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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
番外編——幼少期の兄上(朧げな夢の中で)
57/60

カイトの兄上——⑥

 やがて、師範代が仰々しく呟いた。


「免許皆伝だ」

 

 これには、周囲の弟子たちもどよめいた。。

 

 免許皆伝。通常、切紙・目録・中目録を経て、剣術指南役に勝てれば、晴れて免許皆伝になる。その免許皆伝に至るまで、普通は一〇年以上の鍛錬が必要だと言われる。

その過程を全て飛ばして、たった七歳で達成して見せた。


「いえ、私なんてとんでもない。まだまだ未熟者です」

 

 それでも姿勢を崩したりせずに、兄上は未だお辞儀をしたまま。

 

 その姿に、周りのモノは感服した。

 

 もう斬り捨てられた指南役など、誰の目にも映っていない。皆が彼の立ち振る舞いに、称賛の目を向ける。


 しかしカイトの目には彼の姿が、何か物悲しい影が差しているような気がした。兄上の目には指南役の死に体がどう映っているのか、周囲に認められてどう思うっているのか、今となっては分からない。


 ただ、兄上の姿が孤独に映った。剣を振るう者は孤高であり、敵を打つ心は強靭で。その孤独な姿が、美しくも哀しくも彩る。


 ――だからこそ。


 そんな兄上の背中が遠い。


 果たして、その距離を埋めることはできるのだろうか。


 急速に灰色で塗りこめられてゆくこの光景に向かって――。


 取り残された子供のように、カイトは必死に手を伸ばした。


面白いと思って頂けた方は、ブックマークと評価をして頂けると幸いです!

何卒よろしくお願いします。


ご愛読ありがとうございます。

これで、幼少期の兄上は終わりです。

また触れていくと思いますので、よろしくお願いします。

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