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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
番外編——幼少期の兄上(朧げな夢の中で)
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カイトの兄上——③

「はあぁぁぁぁっ!」

 

 先ほどの真っすぐな打ち込みではない。


 二・三撃と、瞬く間に打ち込んでいく。


 常に二手、三先を呼んだ連撃になっており、少なくとも並れの連中なら容易くこじ開けてしまうほどの連撃。

 

 これには、受けている指南役も苦虫を嚙み潰したような顔をした。


「そちらから仕掛けてもいいのですよ?」

「……図に乗るでない」

 

 指南役も、攻勢に回った。

 

 と言っても、指南役は最初は軽く、そして徐々に連撃の精度を上げていく。まるで兄上の練度を図るように、速さや威力はもちろんのこと、太刀筋の複雑さも増していった。

 

 しかし驚くべきは――。


 その並外れた連撃を、兄上が全て捌いてしまっていること。


「その程度ですか?」

「くっ!」

 

 フェントを交えての攻撃だった。

 それに釣られることもなく、持ち前の反射神経と眼の良さで防いでいく。例え揺さぶれようとも、すぐに体勢を立て直し、攻撃を受け止めて見せてみた。


「なら、こちらから参らせていただきますっ!」

「なにっ……!」

 

 兄上は軽くいなしながらも、指南役にフェイントを交えた攻撃を繰り出した。それは指南役が見せた連撃そのもの。たった一度見ただけで、完璧にトレースして見せたのだ。

 

 さきほど、初めて刀を握った七歳が、だ。


「まだまだ、これからです」

「くっ……!」

 

 そうして、体格差を考慮してか、低めから避けにくい攻撃を繰り出していく。

 

 周りで見ていた弟子たちも、これにはざわついた。


「……驚いたな」

「指南役が退いていくぞ」

 

 もう超えている、指南役のフェントを凌駕している。

 兄上は捌かれると見越して一撃、そして二撃目で体勢が少し崩れたところに、迷いなく三撃目を繰り出していく。


 そこまで兄上は見えていたという事なのだろう。

 簡単なフェントなら見抜けることを見越した、二重のフェント。次第に、指南役が押されていく。

 

 紛れもなく、『真剣勝負』というものを理解している太刀筋だった。


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