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小日向さんはハゲてても可愛い  作者: 海の字
木洩日くん視点
4/8

4.小日向さんノート

「こちら、小日向さんノートです」


「昨日の告白既遂を受け、もう一度君の性質を深く知る必要があると思ったんだ。僕はプロファイリングが趣味でね。えぇえぇ、分かっていますとも、自分のキモさは自分が一番。だから引かないで〜」


「では、しばらくお耳をお貸しください」

「僕は小日向さんの言動行動をつぶさに観察し、その性質に一つの結論を導き出しました」


「君は皆が思っている百倍(したた)かで。皆が思っている百倍性格が悪い」


「当初、小日向さんはドジでおっちょこちょいで、鈍感な無垢色の女の子だと思っていた」

「でも、そういう子タイプじゃないんだよね」

「僕は人間の裏側が好き。取り繕ったペルソナを剥いだ先にある本当が、闇が。深ければ深いほど、思慮深く人間性が高いというのが僕の宗教だからね」

「引かないで……」


「家に帰って、一度僕の初恋を整理してみました。すると見る景色も変わった。今から君の素顔を暴くとしよう」


「まず第一の疑問。『確信的パジャマ』について」

「帽子を忘れ、あんなに驚いていた君がなぜ、パジャマは恥ずかしがらなかったのか。単純に感性がぶっ飛んでいるから? 本当に?」

「君は計画的にパジャマ姿を選んだんじゃないの? 証拠に、パジャマであることの正当性を、事前に校則を読んで調べていたじゃないか。パジャマだけでなく理論武装を着込んでいたじゃないか」


「パジャマで登校したらウケると思ったから」


「次の疑問は『戦略的逃避行』について」

「あの奇行はやはり不自然だ。君はタカシから赤白帽を借りて、はっきりと感謝を伝え、彼の思いやりを受け取った。なのに『恥ずかしい』からって逃げ出すのはやや不誠実だ」

「タカシが『俺が悪いのかな』と思ってしまうかも。その考えに至れないほど、君は無神経な奴じゃないと思う」

「あ、ちなみにタカシはまったくもって気にしていなかったよ。あいつ無神経だから」

「何より君の足が遅すぎた。僕にはどうも、『先生早く捕まえて〜』って言う風にみえちゃったな」


「登校初日で脱走したらウケると思ったから」


「最後の疑問は『打算的トキメキ』について」

「僕の様子を見れば、髪型になんらかのコンプレックスがあることは明白だ。証拠にニット帽を脱いだとき、君は驚かなかったね」

「昨日キャップを渡すの、ためらったから気づいてくれたの? でも、ささやかな機微に気づけちゃう人が。『教室内なのに一人だけ帽子をかぶっている異常』で察せないのは不自然だ」

「はなから僕の悩みに気づいていた。その上で帽子を脱げと促したんでしょ。僕が嫌がったら、すぐに断って」

「『人の気持ちを思いやれる子』だって、皆にアピールするチャンスだと思ったから。それとも──」


「僕がトキメクと思ったから?」


「大きくはこんなところ。あとは油性から水性ペンに変えていた学習能力とか。ドラゴンボールネタを事前に履修していた周到さとか。なにより君の個性を、懸命にお笑いへ昇華させようとした努力が垣間見えた。たくさん勉強したんだね。笑われるより、笑わせようとしたんだね。君の秘めたる知性と品格を勘繰れる点は、本当にたくさんあったよ」


「君は皆が思っている百倍強かで。皆が思っている百倍性格が悪い」


「でもね。その『裏側』は、いつだって切実で実直で。泥臭く芯が通って。『みんなと仲良くなりたい』に帰結している」


「君は皆が思っている百倍強かで。皆が思っている百倍性格が悪い。でも──」


「君は君が思っている百倍素敵だよ」


「僕は直感で一目惚れし、論理で頭脳惚れした」


 ご清聴ありがとうございました。


 骨抜き。クラゲ。ふわふわ。漂う。流れて、流れて、ビリビリして、痛い。好きだなぁ。


「以上、告白でした」


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