激しい戦闘の後で――②
だから吐き捨てるように、カイトはやけくそ気味に指示した。
『じゃぁ、物資を持ってきた荷馬車隊。食料や毛布は置いて、避難させた人を乗せて街へ。ほら、ケレンも乗る』
『僕、まだ元気だよ。ほら助けて貰ったばかりで、僕も何か手伝えないかなって』
確かに、五体満足でいられたのは、奇跡に近い。あの瓦礫に埋もれていたのだ。ちょうど身体が隙間にハマって、やり過ごせたらしい。図体のデカい大人なら、おそらく骨は逝っていたであろう。
『皆、怪我してる』
『うん、あの火事だもん。そりゃね』
できる限り、ヴァリバルト傭兵団は救出したつもりだ。
でもケモノが迫ってきていることもあり、救出が間に合わなかった人もいる。ほとんどの市民が避難できたとは言え、犠牲者のことを考えると、ユリアーネは心にドシンと重しを乗せられたみたいになった。もっとうまくできたんじゃないかと……。
そうして、ユリアーネは顔を伏せて、重々しく頷いていると――。
『なぁケレン、ヴァリバルト傭兵団に入る気はない?』
そんな突拍子もないことをカイトに言われ、ユリアーネとケレンも目を丸くして飛びのいた。
『救出した人は皆怪我してるのに。逆にケレンだけ無傷なの……凄くない?』
『不謹慎にも程があるっ! って言ってんのっ!』
『二回も奇跡が起こった、これは凄いことだ』
『……聞いちゃいないし』
『えっと、遭難した時と、今回の火事のときかな』
『うん、遭難したのに間に合ったし、今回のことだって奇跡に近い』
『もしかして、ケレンのこと。願掛けか何かだと思ってるのっ⁉』
『そうだけど?』
『そうなのっ!』
余りにも淡泊に言うもんだから、周囲の隊員たちも皆驚いた。
『これからケモノとの全面戦争になる。やっぱ運って必要になると思うんだ、これから』
『カイト殿、それはあまりにも……』
『そっすよ、俺なんか入隊するのに、めっちゃ時間かかったのに』
『こんな子を傭兵にするとかありえんじゃろ。これから戦争が起こるのなら、尚更のぉ』
ブーイングの嵐。皆が一斉に声を荒げた。
それもカイトの骨にまで伝わるぐらいで、ブルブルと身体が小刻みに震えた。当の本人は、そんなにダメかなぁと、あっけらかんとしている。
『いいと思ったんだけどなぁ』
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