ケモノとの交戦——(カイトと交戦②)
「ねぇ皆、応戦しないでいいのっ! このままじゃ、カイトがやられちゃうっ!」
「隊長がやられる? あはは、坊主は何も分かっちゃいない」
「相手はバケモノなんだよっ! このままじゃ、やられちゃうよっ!」
「ケレンと言いましたか、少年」
「えっ」
後ろから野太い声が聞こえた。
思わず、ケレンと隊員たちも後ろを振り返った。
「おいおい、ラムザ大丈夫かよっ!」
右足を引きづったラムザが、こちらにゆっくりと近づいてくる。
でも思ったよりも、元気そうだった。その姿はまるで怪我が感じさせないような感じで、興奮気味に近づいてくる。
「アレはですね」
「あの、それよりも怪我大丈夫なの?」
「そんなことよりも、カイト殿ですよっ!」
「えぇっ!」
その食い気味のラムザに、逆に聞いたケレンの言葉が掻き消されてしまう。
「私の槍はボロボロですが、カイト殿の剣は普通ではありえない」
「……そうかも」
確かに、カイトの剣は刃こぼれすらしてなかった。
何人がかりで槍を突きさしても、その刃の方がダメになってしまう。
そのケモノの猛攻を剣でいなしたり受け止めたりしているのに……彼の剣は未だ傷一つ受けていなかった。その剣も、あのケモノと同じように、別格だったのだ。
「でも剣が特別でも、生身の人間じゃんっ! 全然反撃できてないじゃん」
「カイト殿も普通ではありませんよ。それにケレン、あなたを助けたのも他でもないカイト殿ですよ。あの強弓を放ったのは」
「……あっ」
確かに、あれは凄かった。
ケレンたちを窮地から救ってくれたのは、他らなぬカイトが放った弓だった。
しかも目視で確認できないほど、遠くから放っただろうのに、的確にオオカミの脳天を貫いていた。
そのカイトが普通なわけなかった。
「隊長の一族は、戦闘のプロフェッショナルみたいで……三人張りが使えて一人前って言わてるらしいですし。五人張りが使える人もいたらしいですよ。しかも女性で」
「戦闘集団というか……その一族、全体的にぶっ壊れてない?」
その言葉に、ラムザは苦笑いしながら頷いた。
「私には全然攻撃を仕掛けてこなかったのに、今やあのケモノは全力です。それにあのケモノも、カイト殿の脅威と思ったからこそ、奇襲を仕掛けたのでしょう。大男な私よりも、ずっとずっと、隊長の方が上なのですよ」
カイトを見やると、そこには余裕の表情があった。
そう、カイトはもう相手の動きを見切っていた。
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