなんとかするため、再び燭台に火を灯す事になった。
マーテルは現在、全裸に手を拭くためのフキンを身体に巻き付けただけの格好で、ロウソクで暖をとっている。
「……うるさい」
さすがに自分の今の格好は恥ずかしいのか、そう言ってそっぽを向くだけで言い返してはこなかった。
「……さむそうだな」
「……」
図星か。まぁ……暖かくなってはきたとはいえ、まだ水浴びをしようという季節ではないよな。
「さてと……」
まぁ……マーテルの事は時間が解決してくれるだろう。
「どこへ行くんじゃ」
ゆっくりと腰をあげた俺に、マーテルがそう聞いてくる。
「便所だよ……付いて来るなよ」
便所は共有式で、各階にいくつかがまとめて設置されている。
「なぜじゃ……」
なぜもくそもないわ。
「マーテルさん……俺にもひとりで集中したい時があるんですよ。それに……」
「それに?」
「その格好で付いて来るのか?」
正直今のマーテルの格好は、俺的にも目のやり場に困るものだ。
ちょうど良いサイズのフキンを用意するというのはやはり難しかったようで、かなり際どい……見えそうで見えないというギリギリでマーテルの身体を包んでいる。
「なっ……どこを見ておるのか!便所でもなんでもさっさっと行ってしまえ!」
マーテルは顔を真っ赤にしながら、胸元と下腹部の辺りを隠すように無理やりフキンを引っ張り下げたり、上げたりともがきだした。
「はいはい……行ってきますよ」
あんまり無理をすると、フキンが身体から剥がれ落ちるぞ。
俺はそんな事を考えながら部屋を出た。
◆◇◇◆
「まったく……変態の上にスケベとは、とんでもない奴じゃ……」
とはいえじゃ……良いタイミングで部屋を出てくれたかもしれぬ。
そう思いながらマーテルは、穏和な表情を浮かべているノームの老人へと目を向ける。
自分の偽装を見抜いた老人の正体。
それは、マーテルの好奇心をくすぐるには充分すぎるものだった。
「あなた様は……いったい何者でございますか?」
こやつも同じ事を考えておったか。
「あなた様は……フェアリーとも違う、わしはそう見ておるのじゃが……」
中々に鋭い目を持っておる。
あの馬鹿に、こやつの爪の垢を煎じてやりたい所じゃ。
「その質問に答える前に……わしからひとつ質問させてもらってもよいかの?」
「よろしゅうございます……何でも聞いてくだされ」
「わしはお主が名乗った時からずっと、フーベルトゥスという名に引っ掛かるものを感じておるのじゃが……お主、アーサーと昔なにか関わりを持っておらんかったかの?」
どうやら……あるようじゃの。
あからさまに様子の変わった老人に、マーテルはそう確信する。
「せんえつな事ではあるのですが……わしは昔、アーサー様御一行と旅をさせてもらっておりました」
「ほぉ……アーサーと旅……とな」
はて……こんな奴と旅をした記憶はないんじゃが……。
「フーベルトゥス……ノーム……」
マーテルは遥か昔に想いをはせる。
昨日の事のように色鮮やかに息づいている記憶の中、マーテルはひとりのノームの少年の事を思い出した。
見ていて危なっかしい足取りで、後を必死で追ってくる……勇者に憧れ、それを目指す少年……。
マーテルは自身の中で、何かがカチリとはまるのを感じた。
「お主……もしや……泣き虫のフーベル坊やか!」
「わ……わしの事をそう呼ぶのは、この世でただひとり……」
ノームの老人はそう言うと、両目から大粒の涙を流し始めた。
「お主は……相変わらず涙もろいのう」
「まさか……また……生きている内に再びお会いできようとは……」
目の前で泣きじゃくる老人に、マーテルは暖かい眼差しを向けるのだった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
次回更新9日12時です。
そろそろ、ヒロが序盤で使用するメイン武器などが登場する事になります。
よろしくお願いします。




