カイトの兄上——①
鳥かごだった。
手足を縛る、そのような枷はない。
外を隔てる鉄格子もない。
でも、ここは自分を閉じ込める鳥かご。
ずっとここにいて、ただ眼の前の光景を見つめるしかなかった。
――だから同じ夢を繰り返し見る。
ミツルギの人間は、剣と共に生きる。母の温もりさえも、知らぬぬまま。それがミツルギ家に生まれた瞬間から決まっていた。
二歳で木刀を握り、五歳から道場に預けられ修行する。
そして七歳から、真剣同士の稽古が始まった。
――兄上は刀をスッと抜く。
その構えは、初めて刀を持ったばかりなのに、随分と様になっていた。
立ち姿は堂々としており、相手に向けて刀の剣先を向ける。
対して剣術指南役も、刀をスッと抜き正眼で構えた。
齢四〇くらいの男性だろうか。七歳の男児に相対するも、その眼光は鋭く射貫くようだ。
道場には師弟が詰めかけており、五歳になるカイトも後ろでその様子を見ていた。
空気が張り詰める。
真剣同士が相対しているだけで、ビリビリと震えるものがあった。
「はあぁぁぁぁっ!」
最初に仕掛けたのは、兄上だった。
正面から真っすぐに打ち込んでいく。
実に子供らしく、それも素直なモノだった。指南役はその打ち込みを軽くいなしながら、景気のいい甲高い音が道場に響いた。
真剣を初めて構えたものは、手が震えてまともに握れないという。
しかし兄上は臆することなく、真っすぐ相手に打ち込んで見せた。これには周りの弟子たちも、感嘆の声も漏らした。
「流石は、ミツルギだ」
「……震えるどころか、一切の躊躇がない」
「はぁっ! たあぁぁぁ!」
兄上の甲高い声が発せられた。
面白いと思って頂けた方は、ブックマークと評価をして頂けると幸いです!
何卒よろしくお願いします。
ここからは、ヴァリバルト傭兵団の人物を掘り下げていきたいと思いますっ!
拙い文章で分かりにくいところもあると思いますが、よろしくお願いしますっ!




