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三日間のくだらない争い

作者: 吉田灯冶
掲載日:2014/08/29

 ある日のこと、私が部屋で音楽を垂れ流し、そのリズムに合わせて時々歌を口ずさんでいると、スマホから独特の音楽が流れる。

 その曲からLINEからの着信であることにすぐに気付く。

 面倒だなー、なんて思いつつ私はかけている音楽を停止。そして、LINEの電話に出る。


「はい、もしもしー」

『よっ、今暇!?』


 相手はある掲示板で昔知り合った友達――佑真ゆうまからだった。

 電話に出るなり、佑真のテンションは結構高め。

 この時点で、私の中でまたロクでもないことを思いついたな、という予感が走る。


「暇だけど? なに?」

『あのさ、オレと一緒に動画作らないか?』

「どうが?」

『そう、動画?』

「YouTubeやニコニコとかのあれ?」

『そうそう』

「何を作るの? てゆか、私たち遠距離だから無理じゃない?」

『いや、歌ってくれるだけでいい』

「……歌う?」

『そう、歌い手になれ』

「パス」


 やっぱりロクでもなかった。

 佑真がなんでそんなことを言ってきたのかの理由は簡単に検討が付く。

 それは私が『歌が上手い』と自慢してしまったからだ。というよりは、歌うのが好きでこうやって口ずさんでいたら、人よりほんの少しだけ上手くなった。ただ、それだけのこと。

 だからと言って、動画に上げてるような人たちと比べら、所詮素人。場違いなのは分かりきっていた。


『なんでだよ!』

「だって嫌なんだもん」

『大丈夫、お前ならやれる!』

「やれるじゃなくて、やりたくない。それだけ」

『えー』

「そういう話だから諦めてね。じゃあねー」

『ちょっ、お――』


 私は迷うことなく通話終了ボタンを押し、スマホをサイレントにする。そして、また音楽の再生ボタンを押して、気ままに音楽を聞きながら時折歌う。

 なんとなくスマホを見たくなってしまうのは、メッセージまたは電話がまた入っていることが予想出来たから。けど、そこで出てしまったら変な期待を与えてしまうので既読無視(スルー)することにした。



    ☆☆☆



 翌日。

 私はまた音楽を聞きながら宿題をしていた。

 昨日と同じようにまたLINEからの通話音が耳に入り、通話相手をするために画面を確認。


「佑真かー」


 なんとなく昨日の件のような気がしたけど、気晴らしに電話に出ることにした。


「もしもーし」

『今、大丈夫か?』

「んー、少しならー」

『うし! じゃあ、昨日の話の続きをば!』

「やらないって」

『なんでだよ!?』

「私が歌ってるのは趣味だから。そもそも動画に上げるとか興味がないんだよねー」

『興味がないとかじゃなくて、興味を持とう!』

「ないない」 


 ビデオ通話じゃないから佑真には見えないはずなのに、なんとなく手を横に振ってしまう。


『今、手を振ったろ? そんな気がした』

「すごっ! なんで分かったの!」

『長年の付き合いだよ!』

「さっすが佑真! すごいね!」

『褒めても何も出ないぞ?』

「うん、知ってるー」

『それはいいんだよ! それより動画だ!』

「やらない。じゃあ、休憩終わるからまたねー」

『あ、おう。じゃあな』

「うん」


 佑真は特に突っ込む様子がなかったので、私は通話を終了させる。念のためにサイレントにすることは忘れない。

 そして、宿題に意識を集中させる。

 宿題が終わり、スマホを改めて確認すると通知に佑真からのメッセージが何通貨入っていたのは説明するまでもないと思う。



    ☆☆☆



 お風呂から上がり、私が髪をかわしているとまたLINEからの着信音が耳に入った。

 また佑真からかー。

 なんとなく分かるこの感覚。

 だから、私はサイレントに切り替えて電話を一時無視することにした。

 だって、女の子にとって髪の毛は一番大事だから。何より佑真の話の内容はすでに分かっているから、この着信に出なかったところで問題ない。あとでかけ直せばいいだけの話だから。

 それから髪の毛をかわかしたり、その他諸々していたおかげで三十分ほど経過していた。

 が、特に悪いような気分にもなってなかったので気にせずに電話をかける。

 すると、佑真はすぐに出た。


『うっす』

「よーほー、さっきはごめんねー。髪とかかわかしてた」

『あー、それはしゃーない。髪の毛は女の子の命だったりするもんな』

「さすが分かってる。んで、なに?」

『動画の件』

「なるほどね。まー、答えは『いや』なんだけど……。なんでやりたいの? っていうか、動画見た影響でしょ?」

『まぁな……』

「分かった。仮に私が歌うとするとしようか」

『おう、編集は任せろ』

「その技術はあるの?」

『……なんとかする』

「不安しかないんだけど……」

『……』


 やっぱり佑真は先のことを考えていなかったらしく沈黙した。

 ううん、違う。沈黙させるようなことを私が言ったのだから、沈黙して当たり前。

 佑真のやりたい理由は、『暇だからやりたい』という気持ちが強いのは分かっていた。とにかくはしゃぎたい。子供がおもちゃを欲しがるような感覚で言っているようなもの。後先のことは二の次、三の次。

 やりたい気持ちが分からなくはない。だけど、もうちょっと先のことを考えて欲しいのも事実。


「あくまで仮の話だから歌わないんだけどね。っていうか、私は趣味で終わらしたい人間だし、批判とか受けたくないからさ。だから、ごめんね」

『そ、だよなー。なんか、すまん』

「ううん、分かってくれればいいよー」

『ん。まー、オレがなんとかすることにする』

「ん。応援はしといてあげるから頑張ってねー」

『おう』


 そして、佑真から電話を切った。

 私はホッと息を吐き、ベッドに横たわる。

 この三日間の争いは私の圧勝だった。

 本音を言えばもうちょっと粘るかな、と考えていたりもしたのだが、どうやら杞憂で終わった。

 心配なのはこれから佑真が一人でウダウダ悩み始めること。あくまで、『私に迷惑をかけられない気持ちと自分の実力不足』と『興味』との戦いが心の中で始まるのだ。

 興味を持つことは悪いわけではないと思う。もちろん、それで成功するパターンだってある。だから、否定するつもりはない。けれど、佑真の場合はあくまで興味本位であり、成功するイメージがない。つまり飽きて、失敗することが多い。


「頑張れー、佑真―」


 天井を見ながら、私は佑真の持つ『興味』に勝つことを心の底から祈った。


だ、誰のことだろうか? け、決して自分のことじゃないです。あくまでふぃ、フィクションであります。(笑)



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