カイトの兄上——⑥
やがて、師範代が仰々しく呟いた。
「免許皆伝だ」
これには、周囲の弟子たちもどよめいた。。
免許皆伝。通常、切紙・目録・中目録を経て、剣術指南役に勝てれば、晴れて免許皆伝になる。その免許皆伝に至るまで、普通は一〇年以上の鍛錬が必要だと言われる。
その過程を全て飛ばして、たった七歳で達成して見せた。
「いえ、私なんてとんでもない。まだまだ未熟者です」
それでも姿勢を崩したりせずに、兄上は未だお辞儀をしたまま。
その姿に、周りのモノは感服した。
もう斬り捨てられた指南役など、誰の目にも映っていない。皆が彼の立ち振る舞いに、称賛の目を向ける。
しかしカイトの目には彼の姿が、何か物悲しい影が差しているような気がした。兄上の目には指南役の死に体がどう映っているのか、周囲に認められてどう思うっているのか、今となっては分からない。
ただ、兄上の姿が孤独に映った。剣を振るう者は孤高であり、敵を打つ心は強靭で。その孤独な姿が、美しくも哀しくも彩る。
――だからこそ。
そんな兄上の背中が遠い。
果たして、その距離を埋めることはできるのだろうか。
急速に灰色で塗りこめられてゆくこの光景に向かって――。
取り残された子供のように、カイトは必死に手を伸ばした。
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これで、幼少期の兄上は終わりです。
また触れていくと思いますので、よろしくお願いします。




