02 転生?トリップ?いいえ、卓ゲです。
お待たせしました。卓上視点とか、キャラクター目線とか色々試していきたいですね。今回は短めです。こういう感じでスタートするよという宣言です。
昨今のライトノベルの一分野に、転生とか異世界トリップってものがある。ある日あるとき、急に命を落としたり、気づいたら知らない場所に居て、不思議な力を神様に貰ったりして、魔王を倒したりするジャンルだ。エルフになったり獣人になったり、普通の人間のままだったり、性別が入れ替わったりとかしながらドタバタと冒険者ギルドとかに所属しつつ世界を自由気ままに闊歩できるオーバースペックな存在を満喫するのがウリであったりする。
ここまで読んで、「あー、俺も異世界に行きたい」とか「転生したい」とか思う人に朗報があります!
とてもお手軽に異世界生活を体験出来てしまうのです!
「TRPGしましょう!」
行きたい世界のルールブックを開いて、のんびりとキャラクターを作成して「こういう敵と戦うのとかアリだよね」と6面体や10面体、果ては30面体に至るまで、コロコロと転がして一喜一憂する。気の合う仲間が片手もいれば、戦記物だって自分たちで作れるのだ。頭の中身が柔らかくて、想像力豊かで、ちょっと我儘であればあるほど、ダイナミックで感動的な異世界生活だって送れる。性別を超えるのも、無生物だってお手の物。
筆記用具よし、皆とご飯を食べるためにちょっと多めのお小遣いも確保した。ポーチから今回使うダイスを何回か試し振りをして吟味する。今日は、赤いダイスで行こう。ダイスの女神さまは、微笑んでくれるハズ。全部をお気に入りのトートバックに突っ込んで、いざゆかん集合場所へ。
プレイスペースにつくと、長机を囲む男女の姿。幸い、知らない人は居ないので、思い思いに雑談をしながら、事前に作成してきたキャラクターのデータを他のメンバーとのバランスを考えながら調整していく。問題がないのを確認して、顔を上げ、GMに準備完了を伝える。今日はソロプレイではない。連続したシナリオを遊ぶ"キャンペーン"と呼ばれる遊び方だ。ワクワクが止まらない。
はやる気持ちを抑え、手元に配られたルールのペーパーに目を落としていると、GMが全員のキャラクターチェックを終えたことを宣言し、ゆっくりと喋りはじめる。
「それでは始めましょう。君たちは日付も時間も違うけれど、ここ"泡沫の銀龍亭"に仕事を求めてやってくる。君たちは既にここに居ることにしても良いし、順繰りと集まっても良い。なんなら、他の世界から境界を渡って来ていても良い。やりたい演出はあるかい?
君たちの演出の一助になるかは分からないけれど、君たちがこの口入屋の主人と話をする、もしくはしたのなら……彼は君達にこう促してくるだろうね
『世界を変える仕事をしたくないか?』ってさ。
ちなみに店の周囲はこういう場所だね」
GMはひとしきり、説明を終えると一枚のカードを机の上に出した。それは、霧深い森と川、それと石造りの大きな橋が映った写真だった。大きく、詩的な文章も書かれている。どうやら、その口入屋には石橋を通っていくらしい。誰かが橋の名前はあるのか? と質問したが、GMは「"霧の石橋"と君の世界では言われているね」としか言わなかった。
個人的には、とっても写真に書かれている文章が気になった。何が書いてあったかと言うと。先ほどGMが説明した場所の名前と、簡単な文章だ。
【霧の石橋】
――ここは吹溜りだ。一度集められた落ち葉は再度、つむじ風に煽られて視界の外へ消えていく。
さぁ、冒険の始まりだ。
有難うございます。