激しい戦闘の後で——③
カイトが周囲の隊員からガミガミ言われている間、ケレンは暫く思案した。
ケレンの一家は、絹織物で生計を営んでいる。農奴とか、奴隷よりもいい暮らしできているが……正直、このままではいいとは思えなかった。
他に五人兄弟がおり、ケレンはその中でも末っ子。
親方を継ぐのは、一番上の兄ともう決まっているし、このままでは雑用として使い潰されるだけだ。それどころか、遍歴職人として各地で修行するよう、数年間は見知らぬ土地で働かさせてしまう。
(見知らぬ土地で行って、ギルドで仕事が貰いながら路銀を稼ぐ。紹介させてもらえないようなら次の街へ……しばらく、日雇い労働みたいな感じになるな)
そんな現実が嫌で、同世代の子供引き連れて森へ繰り出した。
あの時の高揚感は忘れようがない。
心が現実から解き放たれた。木々の間から差し込む光が、心を穏やかにしてくれる。鳥のさえずりが耳に心地よく、足元の苔がふかふかして気持ちがよい。まぁ、森へ入り過ぎて遭難することになったんだけど……。
で、そこでケモノと、そしてヴァリバルト傭兵団の皆に出会った。
(傭兵団って、血生臭い人たちだって聞いてたけど……実際はそうじゃなかった)
確かに、氷のような冷たさがあった。
でもそれは緊急時だけで、溶けた後はなんと暖かいことか。あんな戦闘があったのに、今はこうして和気あいあいとしている。
カイトに誘われるまでもなく、ケレンの心は既に決まっていた。
雑用係でもいいから、なんとかヴァリバルト傭兵団の下で働かせてもらえないか直談判する予定だった。
それが、あちらから持ち掛けてくれたのだから。
やっぱり、幸運なのかな。この巡りあわせは。
『僕を、ヴァリバルト傭兵団で働かせてください』
気づいたら、そうケレンは決意を口に出していた。
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