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小日向さんはハゲてても可愛い  作者: 海の字
木洩日くん視点
3/8

3.好きバレ

 小日向エンマは天津飯で登校してきた。

 第三の目が開眼していた。


 天丼!? 

 この一年に懸けすぎでしょ!

 身体張りすぎてて僕怖いよ!


 あと、ワンピース姿似合うね。

 それならまぁ、先生には怒られないだろう。

 僕は怒るよ、みんなに君の素敵が見つかってしまうじゃないか。


「木洩日くん、おはよう、ございます」

「小日向さん、おはよう」


 今朝はなんだか予感があった。

 なーんて言えれば乙な表現。 


 実は内心わかっていた。彼女が一番乗りで学校に来るだろうってことは。


 校則を読み込むくらい生真面目な人が、同じ過ちを続けて繰り返すとは思えない。


 彼女は頑張れる子だ。

 十中八九、早めに学校へ来るだろうと予想していた。


 にしても早いなぁ〜、まだ始業まで一時間もあるよ。嬉しい。たくさんお話しできそう。とても嬉しい。


「木洩日くんはいつもこんなに早いの?」

「小日向さんに会いたかったから」

「……?」


 ……言葉選びをミスってしまったかもしれない。


 探偵ごっこが好きだ。予想が当たって、つい嬉しくなってしまったのだ、僕の悪癖である。


 小日向さんは鳩豆顔でポカンとしている。

 あーあ、好きバレしちゃったな。


「昨日は面白かったよ」

「昨日? クリリンのことか?」


「……」


「クリリンのことか───────っ!!!!!」


「うるさい! 原文ママで叫ばないで。まったく、豊中市民であってもお笑い戦闘民族の血は濃いようだね」


「スーパーサイヤ人になっても、この頭じゃ金髪にはなれないけれど」


「ツッコミ辛いボケをしないでおくれ」


 彼女は短くため息を吐いて、椅子の上に三角座り。膝に顔を埋めている、ちっちゃくて可愛い。


「ムカつくの。『昨日は』ってなによ。暗に今日はすごくないって伝えないでよ」


 懐からウェットティッシュを取り出し、おでこを拭いてあげる。

 すんなり消せた。油性から水性になっていたから。


「僕、女性芸人が容姿イジリされるの好きじゃない。不憫に思えてしまうから」


「はー。君はアレだね。関西人の風上にも置けないね。お笑いを語る資格がない。君みたいなやつが一番失礼で、一番女性芸人を見下しているんだよ。彼女たちは命をかけて身体張っている。つまり視聴者は真摯に向き合うべきなんだ。甘んじて爆笑しなきゃ。……シンプル男尊女卑だし。素人が変な意味合いを後から付け足さないで」


 あ、まじでキレているやつじゃん。めちゃ早口!


「あ、ご、ごめんなさい。言い過ぎ、ました」


 内省も早い。そう言うところが好き。


「お笑い好きなんだね」

 静かにこくんと頷く。赤面している。


 一般論で言えば、けして優れた外見ではない小日向さん。けれど僕は、彼女をとても可愛らしく思う。


 そう思える自分の感性が嬉しい。

 と同時に、やっぱり僕って性格悪いなぁって思う。


「小日向さんは芸人じゃない。普通の女の子がそこまで頑張る必要はないと思うな」


「普通? 普通じゃないよ。みんなが言うの。私、頭おかしいんだって」


「おかしいくらいのほうが、こんな世界だと真っ当に人間だと思う」


「意味わかんない。賢いからって、賢いふりしないで。……木洩日くんに私のなにがわかるの? 小学生のころ、とてもイジメられました。惨めな思いはもう嫌。次こそは気に入られようと、必死で頑張っています。以上です。ご清聴ありがとうございました。ねぇ、私を笑ってよ!」


「笑わないよ」


 ニット帽を脱ぐ。  

 お店にあった、一番小日向さんに似合いそうな帽子。昨日の恋があまりにもホカホカで、熱に浮かされ買っちゃいました。ネコの耳がついているやつ。


 僕はもう、自分を晒すのをためらわない。

 君から、たくさんの勇気を見せてもらったから。

 次は僕が頑張る番だ。


 昨日の後悔を脱いで、今日のキラキラを被せる。


「あげる」

「あったかい。ありがと……」


 あったかいのも。ありがとうも。

 全部僕のセリフなんだ。


 醜いこの頭を見ても、君は何も言ってこなかった。


 小日向さんの方が深刻であるという前提のもと、僕たちは同じ悩みを共有している。

 でも、そんなことはなんら重要じゃなくて。

 

 必死に選んだであろうことが丸わかりな帽子を、遠慮せず受け取ってくれたことが、心底嬉しい。


「木洩日くんの方が面白かったの、ムカつく」


 男が猫耳はキツいよね……。


「口悪くてごめんなさい。私、いいやつじゃないの。素の私は、こんなもんだよ」


「皆まで言わなくていいよ。僕が君を好きだっていうことを知って。悪者演じて、距離を取ろうとしてくれているんだよね。でも、僕としてはちゃんとフッてほしいな」


「……え?」


「ん?」


「え、え、え!?」


 おっとこれは……。


「今なんて??」

「僕は小日向さんが好きです。一目惚れでした」

「え。へ、へーー」


 汗だ。

 

 状況をまとめよう。

 どうやら僕は自身の推理を過信しすぎていて。

 彼女は普通に、ちょっとだけ性格が悪いらしい。

 

 どんだけ天津飯スベッたのが気に食わなかったんだ!


 やらかしたー!!!!

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